主≠監。
Chantilly aux fraises
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いちごのケーキは、いくつになっても大好きだ。
子供心を擽られるし、乙女心をときめかせてもくれる。
誰かを祝うときはホールで、そしてなんでもない日は、たとえそれが叶わなくても、大きなワンカットを食べられれば幸せだった。
「――ん……トレイはさ…こういうことしないと思ってた…」
「そうか?俺もじゅうぶんするぞ?お前の言う……こういうことをさ…、んむ」
「ッ……――」
トレイの実家で迎える週末はいつも楽しかった。
彼の家族ともすっかり親しくなっていたし、自分が大事にされていることが話していてよく分かる。
毅然とした態度で、元気よく、挨拶だって怠らない。
きちんと礼儀も弁えていつも過ごしてきた。
けれど、今日だけはいい子じゃいられなかった。
「ッ……トレイ…あんまり塗ったら…その、胸やけとか……しない?」
「!……はは…っ、すると思うか?ん……ちゅ」
「ひゃ……ぅ…んん……」
「ああ……いつものピンクが真っ白になったな…これはこれで絶景かも……ん…」
「ト……あ…ッ」
トレイの家族が店を数日閉め、旅行に出ると聞いた時は、それはそれは寂しかった。
当然、彼も同行すると思っていたからだ。
が、その後聞いた話は自分の解釈とは程遠く、思わず嬉しさを隠せないほど名無しはそれを顔に出していた。
『……ほんとに行かなくてよかったの…?』
『ああ……別に今回だけじゃないしな…次があれば行けばいいだけだし、この週末は、俺の部屋でお前とゆっくり過ごしたかったんだよ』
『っ……』
『工房は好きに使える許可は貰ってあるし、一緒にケーキでも食べような』
家族旅行よりも自分を選んでくれたのは本当に嬉しかった。
誰にも気を遣うことなく過ごせる週末なんて、滅多なことでは訪れないのだから。
トレイもそれを理解していたうえで、今回の機会を作っていたのだろう……。
三年にもなれば授業や実習、部活も忙しかっただろうし、何より副寮長としての務めも決して少なくなかった。
名無しはトレイの言葉に素直に甘え、大きめの鞄に着替えを詰め、期待を胸にその週末を迎えていた。
来慣れていた筈の部屋に入るだけでドキドキとしたのは、今更説明するまでもないことだ――。
「あ……ッ」
「ふふ……お前また唇にも付けて…わざとか?」
「ッ……そんなわけな…!んっ」
「ちゅ……当たり前だけど、甘いのな…自分で作ったクリームとはいえ、美味いよ」
「…ト……ッ」
「悪い…名無し。我慢できない……、…抱いていいか?」
「!」
トレイはいつだって、名無しが好きだったケーキを焼いてくれた。
こっそり寮の庭園で二人だけの茶会を開く時も、外出先の公園で休憩するときも、いつもそこには彼の手作りのケーキが並んだ。
その種数多、定番のショートケーキから少し手の込んだプロフィット、焼き菓子のクッキーまで、トレイも名無しの笑顔見たさに、腕によりをかけていた。
二人だけで過ごす週末、名無しが彼にリクエストしたのは、シンプルないちごのショートケーキだった。
その日は奇しくも、日付は二十二日……。
名無しが狙ったかどうかはさておき、トレイは工房で、ボウルに生クリームを投入しながらひとり微笑んだ。
まったく可愛いことをしてくれる……作りがいもある、と、独り言を囁きながら、壁に掛かったカレンダーを和やかに見つめていた。
――――。
「ん……ちゅ…っ、ちゅ……」
「トレイ……は、ァ…」
「ハァ……乳首勃ってる……もう一度乗せてもいいか?」
「っ…だめ……も…」
「そう?んじゃあ……いちごは?って……フッ、流石に乗らないか」
「トレイ……ッ!ン……はぁ…」
「チュ――……一緒に潰して食べた方が美味いな……こっちは」
スポンジと生クリームを重ね、ショートケーキの土台を作ったトレイは一気にそれを仕上げていた。
デコレーション用のクリームを平面に絞る直前は、機械に頼らず、角の立ちをよくするために改めて自分でかき混ぜる。
いちごを乗せれば完成のそれを皿に移して、名無しと一緒に自室にこもれば、最初はいつものささやかな茶会が始まった。
やがて名無しがケーキを幸せそうに食べる様子を優しい眼差しでトレイが見つめれば、その眼差しは、ゆっくりとよこしまなものに変わってゆく。
これもまあいつものことだ……閉鎖的な自室という密室で、近くにベッドもあれば、大抵することは決まってくるのだから。
「あ……」
ただ、この日のトレイでいつもと違っていたのは、張り切ってリクエストに応えた結果、ホールケーキはカットしないまま名無しに食べさせていた。
三寸ほどの一人から二人用のそれとはいえ、完食しきれていなかった皿を、ふとした瞬間に奪われる。
ゆっくりと食べきるつもりでいた名無しが当然皿を取り上げられたことに驚けば、次にトレイを見た瞬間、感じたのは胸の高鳴りだった。
眼鏡の奥の瞳が鋭く、獲物でも捕らえようとしているかのように映れば、キスを避けることも、ベッドに押し倒されることも、もちろん出来はしなかった―――。
「くちゅ……、ん…む」
「ッ……はぁ…ト…」
「フッ……果汁が零れるとめちゃくちゃいやらしいな……一瞬、俺が残したキスマークみたいに見えるよ」
「…っ……」
「ん?ああ……そういえば最近は付けてなかったかもな…。今日は沢山…んー……、どこに付けようかな。な?名無し」
女性にとっての三寸はなかなか大きかった。
今思えば、ケーキを食べながら名無しを抱こうというトレイの発想がどの時点で企てられたかはわからない。
が、自分の作ったものを美味そうに、且つ慎ましく頬張る様子は、作り手として何か響くものがあったのだろう。
大粒のいちごを大事に残しているのもまた愛らしかった。
トレイは皿を取り上げて名無しをベッドまで導くと、押し倒しざまにキスをして、互いにその甘い味覚を共有した。
生クリームを口含んだまま交わすキスの一見ポップな雰囲気とは裏腹に、激しく舌を絡ませるトレイの身体は既に火照っていた。
「ッ……あ…、あ……――」
服を乱し、汚れないようにベッドから遠ざける。
名無しのブラジャーのホックを外しながら這わせたトレイの白い舌は、ぬめりとした感触がくすぐったくもあり、また心地が好かった。
脱がされたそれはキャミソールと一緒にベッドの下へ投げ捨てられ、名無しのケーキを、トレイは素手の指先にぐっと掬い、上肢に塗した。
胸元に塗りたくられた生クリームに、トレイが美味そうにしゃぶりつく。
何度も吸い付かれ、食まれれば、名無しの声音は自然と大きくなっていった。
肩が上下して、膝同士をきゅっとこすり合わせる。
するとトレイはその足を開かせ、名無しを真剣な表情で組み伏せ、じっと見下ろしていた。
「――……ッ…」
「……フッ…付けたては真っ赤だよな…今食べたいちごよりも」
「っ……」
「お前の胸に付いたクリームを舐めとるのも最高だなって今思ったが……オレが付けた痕を見るのも、やっぱりたまらないな……フフ。ゾクゾクするよ」
「ト…ッ……!!あ…」
「下にも塗……ふっ、やめとくか……。お前のこれは、もともと甘いしな……んむ…ちゅ……」
「ッ……!!あ…」
枕元に直置きした皿は、ときどき、名無しがシーツを乱すことでかたかたと揺れていた。
室温で生クリームも柔らかくなっていたけれど、一部の角はその形状を保ったままだ。
いかに仕上げのミキシングを、トレイが上手にこなしていたかを裏付けている……。
トレイは名無しの首筋や胸元に付けた真新しいキスマークをなぞり、そこへ静かに息を吹きかけると、片眉を顰めニヒルに笑みを覗かせた。
彼の言うように、赤々と名無しの肌を彩っている痕は、林檎の果汁で表面に艶付けした生のいちごよりも幾何いやらしかった。
少し言葉で攻めるだけで、腰を震わせてその身を開く……。
甘美な身体はその陰部へと手を伸ばせば、下着をずらして、トレイは好奇心を自ら煽り立てた。
「ぐしょぐしょだな……そんなに感じた?」
「……っ…ト……ッ」
「んん……」
「ッ……んぁ…」
腹筋や臍に垂れたクリームも舐められていたから、名無しは一瞬、鼓動を速めトレイの言動を見守っていた。
脱がされたての露わになった下半身にも何かをされるのかと思うのは、流れを鑑みれば当然だ。
けれどトレイは、皿のクリームも、飾りつけに乗せていた数粒のブルーベリーも手に取ることはなかった。
彼はもともと自分自身の口だけで、舌だけで、名無しの中心を堪能すると決めていたのだから――。
「―――……ッあ…ぁ…」
「はぁ……んむ…ちゅく……」
「トレイ……や…ッ…舌……!激し…――ッ」
枕の端をぎゅっと掴み、頭部をつける面と、トレイの顔とを交互に見て、名無しはひたすらに身悶える。
曝け出さされた陰部はその場所を念入りに、重点的に攻められた。
名無しはトレイの部屋に嬌声を響かせ、その嘶きにも似た激しい声音は、舐陰を続ける彼にとってもかなりの興奮材となっていた。
舌を伸ばしながら服を脱ぎ、ベルトに手をかけファスナーを下ろす。
ボトムが腰からずれてゆく様子が一瞬見えたとき、名無しが同時に目にしたのは、トレイのボクサーの中も大きく膨張していたそれだった。
「あ……ッ…―――」
「ん……チュ…――……ハハ。甘いな……やっぱり」
「っ……ト…」
「別にホールを何切れと食べたところでどうにもなりはしないが……お前のを舐めてると、それだけで胸やけしそうだよ……名無し――」
「!!あ……」
名無しの鼠蹊部から内腿を舐め、親指で器用に表皮を捲れば、目に映る赤い実に優しく口付ける。
敏感すぎるそこだから……時々舌先を強く宛て、身体が跳ねる愛らしい姿を見られれば、それだけでもトレイはじゅうぶん幸せだった。
もちろん、激しく動かせば刺激も続くし、陰核を通して全身に広がる享楽もある。
名無しが果ててくれれば、トレイは更にそれを喜び、自分も続くまでだ。
ねっとりとした甘い蜜を垂れ流す名無しの潤滑を口で掬い、トレイは名無しの絶頂を見届けると、ゆっくりと彼女の上に身を下ろした。
キスをねだるついでに顔をクイ、と近付ければ、それは名無しに眼鏡を外させる合図だった―――。
「―――……ッ…はぁ…ト……」
「…っぐ……あったかいな…お前のなか」
「ッ…や……動ご……お皿…」
「!ああ……ん、これでいいか?もう激しく突いてイイってことだよな?ん?」
「……ひ、ぃ……んあ…」
名無しの唇にまだ残っていたいちごの果汁を舐め取りながら、トレイは彼女との繋がりを確かに作る。
そのときベッドからケーキ皿が落下するかもしれないという懸念を名無しが抱いたのは、それだけトレイのセックスが激しいものであることを、身を以って知っているからだ。
不安を拭うため、隣のナイトボードに皿を移す……。
トレイはそこで、最後にもう一度生クリームを指にとると、自分の舌にそれを乗せ、次いで名無しに再びキスをした。
「ん…――ら……や、ぁ…ト、レ……ッ」
「んー?気持ち好いのか……?俺のをきゅうきゅう締め付けてるぞ……えっちだな」
「ッ……好い…、奥……擦れ…ッ」
「ああ……これか…、お前これ好きだよな……まあ、俺もだけどな…っ……んァ…」
「!!あ……」
セックスのさなか、無意識に名無しの足がいつも向かうのは、トレイの背や腰たる位置だった。
はしたなく、がっしりとその体勢を維持すると、いかにもひとつに溶け合っている感じがしてより熱情的になれた。
どんなに恥ずかしくても、「その瞬間」の為にともなると、名無しの身体はとても素直だったのだ。
一方でトレイは自身の膝を主軸に腰を激烈に動かしながら、溶けたクリームと糸を引く唾液で淫猥にしか映らないキスを続ける。
激しくベッドが揺れれば、伝染する反動ゆえか、はたまた乗せ方の甘さゆえか、ナイトボードに置いたばかりだった彼の眼鏡が、床にカタンと音を立て落下した。
トレイの射精も、ほどなく近い証拠だ――。
「―――……っぐ…ッ」
そして、汗の滲む互いの身体を擦り付け合い、上下の繋がりのもとで卑猥な水音が上がり続ければ、そのときは目前だった。
トレイも耐えきれずに声を漏らし、全身を震わせて名無しに脈を打つ――。
名無しは地を這うような堪える声音を……さらには、結局奏でた甲高い音色で、彼の白濁を確かに受け止めていた――。
――――。
「え……?!まだあるの?」
「ああ……ぎりぎり明日も食べられるからな。まあ生ものだから、本当は全部今日中に食べるべきなんだが……三寸なんて久々に焼いたから、いくつにするか悩んだんだよ」
「……トレイ…わたしが太ってもいいの……?」
「おいおい……そんなわけないだろ?どうした……ん?」
同日、それは日も暮れそうな時間のこと。
ベッドの上で軽くキスをしながら過ごした事後は、トレイの腕枕に名無しが甘えていた矢先、彼の言葉が、ほんの少し場の空気をひやりとさせていた。
「折角のトレイのケーキだよ……、明日でも美味しいのはわかるけど…でもどうせなら今日のうちに食べたいよ……でも…」
「だから太るかもって?はは……お前のカラダのどこに肉が付いてるんだよ…ほら」
「っ……ひゃ…」
「はは!……そうか、なら…出かけるか?ケーキはつめて、うちの連中にでも食べさせるよ……正門で差し入れたらまたすぐ戻って来ような」
ぼんやりと話していたときに目が冴えてしまったのは、トレイがこの日製造していたケーキが、まだ工房の冷蔵庫にあった事実を聞かされたからだった。
名無しはトレイのケーキは大好きだったし、残すのも本心じゃない。
先刻の三寸サイズだって色々遊びに使われてしまったけれど、せめてもの敬意をはらって、結局頑張って事後に食べきったのだ。
口直しにアイスティーも飲み、余韻に浸りながら共に横になっているその状況。
トレイのまだ眼鏡をかけていない横顔を静かに見つめていたら、更に会話の流れで掴まれた脇腹が、名無しの中では暫くじんじんと疼いていた。
「お前がそんなに俺のケーキを好きでいてくれて嬉しいよ……ひょっとして俺より好きなんじゃないか?いちごも最後の最後まで今日もとってたし」
「む……」
「冗談だよ……ん…チュ」
「ッ……、もう…――」
名無しが渡されていたケーキ皿は、既にその役割を果たしていた。
時間はかかれどもケーキはきれいに平らげられ、最後まで残ったいちごも、大事に大事に口にしたことでトレイを喜ばせる。
漏らす冗談も実に愛らしい内容だろう。
行為で乱れてしまった髪を撫で、丁寧に指どおりをよくしてやれば、名無しは赤ら顔で彼の手に手を重ねていた。
そして、作りすぎたらしいケーキは、流れでこれからハーツラビュルへと届けることになった。
身支度を始めるのにベッドから起き上がるため、トレイは名残惜しそうに腕枕を解いた―――。
「フ……さあ、着替えるぞ、名無し……箱に詰めるのを手伝ってくれ」
「――……手伝わされるほど焼いたんだ……」
ナイトボードに戻していた彼の眼鏡を手渡した名無しは、その張り切ったトレイの笑顔に、自身もまた幸せな気持ちを貰っていた。
囁いた独り言だって、もちろん愛ゆえに……。
なぜならそれは、いちごのケーキよりも、もっともっと大好きな―――。
Chantilly aux fraises
20200420UP.
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