主≠監。
dreaming island Ⅲ
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「んっ……ちゅ…んぅ……っハ、ぁ……」
「ン……。名無し……」
「…ッ……お湯…ぬるくなっちゃうよ……?」
「!フッ……分かってたよな?あいつが戻るまで、今がただ紅茶を飲んでおしゃべりするだけの時間じゃないことくらい」
「ッ……――……ッ…、トレイくん……」
「これは俺の、か細く芽生えた自我で考えたあくまで憶測だけど……多分あいつの……”今日は何もしない”は嘘だ……」
「っ……」
「――……本当はお前を抱きたい筈だよ。……ジェイドを忘れさせる為に」
「!!ト…レ……」
交わした口吸いに違和感などなかった。
そう感じる筈もなく、いつもしているトレイとのそれと何ら変わりはなかった。
啄ばまれる行為も、窄まった彼の唇が名無しの同じ部位に吸い付きながら、柔らかな感触を味わっている様子も……。
重なる視線だって、何度喩えようともトレイでしかなかった。
きっと、フェイクにとっては一杯目を飲み終えた瞬間を合図と決めていたのだろう。
和やかなひとときの終わりと共に始まる、暫く続く乱れた時間。
強かな瞳は名無しを捕らえて離さない。
そして胸の内を暴き、想いを口に出すまっすぐな意志。
「お前ももう…ずっと待ってるよな?まともにキスしてよく分かったよ。何もしないなんて言われてただ眠るだけ……シャワールームで一方的にあいつをヌイて満足なわけないよな」
「…っ……、……」
名無しはフェイクを心底ずるい男だと思っていた。
背に回されている、抱き留められていた彼の腕から感じる熱。
顕現したばかりだというのに、体の奥深くで共有しているのだろうか、本体が経験してきたことを既に認識し、手に取るように言葉を連ねる。
それがでたらめでもなんでもなく、名無しが暴かれたくないひた隠していた本音だったのだから、赤らむ頬を落ち着かせるにはどうしても難もあった。
「だって……トレイ……は…私に負担がって……今日は…だって今日は……わたし、ジェ……」
「俺はあいつだから分かるよ。……お前に負担がかかると思ってることも、ベッドでただ眠るだけの時間が欲しいと思ったことも本当だ。全部本当……けど抱きたい」
「ッ……」
「シャワールームでお前が誘ったときも、本当は首を縦に振りたかった筈だ……まさか、咥えられるとは思ってもみなかっただろうけどな……はは」
「っ…う……」
名無しはフェイクの膝の上に居るあいだに、自身の体温が少し上昇しているような気がしていた。
まあ間違いなく上がっているだろう……頬だって赤いし、耳まわりにも熱っぽさをどうしても感じる。
フェイクの言葉に的確に抉られて、それを心地よいと思っていることを見抜かれまいとするいじらしさが、眉を顰める困った表情で描かれてゆく。
「だって……でも、……もう……よくばりだよ、トレイは…ト、……トレイくんも…」
「うん…。そう……欲張り……。名無しと同じだな……フッ……」
「!ト……んん…ッ……」
「お前をジェイドから遠ざけられなかったのは、俺を出すタイミングを誤った所為だ……俺もあいつもその後悔は小さくないよ。けど……こうして今みたいな時間も迎えられてる」
「トレイくん……」
「――……ん?ああ……フフ。さっきよりカオ……赤いぞ?」
「っ……それは……トレイくんが……いきなりキ…ス………」
「気持ちいいから……?セックスと同じくらい。フッ」
「ッ……」
どうせ困っている仕草の意味も、本音は嬉しいこともばれている。
トレイの魔法で出てきたばかりでも、それくらい勘も働けば、優秀さゆえに顕現だってしているのだ。
半ば投げ槍に認めて突き放そうとすれば、名無しの言葉に同調することも忘れない……そんなところもまた本体と瓜二つだった。
優しく撫でられる髪に伝う、あたたかさに心地好い感触。
低くなったかと思えば、甘くやわらかに囁きを降らせて安心感を覚えさせる……。
「フ……他に言いたいこともなさそうだな……なら早くベッドに戻って、お前の下着が濡れる前に脱がさないといけないな」
「!ッ……もう…分か……っ、さっき魔法で出てきたばっかりなくせに……っ…そうやって全部見透かした風な……もうッ……ほんとずるい……」
「ハハ……身に覚えがありすぎるだろう?俺は俺だから。お前の大好きな……トレイも、トレイくんも……名無しのことならなんでも知ってる」
「…っ……あ……」
「忘れさせるよ。名無し……――」
ただ簡潔に、欲しい言葉をそっと囁かれる。
それだけで不安が拭われれば、たとえ同じことが繰り返される可能性があったとしても、この場で得られる安堵の他に替えられるものはなかった。
フェイクのまっすぐな言葉に胸を打たれた名無し、首を縦に振る以外に所作もとれず、ただただ潤ませた瞳を彼に向けるだけだった。
こんな、また単純な……。
それでも守られている、大切にされている。
少しすればトレイが戻ってきて、今度こそ彼にも愛してもらえる。
色恋に染まった感情をリセットするには、トレイのベッドの上が相応しいだろう。
当然フェイクも同じ気持ちであることは明白であり、彼は名無しに再び口付けると、その身をそっと抱き上げた。
穏やかに微笑むフェイクと目が合った名無しは、ベッドに寝かされるまでのあいだ、
数分先の自分がどうなっているかを思い浮かべながら、恥ずかしげに彼の上肢にしがみついていた。
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