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ジョルノ

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「もし、二人同時に生まれ変わることができて、好きな生物を選べるのなら、蟷螂になりませんか。」

情事が終わった甘い空気には似つかわしくない言葉が聞こえると、彼の腕に包まれている可愛らしい彼女はきょとん、と惚けた顔をした。

「…どうして蟷螂?好きなの?」

素朴な疑問をぶつけると、綺麗な顔立の少年は長い睫毛を揺らしてどこかばつが悪そうに視線をそらした。

「そういうわけではなくて…ただ憧れたんです、蟷螂の愛の営みの後の行為に。」

「なぁにそれ?」

抽象的な理由に対して素直に首をかしげ尋ねた。

「蟷螂の雌は交わった後、行為を共にした雄を食べるそうです。子供の栄養の為。」

想像とは180度違うグロテスクな回答に彼女は顔を引き攣らせる。

「…ジョルノは私に食べられたいの?」

しかし、それで引く程の軽い愛ではないらしく、彼女は彼女なりに彼の深層心理を理解しようとした。

「…食べられたいといえば、そうなのかもしれない。そうすれば忘れたくても忘れないでしょう。僕という存在を。」

愛しさを含んだ瞳の中の、ほんの少しの寂しさを彼女は感じ取った。
髪を撫でる優しい手付きが、どこか助けを求めるようにも感じた。

「僕を使って、新しい生命を産み出すんだから尚更。」

彼は言い終わった後で、なんてヤバい奴なんだと心の中で自傷をし、誤魔化しきれないだろうがその発言の取り消しを要求するかのように彼女の頭を撫でた。
しかし、彼女はそんな事などめっきり思ってないらしく、無垢な笑みを彼に向ける。

「素敵ね、貴方らしいわ。」

素敵?と耳を疑う発言に彼は小首を傾げる。

「好きな人と一つになってずっとその人の事を想えるなんて、幸せな人生だと思うわ。」

相も変わらない笑顔に、全てを受け止めてくれる優しい言葉に、彼は幾分か心が軽くなり、改めて愛しい気持ちが溢れ出す。

「でも…やっぱり私は蟷螂にはなれない。」

少し眉を下げた微笑みに変わると、頭を撫で髪を鋤いていた手がピタッと止まった。

「だって私、ジョルノを食べたくないわ。食べてしまったら会話ができないじゃない。」

彼女はゆっくりと腕を伸ばすと、彼の首にぎゅっと抱き付いた。

「それに、今のままでも充分一緒になれてると思わない?」

弾んだ声が耳元で聞こえる。
その事実に彼は安心感で心を満たしていく。

「だから…私が何処か気持ちが移るとかそんな心配要らないのよ。」

次は彼が彼女に頭を撫でられる。
優しい手付きで、何度も。

―――優しい君に、何度助けられたことか。

「…ありがとう、なまえ

抱き締める腕に力を痛くない程度に込め、少年はお礼の言葉と裏腹の気持ちを募らせる。
―――だから不安になってしまう。
こんなにも魅惑的な彼女を、自分一人で独占し続けることができるのだろうか。
信用したいのに、信用しきれない。
深く考えすぎる自分に嫌気が差す。
それでも彼女は受け止めてくれるのだろうか。
考えても何もない、ただただ信じるしかない。
彼は蟷螂ではないし、彼女は蟷螂になることを望んでいないから。



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