主≠監。
drown in sheets
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「ん……」
名無しが見上げたそこにあったのは、あまり覚えのない天井だった。
寝起きでも新鮮に感じ、けれど懐かしささえよぎるのはどうしてか。
不思議な感覚に目が冴えて、起床のために上肢を起こそうと、背に力を入れる。
が……。
「……っ…、あ…、え……?!」
「ん……ああ…起きたんですね、おはようございます、名無しさん」
「ッ……なんで…」
「なんで……ですか?ふむ…」
身体に伝わるのはぬくもりか何かだ……それが、やけに気持ちをふわふわとさせてくる。
思わずもう一度眠りたい衝動にも駆られたのは、寝心地のよさもひとつ理由にあったのだろう。
誘惑に負けず、やはり起き上がろうとした名無しを意外な形で阻んでいたのは、彼女の寝そべるベッドの本来の主だった。
「覚えていらっしゃらないんですか……?昨夜も楽しんだでしょう、……僕と」
「!!……ッ……」
「その様子ですと、記憶にはあるようですが……一時失念してしまうほど、昨夜のことは貴方にとってどうでもよかったんでしょうか、しくしく」
「な……っ、し…ッ」
名無しが目を覚ましていた場所はジェイドの部屋だった。
オクタヴィネルに来させられても、大抵はいつもラウンジのどこかで情事を強要され、そして済まされる。
周りが寝静まった頃、夜夜中である時間帯に敷地の外へと送り出されていたゆえに、彼女が寮内でまともに一夜を過ごすというのはこれが初めてだった。
此処での名無しにとってのベッドというのは、そのラウンジか、奥のVIPルームのソファがあてはまる。
が、素材の良い家具であることに違いはないとはいえ、あくまでソファはソファなのだ。
名無しがぐっすりと、本来の寝具であるジェイドのベッドで夜が更けるまで眠ってしまったのは、その寝心地の好さを思えばじゅうぶん頷けた。
ではどうして、彼の部屋に居たか、だ――。
――――。
『名無しさん?!』
『…ッ、あ……』
それは日付が変わる前、夕刻に近い日中に起きていたことである。
名無しは自身の学校の行事で課外授業に出ており、彼女のクラスが訪れていたのは、とある小さな山だった。
軽く写生をする者、調理実習で使用する為に山菜を集める者。
様々いた中で名無しが選択していたのは前者だった。
日中の出来事とはいえ、そのあと学校に寄らずにそのまま直帰できるよう、最終のコマに合わせて名無しは現地に来ていた。
出された課題は翌日提出すればいい……そして時計の針がその日の終業時間を示せば、各々が下山し、みな帰路に着く。
名無しもその日は友人とは別コマで、一人で山をおりていたのだけれど、その途中の帰り道でジェイドに声をかけられていたのだ。
「そう…でしたね……、部活がどうとかって…山の……」
「ええ……昨夜は流石の僕も驚きましたよ。たまには外部の山にも出かけてみるものですね、ふふ」
「……」
「………運命的だと。…そうは思いませんでしたか?」
「ッ…な……」
平坦な道を歩いている途中、背後から聞こえた声はまさかまさかと思わずにはいられなかった。
こんな場所で耳にしようものなら、抱くのは危機感だったり、また別の昂ぶった気持ちだったり、それこそ様々である。
名無しが名を呼ばれて恐る恐る振り返ったそこにいたのは、どうしようもなく見間違えようもないジェイドだった。
手足の長い、背丈もある、その日は白衣を羽織った初めて見る姿。
タイミング悪く運動着を洗いに出してしまったとかどうとか聞こえたけれど、彼女にとってはそれどころではなかった。
開けた場所でもジェイドと出会ったことで、どのみち名無しのなかに溢れたのは、絶望を含んだ淡い期待だ。
「僕はまあ……そうですね、多少は思いましたよ?それに…普段閉鎖的な場所でしか貴方を可愛がっていない分、あんな自然の中で偶然会えたのはとても新鮮でした」
「…ジェイド……ッ、あ…」
ジェイドはきのこと山菜を両手いっぱい分採取しており、邪魔にならないようそれを専用の籠につめていた。
何をどう見ても珍かに映る、そんな彼にすべき正しい反応が分からない……。
名無しが言葉を失いながらも最初に思ったのは、周りに誰かいないかということだった。
もっとも、誰かが居ても居なくても、困惑することに変わりはないのだけれど……ではどちらの方が自分にとって助かるか、名無しは知恵を絞って考えた。
名無しがジェイドとの接し方を決めあぐねていたとき、かくいうジェイドは、キョトンとして彼女を見守っており、その表情はいたって普通だった。
自分と遭遇して慌てる様子がジェイドにはきっと面白かった筈だし、また同時に、愛らしいとも思えたのだろう。
相変わらず、今この偶然がもしもフロイドだったら……とも考えていたのはお互いさまだったが、そこは敢えて口にはしない。
それにこういう状況では尚更、フロイドとの遭遇はあまり名無しにとっていいものにはならないだろう、ジェイドもそういう予感がしていた。
「なに……ジェ…ッ」
「ん……」
数秒を何十分にも感じつつ、名無しはようやく素直にジェイドに近付くと、自身のその日のあらましを説明した。
ジェイドはにこやかに話を聞き終え、するとゴム手袋を外し、しなやかな手で彼女の髪をそっと撫でる。
柔和な眼差しを向け、同時にゆっくりと顔を近付ければ、耳元で名無しに囁いた「なら今日はもう、今からずっと一緒に居ましょうか」という言葉で決定打を放つ。
笑みに反してその声音は恐ろしいほど熱っぽく、まるで名無しが、その日はもう家に帰れないことを既に物語っているようだった――。
「や……っ」
「ん……皆が起き始めるまでに、僕は貴方を送らなくてはいけません……ですが、時間はまだたっぷりあるんですよ。フフ……早起きっていいですよね」
「、っ……待って…こんな朝か…ら…ッ、んん!」
「本当、ちょうどよかったですよ……僕も昨夜はラウンジに顔を出さなくていい日でしたし、おかげでこうして、貴方を此処まで連れ込むこともできました」
「…あ……ァ…っ」
「チュ……、いつもラウンジでしか抱けませんでしたからね……新鮮ですよね。フ……まあ、だから尚更、貴方が昨夜のことをお忘れだったのはショックです……はぁ…」
「……ッ」
また魔法の類でも込められていたのだろうか。
ジェイドの囁きに名無しは喉を上下させ、一度唾を飲み込みながら身震いを起こしていた。
画材道具とスケッチブックの入ったカバンを持つ利き手にも汗が滲み、感じる視線に足が竦む。
別に呼び出されていたわけじゃなかった。
だから今日はもう家に帰って、何不自由なくいつもの自分を……表の日常を過ごすつもりでいたというのに、一気に風向きが変わって動揺は続いた。
名無しがゆっくりとジェイドの方を見やると、その着崩しひとつ起こしていない白衣姿からなる発言のギャップに胸が高鳴る。
イエスと答えるほかないことなど、もうとっくに知っていた。
けれどせめて戸惑うくらいの純情さは持っていたかった。
僅かな沈黙はその表れだ……。
一考後に名無しは黙って頷くと、今度は頭部にジェイドの手がスッと伸び、再び軽く撫でられた。
髪と違って感覚の顕著だったそこへの優しいタッチに名無しは頬を染め、自分のその日これからの予定を、懊悩も虚しく、結局ジェイドに預けていた――。
「ショ……ッ、うそつき……それに、さっきは寝ぼけてただけで……わ、忘れられるわけ……っ、……ッ」
「ああ……そうですか…では、昨夜はどんなセックスをしたか、この口でお話してもらいましょうか……フッ」
「!……ジェイド…ッ」
山をおり、カレッジの敷地に到着し、植物園に山菜を入れた籠を置いて向かった、鏡舎からのオクタヴィネル。
人目を避けて初めて来たジェイドの部屋……の前に、名無しはまずラウンジに通されなかったことに驚いた。
まあ、営業時間中の来寮だったし仕方がないとはいえ、それでも彼の自室に直接向かうなんて思いもしなかったのだ。
そもそも、ジェイドがフロイド以外の人物を入室させたことも意外だったし、それだけ自分は、どこか信頼でもおかれているのかと勘違いしそうにもなる。
いや……それは多分信頼じゃない。
自分はただの、彼らの愛玩でしかない。
その上でも下でもないのだから、きっと咄嗟の思い付き、且つ計画的に、此処まで来させられてしまったのだろう。
名無しは寂しげな目元を拵え、物思う表情で部屋に入ると、戸を閉めたジェイドに背後から抱き締められた。
それは情熱的な抱擁というよりは、どこか渇いたそれに思え、名無しの困惑に拍車をかける。
名を呼ぶついでに振り返ればキスの雨が突如として振り、部屋の入口で落とした鞄はそのまま、腕をとられれば、倒されたのは彼のベッドだった。
何が何だかと状況を整理する間もなく、乱れひとつなかったジェイドの姿がまさか目前で崩れてゆく。
白衣の釦をひとつずつ外しながら、最後には脱ぎ捨てるなんて実に彼らしくもない。
組み伏せられたまま中の制服も着崩れると、ベッドでそこまでされれば、名無しにとっての見解は自ずと追い付いた――。
「あ…んぁ……ッ――っも、……」
「ふふ……ええ、そのとおりですね…ですが壁を見てください……ちゃんと僕の白衣も、貴方の服もハンガーにかかっているでしょう?鞄だって、靴もそこまで移動させましたよ」
「、っ……あ…」
「フ……他には……?昨夜は何がありました?僕の背に爪跡を残して……散々はしたなくこのベッドで喘いでいた貴方は」
「あ、と……ン…ッ、あ……ジェイドの、スマホに……フロイドから連絡が…き……!っひゃ…」
「そうですね……フロイドに嘘がつけなくて、素直に訊かせて見せてあげたんですよね……僕に激しく抱かれる貴方のいやらしい姿を。声……今も出していただけますか?僕の為に」
「……ッ…、…は、ぁァ……っ」
初めて寝具の上で抱かれたことを、名無しが忘れるわけもない。
事実、確かに寝起きは意識が覚醒していなかったぶん呆けたけれど、それを思い出すのにそう時間はかからなかった。
ベッドに寝かされてジェイドを見上げたとき、これがフロイドならと脳裏によぎりはした。
けれど自分を抱くジェイドのしなやかな手付き、指遣い、その愛撫のひとつひとつに秒で溺れるのは相変わらずだった。
淫猥からなる沼の奥底まで落ちて、這い上がるのに時間がかかって、現実の時間があっという間に過ぎたのは笑い話にもできよう……。
ラウンジで凌辱されるいつもの夜闇さえ越え、食事を摂るのも失念するほど、セックスに夢中になった。
痙攣する身体、膣が度重なる摩擦により悲鳴をあげて、食欲と性欲を撥ね退けて最後に名無しに訪れたのは睡眠のそれだ。
口含まされた水を少量飲んだ後、すぐに意識を預けた彼女がそのままジェイドの腕のなかでぐっすりと眠ってしまえば、ジェイドもまた、名無しの寝顔を肴に目を閉じるだけだった。
「名無し?ほら……」
「あ……んぁ…」
早朝に自然と目が覚めてしまったのは、枕をはじめ、いつもの環境とどこか違うと無意識に感じていたからだろう。
それでも早朝……外の世界は、きっとまだ朝靄さえかかるぎりぎり前かもしれない。
部屋のどこかにある時計を見る余裕もなく、名無しは再びジェイドのベッドを軋ませ、四方四脚とスプリングに負担をかけた。
「フロイドは貴方に何と言ったか…覚えていますか?僕も聞こえていましたからね……ごまかさずに言ってください?」
「っ……オレも…混ざりたい…って……でも、アズールの頼み事で、出かけ……んっ…あ……ッ」
「そうですね……そのあとは?ん……ちゅ」
「ッ……も、ゆるして…そんなに…舐……」
「名無し」
「…ッ……ジェイドに、朝まで……しつこくやられ……って――ジェイド……ッ」
「ふふ……いい子ですね、ちゃんと覚えてるじゃないですか。……そうですね、朝までしつこくとのことでしたが、残念ながら貴方は途中で落ちてしまいました。だから……」
「……?……!いや…――っ」
夜のあいだに抱かれたとき、名無しはジェイドのスマホが鳴り響いたと同時、嫌な予感を覚え背中に汗を滲ませた。
ちょうど、もう既に繋がりはできており、ジェイドにとっては彼女の膣が締まって都合は好かった。
スマホを鳴らした相手はフロイドだ。
ジェイドは勿論、その着信を拒否する理由はないとでも言いたげなカオをわざとしてみせ、名無しの前でスマホを手に取り、通話に応じた。
彼らの中では日常的なものなのであろう会話が、何往復か行われているのが聞こえてくる。
聞き取る為の音量は普通でも、声を殺していた名無しには、機械ごしのフロイドの声もじゅうぶん耳に入っていた。
「ジェ……、あ…」
「昨夜の続き、ですよ……。貴方も寝落ちていれば、まだ満足はしていないでしょう?こうやって……僕がいまほんの少し触れただけで、随分と身体も熱くなって…」
「……ッ…ほんの…すこしなんかじゃ…ひ、ぁ……」
「ああ……触れた、も間違ってはいないのでしょうが……うなじに噛み付かれて、いつものように胸を舐め回されて、と先に言った方が正しかったですね、ふふ」
「は……ッ、ぁ…」
ジェイドとの通話中、彼が微かに息を乱しながら話していることにフロイドは気付いていた。
逆に気付かないわけがないと言った方が自然かもしれない……それに、相手は当然予想もついている。
けれどまずは冷やかすため、そして名無しにも聞こえるように、フロイドはわざと煽り文句をジェイドにぶつけていた。
『なーに?誰かとヤッてんの?新しい女ー?』
その言葉は、名無しの動揺を誘うにはじゅうぶんだった。
真上で見ていたジェイドも微笑み、冷静にフロイドに相手は名無しだと返せば、靄や嫉妬といった感情に追いつめられた彼女の表情はスッと引いてゆく……。
そこまでの一分にも満たない過程が面白くて、通話が切れていなくてもジェイドは惜しみなく律動を続け、離れながらにして、二人で名無しを弄んだ。
『!あはははは……いいカオするじゃん…カワイイ~』
ジェイドが偶然山で出会った名無しとのそれを、フロイドもまた少し羨ましそうに声に出していた。
が、自分もバスケの試合会場で彼女と出会っていた分、まあおあいこだろうと妙に納得もしていた。
自分の存在が知られたあとの名無しは、声を殺す必要はなかったが、羞恥心が嬌声を出すことをよしとしない。
ともすればジェイドが出させるまでであり、スマホ越し、名無しのそれを求めたフロイドに、ジェイドはサプライズを送った。
動画に切り替えれられ、ジェイドの下で組み伏せられ、圧に耐える名無しが画面全体に映し出される。
名無しは顔を逸らしたけれど、頬にジェイドの手が宛がわれれば、画面の中のフロイドと目が合い、膣はまたきゅっと窄まった。
『――……ッ』
『あは……!いいねぇオレも今すぐ混ざりてえし今度ベッドでやりて~……ねえねえ気持ちいい?よかったね、いーっぱいジェイドに可愛がってもらえるね~やっぱ朝まで?ははっ』
スマホの奥に見えるジェイドの表情は酷く淀み、微笑みつつも冷えた視線が名無しに刺さった。
同時に画面の中でも同じようにはしゃぐフロイドが居れば、結局二人に犯されている感覚が彼女を襲う。
迫る緊張感に、それでも同時に駆け抜けようとする絶頂。
名無しは夜のあいだに果てた一陣分を二人に晒し、そこで相当のメンタルや体力を削がれていた。
電話がようやく切れたと思ったあとも、ジェイドの凌辱はまだまだ続くし、もう一人の自分はそれを恥じらい、また嬉しくも感じている。
そのとき頭のなかで唯一、名無しはセックス以外のことを考えていた。
それは鞄のなかに入れていた大事なピルケースを、いつ手に取れるだろうかということだった。
――――。
「っも……ジェイド…」
「上手に反芻できましたね……僕も貴方のおかげでより思い出せました…本当、昨夜は楽しかったですね」
「……っ…、あ……」
「ふふふ……貴方が振り返っているあいだに、僕が舐めた貴方の此処……少しふやけてしまいましたか?とてもしっとりとして…」
ベッドのなかでもがき、足掻く自分が、まるで水中で天敵にでも襲われているように感じた。
相手は確実に追い付けることを分かっていて、わざとスピードを落とし、逃げ惑う獲物を見て楽しんでいる……。
逃げるのは名無し、そして勿論、追っているのはジェイドだ。
部屋に漂う朝の冷ややかな空気は一気に熱を帯び、それが自身にも篭り始めれば、寝起きの冷えも瞬時に消えた。
「ちゅ……んん」
「ッ………」
組み伏せられた状況で、ジェイドに昨夜の出来事を振り返るようせがまれていた名無しは、同時進行で身体に降り注ぐ愛撫に嬌声を漏らしながら、それに応じた。
事細かに、とまではいかなくとも、端折ればどうなるかわからない……そう思ったのは、ジェイドの表情ひとつですべて察せられたからだ。
特に彼は、フロイドからの着信があったときのことを名無しによく咀嚼させ、語る彼女の恥じらう声音と内容に興奮を覚えていたようだった。
自分が強要し、自分たちのセックスについて話す愛玩の声色を肴に、下半身がいきり勃つ。
元々起きたてで充血していた海綿体の膨張はより露骨なものとなり、先端から漏れ出たジェイドの体液は、名無しの腿をぬるりと汚した。
「ん……あッ…」
沢山のキスをして、互いの唾液を絡ませ合い、それを共有するだけでも昂りは明らかだった。
ただ、ジェイドはその程度の前戯を施すだけでは満足するような器じゃなかったし、なにより彼の自尊心も許さないだろう。
途切れ途切れでも言わせ続ける、最後まで……。
屈しながら懸命に話す名無しの健気さは、ジェイドの、彼女を愛でたいという気持ちに火を点けていた。
「あ……ジェ、イ……ふぁ…」
「ふふ……でもね名無しさん…こんなにしっとりとしていても、乳首は硬くなったままなんですよ?もうどれくらい舐め回したか…こんなにぷっくりと膨らんで」
「ッ……!!あ……ひ、ん…」
「……これ、本当にお好きですよね……ン…こっちと、……んむ…こっち……ふふ…今はどちらが好いですか?」
「――……もうむり…ッ…舌……離し…!ジェ、ぃ……」
説明を強要した序盤から今に至るまで、続けた愛撫は様々だった。
種類としては決して多くはない……けれど、何しろジェイドは一度も休まなかった。
何処かしらに唇を宛がい、時には熱く囁く。
口ごもる彼女に助言をしては、場を止めずに流れを円滑にしていた。
名無しの肌のあらゆる部位に残るジェイドの噛み痕と、皮膚をきつく吸った痕もまた卑猥で、色の付いた場所を舌が這えば、そこは艶めかしく照っている。
組み敷いたまま万歳をさせ、両の手首を彼女の頭部で固定しながら腋を舐め上げれば、名無しの背中は何度も何度もベッドから浮いた。
「ジェイド……おかしく…ッ、ほんとにもう…無理、だから……」
「無理なんて……ふふ、とんでもない…――ただ、僕は貴方を隈なく愛したいだけだというのに」
「ッ……、…ハ、ぁ……」
反芻のさなか、ジェイドが特筆して攻めていたのは名無しの胸だった。
一見ありがちな女性の性感帯である……が、そこは同時に、彼女を焦らすのに最適な部位でもあった。
脂肪とも無理なく形容できた房ふたつは、その分厚さから、感度も人によっては落ちると聞く。
ジェイドは名無しが、胸を攻められるのを好きとは知っていても、同時に物足りなさを覚えていることも抜かりなく把握していた。
焦れて、焦れて、届きそうで辿り着かない先端への愛撫。
長い舌を伸ばして、触れない様子を見せることもまた、名無しの焦燥感をいやらしく誘った。
かわりに乳房を揉みしだけば、それには素直に感じる可愛さも持ち合わせている。
けれど名無しは結局、言葉にはせずともより一層先の刺激も渇望しており、ジェイドがいよいよ口腔に乳首を房ごと含めば、彼女の身体はまた仰け反った。
「うそ……だって、ん…ぁ……焦れ…」
「焦らすのも、愛情表現のうち……ですよ?」
「ッ……はぁ…」
「そうですね……フロイドの言葉を借りるとするなら、……もっとスケベな貴方が見たいんですよ…僕は。ふふふ」
「…ッ……」
そこからはジェイドがひたすら、彼女の左右のそれを交互に愛でた。
延々と続けていればしっとりとふやけもするだろうし、何だったら吸い付くだけで、ほんのりと甘みも感じるまでになっていた。
じわりと感じたミルクの味覚を匂わせる言葉を紡げば、更にいやがる名無しが目下で悶え、ジェイドをまだまだ高揚させる。
時々は腋や首筋も再度舐め、堕ちる瞬間を今か今かと楽しんだ。
が、ジェイドが彼女の陰部に膝を立て確かめるまでもなく、名無しはぐっしょりとシーツを濡らして、声も、瞳も、その綺麗な色をどこまでも霞ませていた。
「ジェ……はぁ…ぁ……」
「フッ……ね?朝からこんなにもクチュクチュと濡らした貴方の、……さあ、言って?聞かせてください…いつものように」
「――……ッ…」
「名無し……さぁ…うんといやらしく…卑猥に。そうすればもう、焦らしたりしませんから……疼いているのでしょう?」
「ッ…――……今度は、名無しの……ぐしょぐしょになった…――、舐めてください…ジェイド……」
「また……ふふ、どこがぐしょぐしょなんです?僕はまだ触れてないんで……一体どこのことやら?」
「だから……っ…―――」
ジェイドのベッドシーツには、ところどころに皺ができていた。
もちろんそれは名無しが握り締めたことによって生じたものだけれど、爪のひとつひとつの曲線さえくっきりと残るほど、そこで過ごした夜は熱情にまみれていた。
ジェイドの背にも名無しの爪痕はついていたし、余程の烈を物語っていたことは間違いないのだ。
それを再び、早朝である今も繰り返されようとしていれば、彼女の目に光るものが淀むのも納得がいった。
無理やりいつもの懇願……。
恥ずかしい言葉を並べさせられて、どうしようもなく欲望で溢れた身体の熱を吐き出す術を求める。
起床して、互いに裸で目が合って、楽に帰れるわけなどどこにもなかった。
攻めぬかれた身体に名無しが欲していたのはもうジェイド自身だったし、どんなに嫌がる素振りをしても、結局身体は正直だ。
馬乗られた彼の脈だって、決して正常じゃなかった。
「!!」
幸い、名無しの願いはジェイドに届いた。
けれどジェイドは、身体をずらすことはおろか、名無しの陰部に顔を下ろすこともなかった。
下ろせなかったのは、今度は自らがシーツに背をつけたからだ。
一瞬でその細い腕をとり彼女を抱き起こせば、ジェイドは自らの口元に名無しを跨らせることで、下からその淫猥な裸体を眺めた。
「や……ッ…――!!」
「んん……。フ……今朝はこれくらいで許して差し上げましょうか…じゅうぶんでしょう。ちゃんと聞こえましたよ?クリと……――って。ふふ」
「っ……!!ひ…、ひぁ……ッッ」
「ほら……存分に気持ちよくなってくださいね?…ン……」
ジェイドの名無しを弄ぶ様子はかなり手慣れていた。
まあ……もう何度も躾け、飼い馴らしていれば、扱いも容易になるのはよくわかる。
が、それを差し置いてもまだまだ余裕を持っているように感じるのは、彼自身の才と、あとは経験が影響しているのだろうか。
知り合う前に、何処でどんな人との出会いと別れを繰り返しているかは分からない。
時々フロイドが口漏らしていた独り言を訊いていても、ジェイドのすべてが理解るわけでもない。
如何に名無しが、ジェイドについて無知であるかを思い知らされる瞬間だ……。
なのに彼はどこまでも自分を知り、心の鍵穴にまで鋭く爪を立ててくる――。
見下ろした先で重なる視線に背中がぞわぞわと震え、伸ばされたジェイドの両腕が、名無しの胸を強く鷲掴む。
跨ったその場所で浴びる舐陰はひどく心地好くて、焦らされてきた分の反動は、たった数秒で訪れていた。
「ん……ッ…――」
「!……軽く達ったんですか?ぴくぴく震えて……上も下もこんなに涎を垂らして」
「っ……ハァ…――」
「……ふふ。でも、軽く……ですよね?これで終わりだなんてまさかね……僕が舐め足りません。……ン」
「!!ひ……いや…ッ、ジェ……今いっ……!いったのに…」
「ン……」
「……は、ぁ…ア……や…、出……ッ」
自分の顔上で腰を小刻みに前後させ、背をめいっぱい反らして名無しを絶頂に至らしめる。
男と同様に、元々陰核も朝特有の充血を見せていたし、膨らんでいた分、その速さはなかなかのものだった。
名無しはジェイドに体重をかけまいと、入れていた膝から腿の力を一気に奪われ、その結果、彼の唇の感触をダイレクトに浴びていた。
濡れに濡れた陰部に触れ、開口して舌を伸ばされれば、まだまだ快感は駆け抜ける。
達ったばかりのさなかに陰唇や膣中になまぬるい軟体物が捩じ込まれれば、甘い声は嫌でも出るし、背は何度でも仰け反った。
「!」
「はぁ…もう……っも…、ジェイド……ッ」
ジェイドを見ていられず、上を向いて刺激に耐えていた名無しは、再び起き立てのときのように天井を仰いだ。
真っ白なそこは、いついつまで見続けても真っ白なままだ……。
けれど横目に感じた、壁に掛けられたテラリウムのガラス容器に反射する、乱れに乱れた自分の卑猥な姿は、そんな色とは到底程遠かった。
「……ふっ…、最高です……」
「?……ッ!あ…あ……」
「ああ……僕もこんなに濡れてしまいました…貴方ので」
「…ッ……、言…っ…ないで……恥ず…」
「相当好かったということですよね……嬉しいですよ、名無しさん」
ジェイドもまた、壁を見つめてテラリウムに反射する名無しの姿に恍惚を覚えていた。
陰部に舌を喰い込ませ、男のものに比べて軟弱なその部位さえ、彼女の膣は容赦なく窄まりジェイドを締め付ける。
ただ、舌がいくら気持ちが好くても、届かない場所は当然あった。
名無しの好いところは分かっているし、その為に添えた手は、ゆっくりと中指を忍ばせた。
「…っ……ちが、わたし……は…、!!」
「……このまま貴方を寝かせて、舐め合おうと思っていたんですが…、それはまたの機会にしましょう……今は僕も、貴方が欲しい。名無し……」
「ッ……――」
名無しは揉まれていた胸に何もなくなったことに一瞬、不満気な表情を浮かべた。
けれど陰部にジェイドの指が挿入され、同時に勃起した実を舌先で愛されれば、不満どころか、さらけ出すのは淫猥な顔だ。
口角から垂れた唾液は顎に伝い、鎖骨あたりで糸を引いている。
ジェイドの指の腹が擦る名無しの内側は、そこが悲鳴をあげられないかわりに、彼女自身がしっかりと嬌声を響かせた。
下から脳髄へと駆け上げってゆく享楽に全身が打ち震えば、愛で続けられる赤い実もなお過敏に、甘露を零させる原因となる。
名無しが再び短い間隔で果てたときには、ジェイドの上半身は甘露とはまた別の蜜でも濡れに濡れ、彼女に起きた兆候を露わなものにしていた。
「――あ……ぁ…」
「ふふ……気持ちが好すぎて、膝も……全身震えていますね…」
「っ……!んん……」
「ね?やめられないでしょう?僕とのセックスは……こんなになっても、貴方は僕のこれが欲しいようですし…でもそれは僕も同じですよ」
「ッ……うそばっかり…ジェイドは……平気でうそ…ッん……」
「嘘だったら、こんなに貴方を愛していません……。それに僕は……そう言われる度に傷ついてるんですよ?」
「…っ……あ…」
「僕にたっぷり、時間をかけて全身舐られて、達かされて……こうやって潮まで吹いて僕に溺れる貴方に、どう嘘をつけと?」
「――ひ、ぁ…あッ……抜い…ッ」
「ふふふ……抜くわけないでしょう?僕の精子で、貴方のなかをめちゃくちゃにするまでは……っん…」
背中を弓なりにしたときに筋張った名無しの腹筋は、じっとりと汗でてかりとてもいやらしかった。
それを下から見ていたジェイドも、下半身はなかなかに我慢できないものを感じていた。
先走りなんてとっくに垂れていたし、彼女が仰け反ったときに一瞬、手が触れただけで、陽物はぴくぴくと疼いた。
ジェイドは、彼自身の企てる計画の範疇で何度でも正当化できるような嘘を平気でつくけれど、名無しに対する思い入れには、少なくとも真実もちゃんと混ざっていた。
もちろん、嘘がないとは言い切れない……。
ごまかせるだけの自信と余裕、考えを持っていてこそとれる彼女への毅然とした態度がそれなのだろう。
「ひ……ぁん…あ!……ん、……っふ…」
絶頂を二度味わった名無しに、ジェイドが次に与えるものは自分自身だった。
言葉を紡いだとおり、本当は互いに舐め合いたかったらしいのだけれど、それを飛ばしてでも今すぐ挿入まで至りたいと思わせる。
それだけ自分の上に居た名無しは淫らで、挿入欲を高めさせられたし、配分していた時間にも気を遣う必要が少しあった。
座していた位置をずらして、跨らせるのは変わらず、騎乗位を保ち挿入を誘う。
ジェイドは名無しに挿れさせるよう囁きながら、彼女が恥じらって戸惑っているあいだに不意をつき、自ら挿入してその身を悶えさせた。
「ジェ……、んん!」
「ちゅ……ああ…いやらしくて最高ですよ…貴方はこんなにも僕に……腰が勝手に動いて、本当…卑猥です」
「ッ……いや…抜いて……ッおねがい…じゃないとまた……わたし…」
「いいですよ……僕の上で、そのイキ顔を見せてください…僕だけに」
じゅくじゅくと淫水を漏らし、熱を孕み育った膣は、その締まりも温度もジェイドを昂らせるには事足り過ぎていた。
少し突いただけで名無しは表情を崩し、下がり眉に潤んだ瞳は、彼の熱情をより深く誘うのにもじゅうぶんだった。
律動のたびに卑猥な音が奏でられ、小さく響くベッドの軋みもまた、昨夜の情事を思い出させてくれる。
深く深く、激しく重なったことが紛れもない事実なのだと思い知らされれば、名無しがジェイドの言葉に真偽を問うことは、どれほど小事だったかもよくわかった。
「いや……おかしい、の…ジェイドのがいっぱいあたって……」
「ッ……そんなにしがみついて…ふふ。可愛いですよ……ほら……キス…しましょうか」
「!ん……んっ」
「チュ……――ああ…貴方が、僕だけのものならどんなによかったことか……」
「ッ……、あ…」
「ふふ……なんて…。どうです?感じましたか?」
「――……ッ…」
挿入の状態にありながらぎゅっとジェイドにしがみつき、そのまま交わすキスの心地好さは何にも代え難いものがある。
名無しがそれを好いていたから、ジェイドは容赦なくその言動を匂わせ、ほどなく唇を何度も重ねた。
律動で時々唇の位置がずれても、懸命に舌を伸ばして絡ませ合おうとする名無しは、ジェイドから見ても相当健気で可愛く映っている。
彼の言葉の真偽より、目の前の快楽を名無しが優先すれば、それはもうジェイドにとっては最良のシナリオが既に完成していたも同然だ。
「あ…んむ、……ちゅ…チュ……」
「名無し?ふふ……こらこら…締め過ぎですよ……もう出しても?」
「ッ……いや…、もうすこし……あ、…んんっ」
「…っん……――では、今日もずっと……此処に居ますか?僕の相手をしてください」
「!え……ッ…」
名無しの自分に溺れる儚い姿を目の当たりにし、ベッドを海に見立てるだけで征服欲がどこまでも強まる。
ジェイドも既に空腹感のピークを越えていたけれど、普段それなりに摂る食欲よりも、彼は名無しを抱くことをもはや優先していた。
目が眩み、自身が溺れることなど決してない。
が、名無しを愛でる瞬間だけは、その殆どが全力であり、真実だ……。
策士たる尊厳だけは、そしてプライドだけは絶対に失わない。
それでも、ふと口にしてみせた束の間の、名無しと過ごす二人だけの時間というものを、ジェイドはその瞬間、純粋にもう少し欲しいと思っていた。
「僕は別に構いませんよ?そうすれば時間も気にせず、まだまだ貴方を気持ち好くして差し上げられます。なにより……足りないのでしょう?まだ」
「っ……ジェイ…ド…」
「――……そうですね。フロイドからの連絡も断ちましょう……僕がスマホの電源を切る、と言ったら……ふふ、どうです?」
「ッ…、あ……」
「!ふふ……言った傍から、ですね……少し待ってください?感じても、声は立てないで」
それは、名無しがジェイドに内部を侵食され、抽送に熱を帯び、再び甘露を垂らしながら感じていたときだった。
キスのあまりの心地好さにはまた絶頂を……。
そして、ジェイドにも射精欲を煽った矢先のことである。
この繋がりが終わってしまうことが、どうしてもどうしても受け入れられなかった。
射精されれば、昨夜から続いた夢の時間が本当に終わる……。
事後のまどろみもろくに過ごせず、忙しなく身支度を整えて、最後には敷地の外へと送り出されてしまうのだ。
直感でそんな気がした名無しは、ジェイドと離れることを頑なに拒み、更にその身にぎゅっとしがみついた。
胸元同士が、ひたひたと先刻の体液で擦れ、いやらしく音を上げている。
下半身だってそれは同じで、いつか終わるにしても、とにかく今、名無しは離れたくないと願ったのだ。
「……ッ」
そんな叶う筈もない我儘を口にして、名無しが次に耳にしたジェイドの言葉は、それこそ耳を疑いたくなるものだった。
血よりも濃い絆でもあろうはずのフロイドに、何をどうすると彼は言ったのだろうか……。
快楽はそのまま、浮ついた想いから少し正気に戻った名無しは、そのときジェイドが手を伸ばしたスマホが光ったことで、胸をざわつかせた。
「おはようございますフロイド……早いですね…ええ。起きていますよ……ただ、今日は僕の我儘に付き合って貰いたいのですが」
「ッ……ジェ…ッん」
「シー……。…ええ……そうです、ですから今日は適当に過ごして下さい。部屋に来てもダメですからね?アズールにも、午後から出るとお伝えください」
「!」
「……ふふふ。分かりましたよ、それじゃあ…―――……これで信じていただけます?名無し」
セックスに夢中になっていれば、どれだけそのとき時間が過ぎていたかなんて名無しには分からなかった。
よほどいい時間だったのだろう……いよいよこの幸せに終わりが来るとばかりに、スマホを鳴らした電話の主はもちろんフロイドで、ジェイドはそれを素直に受けていた。
が、ジェイドが口にしたのは、名無しにとって望ましい未来を約束するものだった。
冷めない熱を、ほどよく溶かしつつ、なおも混ざり続ける為に……。
二人にまだ必要だったのは、時間と、互いの肌の感触だ――。
「…ジェイド……」
「今日は特別です……だってそうでしょう?昨日、貴方に会ったのも……きっとこうなるためです。ふふ……」
「ッ……別に…だからその……運命的だとか、そういうのは私は……!んん…」
「ちゅ……、…名無し」
「…ッ……、ジェイドは…いじわる……だよ…、なのにこんなことされて…わたし……!ひぁ……」
「好きな人は、いじめたくなるものです。ふふ……さあ、気が済むまで僕に身を委ねてください?僕も貴方と一緒に……時間はたっぷりできましたから……――」
その言葉にも、きっと嘘が沢山混ざっている。
惑わされたりもしない……。
ただ、惑わされるふりをするだけで、過ごしたい時間が与えられるのなら、今はそうするまでだ。
スマホでのフロイドとの通話を終えると、ジェイドはそれを切ったあと本当に電源を落として、再び名無しの背に腕を回していた。
しなやかな指先が背面を上下し、擽られた感触は、やがてすぐに快感へと変貌する。
浮いた鳥肌には頬を染め、キスをし合って唾液を絡ませれば、色付いた呼吸に高波が近いことも互いに悟った。
「あ…ッ、ひぁ……!いく…ジェイ…ド……――ッ」
「ッん……、…っく……――」
名無しは首筋に吸い付かれたとき、ジェイドの偽りの愛に身を投げ、何度も何度も彼にあわせて腰を動かした。
髪で隠せないその場所には、真新しい赤がまた残されたのだろう……。
背や内腿、腕にも既に咲かされていたそれを、まだなお付ける彼の思惑は到底読み切れない。
けれど、ジェイドは自分に感じて、同じように吐息を漏らしている……膣中に濁りを吐き出した事実は、偽りようがなかった。
「……――」
胸元に寄り添い、肩で息をする名無しは、ジェイドが自分の頭を撫でる感触を覚えながらゆっくりと目を閉じる。
この、どうしようもなく溺れていた人のベッドの上、シーツの波間で……。
再び意識を預けるまでに手にしたかったものに、彼女が腕を伸ばすことはなかった―――。
drown in sheets
20200419UP.
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