斜堂先生とオカルトくノ一女生徒


 ここ数日、あれやこれやと悩んでいたテスト作りがようやく終わり、一息つこうと昼下がりの食堂に足を運んだ斜堂を迎えたその顔に驚く。

「六道さん? なんでここに……」

「ああ、門のところに若い兄ちゃんがね、サインしなきゃ入れませんよって言うからサインしてきたんですよ」

「いや、そういうことじゃなくて……」

 湯呑片手にそう笑う男の向かいに座る。
 着流し姿にひとつにくくった長い髪、左目には縦一文字に走る傷を持つ四十路、浪人風のこの男の名は六道輪廻――霊媒師だ。

 普通に考えれば忍術学園の教師と霊媒師に縁があるわけないが、この男は斜堂を慕うくノ一教室の霊媒師、墓乃上みつよとの因縁……のようななにかがあるらしい。

 不運にも奇っ怪な縁でふたりの訳あり霊媒師との面識を持ってしまった斜堂を前に、六道は相変わらず飄々とした態度だ。

「斜堂先生さんよ、だいぶ顔色悪いけど大丈夫です? ちゃんと食ってます?」

「顔色は元々なんですが……というか六道さん、今日はなんの用です?」

「ああ、怪異に会いに来たんですよ。ちょっと頼みたいことがあって……門のところにいた若い兄ちゃんに頼んで呼んでもらったんですけど、そういやあいつ遅いな……」

 彼が待つ墓乃上みつよという生徒は紛れもなく他の生徒と変わらない人間だ。
 だがこの男は彼女のことを「怪異」と呼び、彼女を斬り祓う、という名目で、墓場で暮らしていたかつての墓乃上を彼なりに見守ってきていたという。

 門のところにいた若い兄ちゃん、とはこの学園のある意味名物事務員、小松田くんのことだろう。
 彼に頼み事をしてすんなりうまくいくことは少ないが……仕方ない。

 私が呼んできましょうか、と席を立ったその時、ちょうど食堂に駆け込んでくる生徒――墓乃上みつよが、六道の顔を見るなり遠慮のない嫌悪の舌打ちを鳴らした。

「六道さん! なにやってんですカこんなところで!」

 ずかずかと大股で迫っては彼に詰め寄る気迫は、普段は明るく爛漫な彼女からは想像できないほど殺気立っている。

「小松田さんに呼ばれて来てみれば……まったく、なんの用です? お金なら貸しませんけど……あっ! まさか斜堂せんせーに借りようなんてしてないですよネ!?」

 苛立ちに呆れの言葉、ため息。
 それら全てを遠慮なく向けられているというのに、六道の態度は軽いまま変わらない。「おいおい、俺がそんなこと斜堂先生に言うわけないだろ」

「今日は金も……まぁ借りてぇけど、お前に一応言っとかなきゃいけねぇことがあってよ……」

「大丈夫です、もう既に怒ってるんで……まぁ斜堂せんせーがいらっしゃる手前、手荒なことはしませんヨ」

 普段は温和な彼女はそう言いつつ、背中で隠すように拳を固く握っている。
 手荒なことになる予感しかしないそれに、斜堂は仕方なく墓乃上の隣に立っては内心ひやひやしながらふたりの話を聞く。

「――刀、盗られちまった☆」

「は?」

「いや、だからあの刀盗られたっていうか、持ってかれたというか……」

「誰に!?」

「賭場の胴元」

「博打の賭けに出しやがったな!?」

「だって金はもうすっからかんだったからさぁ、」

「馬鹿野郎!」

 普段は丁寧な口調の彼女から出るとは思えない言葉とともに、彼女はあっという間に長身の彼の首元を掴んで引きずっては「お騒がせしました!」と食堂に言い残し、そのまま手荒く強引に校舎裏へ彼を放り投げる。
 なにがなんだか分からない、そう目を丸くする食堂のおばちゃんには申し訳ないが、説明している間に六道とかいう部外者が墓乃上という生徒によって殴り殺されては困る。
 彼女同様、すみません、失礼します、とだけ言い残し、怒れるあの小さな背に追いつく。

 同級生と比べても小柄で細身、そんな体格だというのに、堂々と浪人を見下ろす仁王立ちの迫力やたるや。

「――まったくもう!! なにしてくれてんですカ! この霊媒師の恥晒し!」

「いや、待て、もう少しで勝てそうだったんだぜ?」

「そういう問題じゃない!」

 あまりの苛立ちか怒りか、人形のように歪みなく綺麗に整った黒髪をぐしゃぐしゃと自ら乱す彼女に恐る恐る訊く。

「あの……墓乃上さん? 一体なにが……」

 ああ、危ない。たぶん彼女自身ももう怒りで無意識だろうが、今の動きは苦無を手にしようと構える動きだった。いくら人目のない校舎裏だろうが、こんなことで殺傷沙汰は困る。
 親愛なる斜堂からの問いかけに、苦無という無機質な殺気を握ろうとしていた墓乃上の動きが変わった。
 代わりに、斜堂へ泣きつくように六道を指差す。「――あいつが!」

「あいつが大事な妖刀、賭けに出しちゃったんですヨ!」

「おまけに負けて持っていかれちまったしなぁ、」

 痛い痛いと腰をさすりながらようやく立ち上がる六道を見れば、以前会った時に見かけた刀がない。どこにでもありふれた脇差が一振りあるだけで、鮮やかに目を惹く色の数珠飾りが連なった刀がない。

 彼女がいう「妖刀」とはどうやらその刀のようだ。

「まぁ次勝てばいいだろ、そう怒んなよ。でだな、ちょいと種銭を貸してくれねぇかなって、」
 
「よくないから怒ってんですヨ! 貸しませんし! だいたい六道さんは昔っからいつもいつも私に迷惑ばかりかけて、」

 なんともクセの強すぎる霊媒師ふたりの言い合いに紛れ、斜堂は苦労のため息をひとつする。
 争いも、騒々しい言い合いも好きじゃない。
 しかし日頃自身をなによりも慕ってくれる生徒が怒り、困っているということなら教師として放っておくわけにもいかない……どうせ巻き込まれているのなら、事情ぐらいちゃんと聞いておきたいものだ。「あの……すみません、」

「墓乃上さん、そろそろ先生にも分かるよう説明してもらえませんか……?」

「えっ、ああ、そうだ、すみません斜堂せんせー、勝手に騒いでて……えーっと、六道さんが持っていた飾りが付いた刀、あれは持ち主に霊感を与える特別な刀なんですヨ」

「霊感……」

「そう。ですから、ほぼ一般人と変わらないぐらい霊感皆無の六道さんでも、あの刀のお陰で一応霊媒師ができてたんですヨ。まぁ本当に適正がない人からすればなんにも視えないですし、関係ないですが」

「え、じゃあ今は……」

 墓乃上の説明に六道を見る。自らがやらかしたことだというのにあまり危機感がないのか、開き直っているのか、目が合うと彼は茶化すように片手を振った。

「まぁほぼ視えてないですなぁ」

 他人事かと思うほどけろりと軽い声で応える彼に反するよう、墓乃上からは、クズめ、と辛辣な呟きが出る。

「……霊感を与えるということは、幽霊たちとの意思疎通ができるようになることです。良い幽霊とも、悪い幽霊とも……つまり、万が一邪な人間が持てば悪霊に魅入られてしまうんですヨ」

 あーあ、と頭を抱える彼女が本気か冗談か、穏やかではないことを呟く。

「戸部せんせーとか強い人が持ってくれたらいいんですけどねぇ……」

「こら、戸部先生を勝手に霊媒師候補にしないでください」

「でもあの人、普段からちょっと視えてそうな感じしませんカ?」

「……まぁ、分からなくはないですが……というかなんでそんな危ない刀、賭けちゃったんですか?」

「え、いやぁ、ちょっと負けが込んでて……賭場のね、刀好きの胴元がその刀を賭けないかって持ちかけてきたんですよ。で、財布は空だし、もう勝つにはこれしかない、って思って……」

 なるほど。彼女の怒りが少し分かった気がする。霊媒師でないこの身で聞いても、なんとも堕落した無責任だと呆れてしまう。「ああもう!」

「私、男装の授業で補習食らって練習しないといけないのに……! 六道さんなんかに構ってる暇ないのに……!」
 
「おいおい怪異、補習なんか食らってんのか? 墓場じゃあ天下無敵のお嬢さまだった奴も大変だなぁ」

「うるさい! だいたい刀はどうするんです!?」

「簡単な話じゃねぇか、俺がまた賭場に行って勝負しに行く」

「それじゃまた負けるだけじゃないですカ!」

 もうダメだ、終わった、と頭を抱える墓乃上の言葉に、斜堂はひとつ思いついた案を暫し考え、彼女に声を掛ける。「――墓乃上さん、」

「男装の補習の件ですが……今回は山本シナ先生ではなく、私が見ましょう」

「え、斜堂せんせーが……ですカ?」

「ええ、それで今回の課題ですが……良い機会です。墓乃上さん、男装をした上でその妖刀を取り返しましょう」

 なにをどうするか、作戦も墓乃上さんが練ってみてください。私と六道さんはあなたの補佐を務めます。

――私と六道さんという駒を使い、あなたは男装した架空の人間として、この任務、こなしてみてください。

 ああ、我ながらなんて理不尽を言うのだろうかと思う。
 自分の失態ではない、むしろ危機感のない甘ったれた身内のやらかしを拭うため、賭場に飛び込んでは刀を取り返せなんていきなり言うのだから。

 しかしこれが忍の本質――理不尽、不条理、どんなにくだらなくて、馬鹿らしくて、それでいて付き合いきれないと思っても、それが任務となれば命をかけてでも、どんな手を使ってでも、どんなにズルくなろうが、最終的には生き残った上で任務を果たすのが忍なのだ。

「……ええ、分かりました」

 幼いような彼女だって、ここの学園で日頃鍛錬を積むくノ一のたまご――最初はぽかんとしていたが、斜堂の言葉にひとつ頷く。さっきまでは右往左往と混乱していた瞳に、しっかりとした芯が宿ったような落ち着きが入った。

「一般人があの刀を持っている時間は極力減らしたいですが……今からすぐ無策で行っても無理でしょう。ですので作戦は今夜、今晩中にカタをつけます。なので私はそれまでに色々考えてみますが……ああ、六道さんは今から裏山に来てください。その胴元の話、色々聞きたいので」

 準備する物があるので取ってきます、それでは、と一礼してくノ一教室の宿舎のほうへ走る彼女の背を止める間もなく、制止の声一言もかけられなかった六道は困惑していた。

「ちょっ……いいのかい斜堂先生さんよ、」
 
「なにがです?」

「いや、そりゃ、俺が持ち込んだ火種ですけどね、だからってあいつに行かせるなんて……」

「可哀想?」

「ま、まぁ……」

「……私だって心配ですよ。でも守って、可愛がって、褒めて……それだけでは忍は育ちませんから」



「――怒車の術を使います」

「どしゃ?」

 普段は額に被さる前髪を上へ流し、藍鼠色の着流しを着た彼女――いや、「彼」が言う聞き慣れない言葉に、その後ろにつき、件の賭場まで歩く道中で六道は聞き返した。

「なんだそりゃ」

「忍術のひとつでして……わざと相手を怒らせ、冷静さを砕くんです。……ですよネ、斜堂せんせー?」

 薄暗い空の元、無邪気に答え合わせを求めるその顔がこちらを向く。
 ええ、とひとつ頷くと彼は嬉しそうに話を再開する。

「そこでですネ、今回私は嫌味な成金商家のぼんぼん息子……という役に成ろうと思います。六道さんは、そんな世間知らずのお坊ちゃんに夜遊びの案内をさせられてる浪人、として私を賭場に入れてください」

 日も暮れ、金やら、女やら、大人の汚い欲が飛び交うにはこの上なく似合う夜道を進む墓乃上の足取りに、躊躇いや恐れの影など微塵もない。
 賭場があると六道が案内する街へ向かいながら、彼なりに考えた作戦を黙って聞いてみる。

「しかしいくら胴元が刀好きとはいえ……いきなり入ってきた子供がその刀を賭けろ、と持ちかけても無理でしょうネ。そこで使うのがこの三つです。これは斜堂せんせーに預けておきますので……私が合図したら私にください」

 その言葉に渡されたのはずっしりと大判小判が詰まった巾着いくつかと、なぜか金平糖が入った小瓶、そして精密かつ華やかな彫りを纏った鞘――南蛮渡来、見るも珍しい一振りの洋刀。

「おいおい怪異、お前いつの間にこんなもんを……」

「ああ、それ、お金も刀も偽物です。一見しただけじゃ分からないでしょうがネ。如何物師から譲って頂きまして……なにかに使えやしないかと思って持ってたんですヨ」

「如何物師? お前そんなツテあったのかよ」

「可愛がってた飼い猫が死んだから供養してくれ、と頼まれた時の報酬として頂いたんですヨ。忍というものは嘘をうまく操る者……って斜堂せんせーに教わってますしねェ」

 いかに相手をうまく欺こうものか――小道具と共に計画を語るその姿は、正直言って予想外だった。

 墓乃上という生徒は人間だが、きっとこの世の誰よりも霊能力を使うことに長けているのだろう。
 自身の霊感を相手に流し込み、悪霊を無理やり視せる、という人間離れした能力を使えるというのだから。

 今回だってそのように霊能力を使ってあっさりと解決させるものかと思っていたが、ここまで「忍」として作戦を組んでくるとは予想外だった。

 教師すらも見抜けなかった生徒の成長――なんて素晴らしいものか!

「――ということで、ふたりには私の従者をやってもらいます。私はせんせーのことを『カゲ』、六道さんのことは『ロク』と呼び捨てにしますので、私のことは『若さま』と呼んでください」

 さぁて、世間知らずなお坊ちゃんの飛び入り参加といきましょう!

 窓からぼんやりと漏れる灯りと、閉じた戸の内側からも粗暴な侠客たちの笑い声、話し声が聞こえる平屋を前に、「若さま」は景気よく扇子を開いては不敵に笑った。



「――悪ぃね、入ってもいいかい?」

 そう言って戸を開け、先に部屋に入るは六道――その顔に訳あり、傷あり、といった博徒の視線が向くが、その内のひとりが六道を指差す。「ああ、」

「あんた、この前財布も刀も持っていかれちまった旦那じゃあねぇか」

「なんだい、まーた負けに来たのかい?」

 よほど情けない負け方をしたのだろう。
 博徒というものは、金と勝ちと、そして負けた奴を見ることに飢えている人種だ。
 そんな中、先日なんとも無様に負けた六道の登場というのは面白いのだろう。警戒されるどころか、むしろ歓迎されるような盛り上がり――ようやく「彼」が六道の背後からお出ましだ。「――ロクよ、」

「ここが賭場か? 随分とむさ苦しいが……まぁそれも一興か」

 部屋に流れる煙草の煙に顔をしかめ、自身の身から煙を払うように扇子を扇ぐその姿に、六道へは好意的だった彼らの視線が一斉に移った。「六道の旦那よ、」

「そのガキはなんだい」

「あ、ああ……こいつぁ俺の主人、ってやつなのかな……随分と遊び好きなやつでしてね、金は出すから賭場に連れてけって言われまして……」

「おいおい旦那、ここはガキの遊び場じゃねぇんだぞ」

「ガキもガキだが、その後ろにいる幽霊みたいな奴もなんだい? 辛気臭いったらありゃしねぇ……ツキが落ちる。帰った帰った」

 歓迎の空気から一転、若さまと斜堂の姿を見るなり冷たくなる対応に動じることなく、嫌味な若さまは呆れたものだと一言吐き捨てる。「なーんだ、つまらん、」

「博徒、侠客とやらがどんなものかと思えば……ガキがいるから、辛気臭い奴がいるからツキが落ちるなどと寝言、言い訳がうまいだけの蚊虻か……」

 あーあ、興醒めだ。帰るぞ、ロク、カゲ。

 小馬鹿にする捨て台詞、人に刀を向けることに躊躇いなどない彼らに背を向けるその度胸――「おいおい、」

「坊主、大人を馬鹿にするだけして帰ろうってわけじゃあねぇよな?」

「はぁ? 今しがたお前らが帰れ帰れと言ったんだろう? 鶏は三歩歩いたら物を忘れるというが、まさか鶏以下の者に会えるとは思わなんだ」

 ああ、なんて流暢な侮蔑。
 変わった南蛮訛りに染まった拙い敬語を話す生徒の面影……そんなものは微塵も感じない。

 その堂々と胸を張る態度で勝手に座敷に上がっては、壺振りを囲むように座っていた彼らの合間に座る若さま。そんな彼にくっつく影のよう、従者の「カゲ」は気弱な様子で渋々若さまの後ろにつく。
 言葉は口にしない。横暴で、わがままで、それでいて嫌になるほど尊大な態度の主人になにも言えぬ情けない三助に成ることに徹する。

「カゲや、」

 主人が一言、その右手を上げる。
 その手にひとつ小さな返事をし、金が詰まった巾着をふたつ渡してやる。

――いちいちあれをくれ、これをくれ、と言うより、名前を呼んだだけで従者が察して動いてくれる……そのほうが偉そうな態度に見えると思うんですよネ。
 生意気な子供がそんな態度を取っていれば、より鼻につく態度になるでしょう?
 なので私が斜堂せんせーに対して、右手を肩より低い位置に出したら預けておいたお金を、高い位置に出したら、金平糖が入った巾着を渡してください。

 金平糖?

 意味が分からないと表情に出す六道と、出さずとも内心首を傾げた斜堂に対し、若さまは不敵な笑みを浮かべるだけだった。

 とりあえず今は合図の通り金が入った巾着を渡したが――若さまはその内のひとつを、対面に座った六道に投げる。

「種銭だ。案内料としてくれてやる」

「お、おう……」

「さぁ、これで素寒貧だった奴にも、無論私にも賭ける金があるわけだ。この勝負、まさかまさか……私のようなガキにこけにされたまま見送るまいな?」

 なんとも憎らしいヘビのような目つきに口ぶり。余裕な態度を示す笑み、それをあえて扇子で隠しては目線だけでここにいる全員を見下す素振り――今やその目に映る誰もが、くノ一見習いの墓乃上の手のひらの上で綺麗に転がっていた。

 思わず本当に嫌悪してしまいそうになる生意気な態度。それでいて怖いもの知らず、大胆不敵な度胸と演技力から生まれる怒車にもう食われているということに、ここにいる誰が気づいていようものか――「分かった!」

「坊主、その度胸に免じて受けてやるよ、その賭け。……でもここまで男を馬鹿にしてくれてんだ、負けた時は金だけじゃあ済まないって分かってるな?」

 囲み座る博徒たちの中心にいた男――この賭場を仕切る壺振りであり胴元、そして今回の作戦で得たい物――数珠飾りが連なる刀を自慢げに腰に下げたその男が、まるで射抜くように指し示す。「――誰にものを言ってる?」

「お前らみたいに言うことがころころ変わるめでたい頭は持っちゃあいない」

 この勝負、私がもらおうか!

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