主≠監。
dreaming island Ⅱ
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――――。
――。
隣同士、手を繋いで中庭や廊下を歩く様子は、今日のようなイベントごとの際には特筆して目立つこともなかった。
むしろ、恋人繋ぎを解こうとしないトレイの意志の強さを……誰に見られたって構わないとさえ思っているように感じた。
幸い鏡舎までの道のりは見知った生徒にも声をかけられず、いつものように密かに寮へと向かうことができた。
名無しは久々に訪れたハーツラビュルの空気を吸い、トレイの部屋に早く行きたい欲が少し芽生えたことに小さく息を吐き、単純だとは思いつつ自らの頬を染めていた。
「……よし。流石に誰も居ないな……余程のイレギュラーでも起こらない限り貸し切りだ。ふふ」
「………」
「、……個室。一人で入るだろう?流石に今日は誰も居ないとはいえ、俺は此処で見張っておくよ……名無し?こっち……」
「ッ……ちがう、よね…」
「…、ん……?」
リドルをはじめ、殆どの寮生が近くに居ないということ。
それが約束された敷地の中を歩くだけで、とても気持ちが楽でいられた。
勿論警戒は怠らないけれど、寮の周辺は気を配る箇所が多いと感じていた分、それらが省かれるだけで心身への負荷の度合いはいつもと大いに違っていた。
名無しはトレイに連れられ、入室したシャワールームで彼にそれの使用を自然と促される。
それはまったくもって自然な流れではあった……が、名無しはふと個室のドアの傍で立ち止まり、自らの唇の震えを指で触れることで確かめた。
幸いして誰も居ないその空間全体。
優しさや気遣いからトレイが声を掛けてくれていることにだって、当然気付いてはいるのだ。
それでも……。
「いつもなら……誰か来そうな時間に二人で此処に来ても……一緒に入ってくれる……。今みたいな…誰も来ないような時間……」
「………」
「――……ごめんね、トレイ。……わたし…やっぱり私、今日はこのまま帰……、ッ……!」
云わない方が互いのため、それに尽きるとしか言えない。
それでも口を開いてしまった名無しは、漏れ出た言葉が部屋に響いている最中でも、多少の後悔が入り混じりながらもそれをトレイに告げてしまっていた。
どんな想いで、どんな気持ちで、彼が此処までアテンドしてくれていたことか。
他の男に汚された身体に服の上から触れることすら、自分だったらどう感じていただろうか……。
呟いたそれがすべてを無下にするほどの辛い言葉であろうと、今のトレイの優しさは、名無しには酷だった。
「!」
「――……一緒に入ったぞ……これでいいのか?」
「…トレイ……ッ」
名無しがその言葉を口にしたとき、トレイは瞬時にその意味を理解していた。
そんなことを言わせてしまった自分には、どこか名無しへの配慮が欠けていたのだろうか。
追いつめられていなければきっとそんな言葉は出ない筈なのだ……たとえ多少卑屈になっていたとしても、そうさせていたのは自分なのだとトレイは思った。
もっとも気持ちに余裕がなかった分、返答して示したトレイの態度は少し冷たく感じられたし、本人もそれを自覚していたのだけれど……。
名無しが一瞬怯んでいたのがその証拠だろう。
服もまだ着衣したまま。
部屋に並ぶ鍵付きのロッカーには鞄を入れただけの状態で、帰ろうとした名無しの手をトレイが強引に引くと、二人はそのまま個室に入った。
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