主≠監。
dreaming island Ⅲ
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「、っと……着信だな……――……あー……悪い名無し、少し出るよ」
「ん……どうぞどうぞ…」
曰く、温め直したとはいえ、その加減も本人的にはジャストなものであるという自負をトレイはもっていた。
だからまずはストレートで、とばかりにカップを目の前に置かれる……。
着席してから手を伸ばすまでに響いたスマホの着信音に思うところがないわけじゃなかったものの、ここで目くじらを立てるのも違うと感じたのは、ある種慣れもあったのだろう。
メンタルは強くもないし弱くもない、恐らくはいたって普通だけれど、名無しはいい場面でトレイのスマホが鳴っても、もうそれだけで動揺を誘われることはなかった。
……ただし、例外もあることを思い知ったのは、トレイがその名を口にしたからだ。
「もしもしケイト?……俺だよ……ああ、うん。……っ、……リドルが?」
「!」
直接は関係ない。
けれど大いに関係がある。
名無しにとってはそんな形容で示す相手だろうか。
電話をかけてきた主は問わずとも、トレイが呼びかけたことですぐにケイトだと理解出来たのだけれど、話の内容に出てきた名には思わず緊張感を抱かずにはいられなかった。
それにそこから次、二人がどのような会話をスマホで広げるかも、名無しにはなんとなく察しがついてしまっていた。
きっと、残された時間は穏やかに過ごせない……そんな気がしてならなかった。
「今からか?すぐ済むならまあ……分かった。少し待っててくれ……ああ。それじゃあ」
「ッ……」
話し相手の声が聞こえずとも、内容を察知して予想がついてしまうというのはなんだか複雑だ。
名無しの考えは当たっており、それはつまり、トレイがこの部屋を少しのあいだ留守にすることを意味していた。
「………」
此処がトレイの私室とはいえ、名無しが一人になるということは、それがどれだけ寂しく、辛く、そして怖く感じてしまうか……。
きっとトレイだって分かっている。
それでも行く必要があって、それを名無しも知っている。
どれだけ不安でも彼を引き留めることなどできなかったし、生まれた靄はその都度晴らせばいいことを学べたのは、他ならない彼のおかげだ。
「――ハァ……やれやれ。……聞いてたか?」
「寮長さん」
「ッ……ああ。……今日の揉め事がバレそうらしい……バレたって云われるより百倍マシだけどな」
「それが本当なら……バレそう、で留めてくれてるんでしょう?行くべきだよ……トレイは。……ね?わたしは大丈夫だから」
終話ボタンを押してため息をついたトレイは、片方の肩を自らの手で揉み、首を傾げて苦笑いを見せていた。
空元気を表したような笑顔は、名無しが我が儘を言わずに一言、リドルの別の呼称を口にしたからだ。
彼女は理解している……だからこそトレイもまた一時離れることを惜しんだけれど、行動を尊重してくれている名無しの気持ちもまた無下にはできないと感じていた。
「!お前はほんと……強くて、優しくて。……ありがとな名無し。少し行ってくる……すぐ戻れるよう、リドルの元に着くまでにうまい言い訳を考えながらな」
「もう……ふふ。大丈夫……私ももう、ひとりは…」
「ああ……いや、そのことだよ、名無し」
無下にはできない想い……。
濡れた身体や冷めた紅茶のおかげで、そういった理由があったからこそ使ったものがあった。
同日、度々魔法を使用したことでトレイは思い出していたのだ。
必要時以外は蓄える、そう努めてきたということに。
魔力を蓄え込んだトレイはメンタルもフィジカルも良好で、少しのそれでは魔法石も微々たる滲みをみせるだけだった。
「!!ト……」
「――……ふぅ。……久しぶり、名無し」
――だからトレイは、自身の使う魔法に見惚れてくれた名無しを、再び見惚れさせた。
口を開いたのは詠唱を必要とするものだったから。
それを紡いだのはあのとき以来だったけれど、使うなら今しかないだろうと、そのとき脳裏に過ぎった。
名無しを守るのは自分だけだ。
そしてその”自分”にだって、例外はあった。
「トレイ……待…っ」
「さっきキッチンに行ったときとは、訳が違うからな……やっぱり、今日はもうお前を一人にはしておけない」
「でも……」
「かといって、俺が此処に残るには向こうで対応する為の情報量が足りないだろう?その点、此処に居る分には、俺は俺に変わりないしな……」
「っ……」
「だから、しっかり留守番しててくれ……”俺くん”と」