ナランチャ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※同棲してます
なんだかおかしい。最近のあの子は。
妙にそわそわしたり、上の空だったり、自分の部屋に入ったと思ったら変な呻き声を出してみたり。
この前何故かキッチンで肩を落としていたものだから何かあったの、と聞いてみてもなんでもないよの一点張り。
なにか私に隠している。
しかも態度的に私にはバレたくないであろうやましい事を。
私とナランチャが同棲してから早半年、今までこんなこと思いもしなかったけれど、もうそれしかない。
「ナランチャ」
「なッ、なんだよ、」
「浮気してるでしょう」
「はあ!?」
白々しい。
如何にも自分はしていないとでも言わんばかりの反応に私は少し苛立ちを覚える。
「正直に言って。」
「してねェよ!あのなァ、俺みたいな所謂紳士のイタリアーノは一途なんだぜェ?浮気なんてもっての他だ!」
「じゃあ最近態度がおかしい理由は何?」
「あ、嫌、それはさァ……まァ、」
…ほら、言った通りじゃない。
そんな風に言い切るものだから浮気してないかも、なんて期待した私が馬鹿みたい。
というか私、今日誕生日なんだけど。何この最悪なプレゼント。
その事を考えると余計に苛立って、勢いではあるが出てってしまおうと即決した。
言葉が出てこないナランチャを横目に私は大きいキャリーバッグを探しに物置にむかう。
「待て、何処に行くんだよ」
「どこでも良いでしょ」
「良くねェよ!…まさかとは思うけど、ここからいなくなったりとかはしないよな?」
ナランチャが後ろから小走りでついてくる。
適当に返事を返しながらいると、ナランチャが核心をつく質問をしてきた。
普段はお馬鹿の癖に、いざというときになると頭が妙に回る。
「…そのまさかよ。」
ナランチャの顔から血の気が引く。
「ちょ、ちょっと待てって!」
「何よ!自分勝手に浮気しておきながら!だったら私だって自分勝手にこの家を出てったって良いじゃない!」
「嫌、それだけは駄目だ。…なまえ、俺本当に浮気してないよ。」
怒りをぶちまけた私をその怒りの元凶が肩を抱いて宥めてくる。
さっきとはうって変わっての態度に混乱を抱きつつも、相変わらずの心地よさに情けなく怒りは鎮まってくる。
「来て。」
私の腕をナランチャが引っ張る。
私はなんだか抵抗する気が失せてしまったから、というのも、真剣なナランチャに改めて心を打たれてしまった馬鹿だから、誘導されるがままナランチャについていく。
ついたのはナランチャの部屋だった。
「本当はよォ…あんま見せたくないんだけどなァ…」
子犬のような瞳で此方を見られると、思わず甘やかしたくなるが、今回はぐっと堪える。
「ドア、開けても?」
「嗚呼…良いよ」
許可が貰えれば遠慮なく開けて部屋を軽く一瞥する。
特に変わった様子はない。
私が口煩く言っているからか、部屋は一通り片付いてある。…机の上だけは。
「なんで机あんな汚いのよ。」
「見ればわかるっての~ほら行った行った!」
私の背中を軽く押したナランチャの顔は、恥ずかしげにそっぽを向いていた。
コロコロ変わる態度に若干呆れつつも、そんな所が可愛いと実感をする私は、本当に馬鹿だと思う。
「何これ…?」
言われた通りに机を見てみると、そこには無数の紙が散らばっていた。
どれもナランチャの字、けれどいつもよりかは丁寧に書いていることが、濃すぎる筆圧から確認できた。
手にとって確認をしていると、共通点があった。
"誕生日おめでとう"、"大好き"という言葉と私の名前がどの手紙にも綴ってあった。
私が漠然としていると、照れ臭そうにしていたナランチャが口を開いた。
「今日なまえ誕生日だろ?だから自分で手紙書いてケーキも用意しようと思ったんだ。」
だからあんな変な態度だったの?そう聞きたかったけど、思ってた以上に声が掠れていて、言葉がでなかった。
「だからよォ、色々頑張ってたんだけど、俺頭悪いしさァ…作り方みてもケーキ不味いし、手紙とか書きたいことはいっぱいあんのに上手く言葉に書けないし。ってか字汚えし。」
頬をぽりぽりとかくナランチャが少しずつ近付くと、そのまま後ろから腕を伸ばして優しく抱き締めてくる。
「良い誕生日にしたかったんだけど…ごめん、なんかどれもこれも俺にとっては難しくてさ。」
「……馬鹿、」
やっと出てきた言葉は語彙の無い悪態。
心底自分の面倒くさい性格に呆れながらも、「ありがとう」と、そんな私を受け入れてくれるナランチャに心からの感謝を送る。
「誕生日にケーキ無しなんて嫌だし、今度二人で作ろっか」
「え、一緒に…?」
「何よ、嫌なの?」
「ううん、すっげえ楽しみ!」
パッと顔を明るくするナランチャを見て私も思わず顔が綻ぶ。
「ナランチャ」
「どうした?」
「次の誕生日、ロマンティックなラブレターが欲しいな。」
その言葉を聞くなりナランチャは、「俺が書けるわけ無いだろ~!?」と頭を抱えていた。
1/2ページ