澪→レイ
余計な事(春申君)
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「宰相様!!」
普段着慣れない着飾った召し物と履物に苦戦しながらやっとの思いで追いついて宰相様の二歩ほど後ろで止まり息を整えると、ぴたっと宰相様が足を止める
「…何しに来た?」
見なくてもわかる、後ろ姿からでもわかる
絶対眉間に皺寄ってる
「さ、宰相様こそ何しに来たんですか!」
その剣幕に負けるものかと強気で行く
「バカか?問いに問いで返すなよ、本当にバカだなお前」
こちらに身体を向け言い放つ宰相様
それはそうと先からバカバカバカバカって!もうなんなの!?
人の気も知らないで、お見合いおじゃんにしてくれちゃってさ!
挙句の果てにこれ!?
だったら本当に本当にこれで終わらせてやるんだから!
「もう分かりました!本当にこれでやめます!」
もうこうなったら止まらないし、全部言っちゃう
どうせダメなら当たって砕けてすっきりしたい
こんな気持ちのままこれからも一緒にいるよりははっきりさせた方が楽だよね
「会話になってないぞ?俺は何も言ってないのに何が分かったんだ?何をやめるんだよ」
呆れたような顔で言う宰相様
「宰相様の方がバカなんじゃないですか!?だってわからないんですもんね!私が宰相様のことお慕いしてるって!」
あーぁ、言っちゃったよ、もうどうにでもなれ
「なのに毎日毎日好意向けてもまるで知らない顔!私になんて興味ありませーんって態度!どうせ私なんか色気もないし?品もないし?宰相様は私の真逆の人が好みなんでしょ!?だから諦めようと思ってお見合いも承諾してそのお見合いの話もしようとしたけどそれすらもさせてくれなくて、もしかしたらお見合いなんかするなとか言ってくれるかな?なんて期待した私が宰相様の言う通り本当にバカだった!」
はぁはぁ、と勢いで一気に伝えたから酸素を求める
「……宰相様?」
こんな時も無視?勝ち負けではないと思うけど、それでも泣いたら負けだとわかってるのに私の目頭は言うこと聞いてくれない
どんどん視界が歪んでぼやけて瞬きする度に落ちる生暖かい水
「ふっ、不細工だな…」
「ひ、ひど――」
ひどい!!!って言い終える前に視界が真っ暗になる
あれ?私の涙って黒いのかな?
でもなんだかいい匂いする
これは…毎日私の鼻を掠める、私の好きな匂いだ
否、私の好きな人の匂いだ
「…っ、宰相さ、ま」
「黙って抱かれてろ」
私の涙が黒かったんじゃなくて
宰相様が私を抱き寄せたせいだった
「どうしてっ…?」
「…お前は本当にバカだ」
「…っ、またバカって―「お前に惚れてるからに決まってるだろうが」
そう言うと背中に回された腕に力が込められる
口調は悪いが、それとは裏腹に声色は優しく初めて聞く宰相様の声に心臓が跳ねる
「宰相様が私を…?信じられません…てっきりわたしなんか眼中にないものと思ってました」
「……楚が…」
宰相様はぽつりと話し出した
「…楚が六国を滅ぼし、中華を一つにした時、お前を娶るつもりでいた」
私は驚きが隠せなかった
宰相様の次の言葉を遮らず最後まで聞きたいと思い次の言葉を待った
「だから、まだ駄目だったんだ。中途半端ではなく楚を、俺自身を揺るぎないものにし、本物の一人前の男になってからお前に気持ちを伝えたかったんだ」
「宰相様…」
宰相様は背中に回った手はそのままに私から少しだけ身体を離した
「…澪」
ふいに低く掠れた声で呼ばれて、肩がびくっと反応してしまう
「今だけでいい…黄歇と呼んでくれないか?」
「よいのですか…?」
そう言うと、構わんと言って柔らかい微笑を見せる
こんな顔も初めてだな、なんて考えてるうちに
早くしろと催促される
「こう、あつ、さま?」
「ぎこちないな…もう一度だ」
「黄歇様」
呼び慣れないからなのか、じっと見つめられてるからなのか、なんだか照れてしまう
「もう一度だ」
「も、もう一度…?」
あぁそうだと言い私の言葉を待つ
そういえば私勢いで言っちゃったけど、まだちゃんと言えてなかったな
「好きです、黄歇様―」
様と言い終えた瞬間私の唇は黄歇様に塞がれた
「…ん」
「お前はバカなんだから諦めるだとかなんだとか、もう余計な事は考えるな…いいな?」
あ、そうだ
って何か思い出したのかと思えばそんなことを言われる
「もう…そのバカを好きなのは誰なんですか?」
「お前への奇策だが口吸いでバカが移って俺もバカになったな」
こんなんでは軍総司令の立場も危ういなとかなんとか言っちゃってさ
減らず口なんだから…と思いながらまぁいいかと自分を宥める
「澪」
「はい?」
「綺麗だな」
そう言ってまた甘い口付けをしてくれて
余計な事なんて考えられないくらいに甘い時間を感じた
一生傍にいると誓った私だった
fin.
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