メローネ
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※過去捏造、r15表現注意
長い髪を耳に掛ける動作、気だるげに目を伏せる仕草、しなやかで白い指にメリハリがついた女性らしい身体、完璧に構成された容姿。
どれをとっても完全に女として完璧だった。
あくまで女として。
どれだけ他の男が100点をやっても、オレがあげれるのは1点だってない。
なぜならその女は俺の母親で、母親としては、最低で最悪だったからだ。
今日、アジトにはオレとなまえの二人しかいない。
皆、ボスからの仕事で忙しかったからだ。
どうやら何人も暗殺者を送っているが全て失敗に終わっている、結構危ない依頼らしい。
そんな依頼ならオレも何か手伝えないものかと、というか仲間外れが嫌だったから前日リーダーにその内容を無理に見せてもらったが、オレとは相性の悪い依頼だったもんだから、その判断は正しいと言って、辞退した。
―――無駄に金を持つ気が狂った未亡人の暗殺、まあ、彼らなら余裕だろう。
「なあに、メローネ。」
知らず知らずのうちに、オレはなまえを凝視してしまっていたらしい。
言葉を返そうと、意識的に彼女を見詰めれば、彼女はこてん、と小首を傾げた。
その仕草は、愛らしい小動物のようだった。
そんな愛しい生物から発せられた声も、容姿通りの可愛らしさだった。
「…ベイビィ・フェイスとの相性は確かに悪いんだ。君は致命的な程お人好しだし純粋だしな。でもオレとの相性はディ・モールト良さそうだなと思ってさ。どうだい、試してはみないかい。」
彼女は聞いて損したと言わんばかりに顔を引き攣らせた。
「嫌よ。」
先程とは打って変わって此方を警戒する、1トーン下がった声色。
身を縮めて此方を睨み付けるその姿すら、可愛らしい。全く威厳を感じられない。
遠慮なく一緒のソファに座っている彼女へ顔を近付ける。
彼女の甘い匂いが鼻を擽る。
どうにも、彼女といると心が安らぐ。と同時に素知らぬ焦燥感にも襲われる。
「いいじゃあないか、折角アジトに初めて二人きりでお留守番なんだからさあ、試すなら今しかない。いつもは邪魔が入るからなぁ。さあ、なまえ、オレと一緒に――――」
「嫌だったらあああああ!!」
あと3センチ、その所でなまえは暴れ出し、あっさりとオレが座っているソファから距離を離してしまった。
「もう!これだからメローネと二人なんて嫌って言ったのに!」
「仕様がないだろう?君のスタンド能力的にもオレとチーム組んだ方が良いんだからさあ。んでもって、組んだからには片方が休みならもう片方も。片方がその気なら、もう片方だってそれに答えなくてはならない、違うかい?」
「…その理屈はおかしいでしょう、ちゃんと片方の意見も尊重して……って近付かないで!変な所触らないでよッ!」
不満と否定たらたらの彼女なんてお構いなしにオレは一気に間合いを詰めればありとあらゆるところに手を這わせる。
片方の意見の尊重。それをできる余裕を得る事ができたらどれほど良かった事か。
でも君はそんな余裕を全く持って消し去ってしまう程魅力的だから、つい、焦燥に身を任せてこういう事をしてしまう。
彼女は身体を震わせながら、頬を赤くし此方を睨み付けてくる。
…それが堪らない、普段お人好しだ天使だなんだと言われてるそんな彼女が、オレの腕の中で不本意な快感に耐え忍んであまつさえ此方に怨念を籠った瞳を向けてくる。
「なまえ…」
「めろ、ね…ッ」
決して甘い声を出すまい、と固い意志があるらしい彼女の声は掠れ、微かに震えていた。
そんな姿に興奮しない男がこの世に存在するのだろうか。
オレはその興奮以外にも何か、自分が欲しているようなものがある気がしたが、性的興奮には勝てずその思考はどこかへ置き去りにした。
熱が籠った頬に手を当て此方以外に視線を送らせない様にすれば、彼女はじっ、と此方を見詰めてくる。
何かを欲しがるような瞳で。
その表情にごくっと生唾を飲み込めば、最初は触れるような口付けから、段々と深いものへと変換していった。
薄目で彼女の顔を確認すれば、まだ何かと足りて居ない様だった。
なんていやらしい娘なんだろう、酷く興奮を覚えながら、彼女の口内へ舌を忍ばせる。と
がしゅっ
嫌な音がした。
音の後に来る嫌な痛みに思わず舌を引っ込める。
そしてその隙になまえはオレの腕の中から脱出していた。
元からこのためにあんな顔をしていたらしい。
その女優魂に感服しつつ、お互いに少し息を整える時間を作れば、今度はオレが、なまえに不満をぶちまけた。
「なんてことをするんだなまえ!その気にさせておきながら!」
「私はずっと嫌だって言ってたでしょ!セクハラ野郎に制裁を下したまでだわ!」
全く、と彼女が大きな溜息をつき、自身を落ち着かせるよう気だるげに目を伏せる。
そして、乱れた髪を白くしなやかな指で梳きながら、大体整えばその柔らかい髪を耳にかけた。
突如、既視感を覚えた。
「なまえ」
既視感を覚えると同時に、不安に駆られた。
いつか、オレを置いていって何処かに行くのではないかと言う不安に。
この、男が100点をあげたくなる魅力は、オレが良く知って居るから。
「どうしたの、メローネ」
先程とは打って変わっての態度の豹変に、なまえは困惑をしつつも警戒をといてオレの傍へと近寄った。
改めて見るなまえの顔は、凄く、美しかった。
「嫌、なんでもないんだ、ただ、」
そっと手を伸ばして、彼女の手を取り口付ける。
なまえは依然として困惑したまま、けれどオレの行為を拒むような姿勢はとらなかった。
「…幸せが崩れて不幸になって、無くなる事が怖い。」
彼女の顔は、見れなかった。
このぼんやりとした思考の中でも分かる、これはオレらしくないと。
こんな事言われたって、なまえにとっちゃあ意味の分からない事だろう。
勝手に愛されて、勝手に怖がられて。
一体どんな気持ちなんだろう、なまえは。
そう考えているうちに、突然、微かだった甘い香りはオレの顔全体へと広がった。
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、人の温もりと、柔らかさに、オレは抱き締められているんだと理解した。
「…大丈夫。」
なまえはオレの頭を優しく、ゆっくりと撫でる。
「私は何処にもいかないわ。」
優しい声色。なまえはいつもこうだ。
何故こんなにも安心できるのか、オレが弱音を吐いてしまうほどに。
でもなまえはそんなオレを受け入れてくれる。
「なまえ、君は…」
彼女の華奢な身体に腕を伸ばし、気を配りながら力を込める。
「君は、最高のパートナーだ。」
オレはちらり、となまえの顔色を伺う。
彼女は優しく微笑んだまま「あなたもね。」と返した。
愛されているんだ、と実感した。
小さな頃から、喉が手が出る程ほしかった愛情をようやく手に入れたもんだから、女々しくも、もう離したくないな、と思った。
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