主≠監。
dreaming island
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――――。
――。
「……はぁ…――」
――終わりたいのに……。
ジェイドの再会を望まんとするその言葉は、もはや呪いのそれのようだ。
名無しは笑みを浮かべて退室した彼が残した、最後の一言に拒絶の気持ちを覚えた。
たとえ、その想いに矛盾した事実が何度生まれようとも。
心が擦り減ろうとも、拒むのをやめることそのものが、ジェイドの望みが叶うときだと思った。
消耗戦でも、拒み続ければいつかは、と……。
「何が覚えてて…、なの……なにがすみませんって……散々嫌って言った……ッ…のに……もう……」
着直したワンピースの皺を伸ばし、火照りの残る身体を必死に冷まさんとする。
たとえその熱が消えても、今はまだ嫌でもこびり付いているジェイドの感触を、意地でも忘れようと意識してみせる。
「言った……のに…ッ……こんなの、もう合意なんかじゃ……合…」
けれど、襲い掛かるのは罪悪感の波。
己の視野の狭さゆえか、ジェイドだと気付けずに身を委ねてしまったその浅ましさには、なかなかどうして反吐が出そうだった。
「ッ……それでも…責められない……、わたしだって…。最低なのはわたしだ……最低……ほんとうに…――……」
蜜を垂らし、甘く囀り、気付けなかったとはいえ嬉々として振った腰。
泣きたい気持ちもある……けれど、トレイのことを思うと到底涙は流せなかった。
――その後名無しは、静寂したこの場所から去るべく、漸く震えのおさまった足腰に力を加えた。
履き改めた靴も、両足はきちんと。
後ろを振り返り、作業台に不備や違和感がないかを目視する。
ジェイドに置いていかれたというこの状況に不安がないわけではないけれど、自分ひとりとなった今、何かを見落としたくはなかったのだ。
「こんな自分……、――……!!あ……」
そして此処を訪れた時と何ら変わらない状態であることを確認し終えると、名無しははじめて鞄の中のスマホに手を伸ばした。
慌ててロックを解除し、すると視界に入った通知画面に対し、手本のように目を見開く。
「!……、……ッ…着信……、電話くれて…メールも……トレイ……ッ……」
名無しがスマホを見ていたのは、ジェイドが去って十分ほど経った頃だろうか。
アプリを通したトレイからの着信履歴は、ほんの数件と、メッセージもまた二通ほどだった。
合流すべき場所で落ち合えず、しばらくのあいだ居場所も分からなくなっていた状態で見る通知にしては、恐らく件数としては少ない方だ。
その少なさがトレイらしいといえばそうなのだけれど、それはきっと、数を打つことの無意味さを彼が知っているからだ。
リアルな数字に、メッセージの本文を開こうとする手が震える。
トレイと最後に話してからは時間も経っていたし、或いは彼なら、既にもう顛末に気付いていてもおかしくないと思った。
「かけ…なおさない、と……、……!!」
それでも名無しは、作業台に手を付きながらスマホを見ていた。
トレイに会いたい。
会って、この会えなかった時間に何があったか……。
それを話さなければ、向き合わなければと、気を強く持つ。
意を決して開いたメッセージは、何処に居るのか、大丈夫かといった類のそれだけだった。
まあ当然といえば当然だ……不必要な情報など、トレイもわざわざ打ちたくなかったのだろう。
名無しはトレイに返信を打つ前に、メールの画面から移動し、不在着信の画面を表示させた。
通話する方が早いと思ったし、彼の番号をタップすれば、電話はすぐに繋がるからだ。
――そしてその段階まで来ていたのだけれど……。