主≠監。
dreaming island
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「っ……え……、呼び出…し……?」
「ええ……大体はなんとでもなることなんですが、僕を今探している相手というのが少し厄介……と言ってしまっては、怒られてしまいますね。……幼馴染のトレイさんに」
「ッ……」
二人きりになれたことをこの上なく喜び、ひと目を避け、他人になりすましてでもこの身を抱いた。
そんなジェイドの口から漏れる言葉をすぐに信じられなかったのは、彼が今、このあまりにも好都合である状況を自ら擲っていたからだろう。
ジェイドのスマホを鳴らしていた主はどうやらフロイドらしかった。
メールの本文には簡潔にジェイドを呼び出す一文があり、是が非でも来させる為の選択肢を取らせる一言も一緒だった。
名無しにとって虚ろな意識でも内容を読みとれたのは、彼がわざわざトレイの名を出したからだ。
抱かれる前の、そして最中のすべてに繋がると思えた。
「それって…寮長さんのこと……」
「!ふふ……流石は名無し。よくお気付きで……ご存知でしたか?僕、同じクラスなんですよ……本当にタイミングが悪いあたりが……、ね?厄介でしょう」
「っ……しらない…そんなの……私はもう…ッ……!!ン……ッ…」
ジェイドを探している主はリドルのようだ。
わざわざフロイドに連絡させているあたりはよく分からないところだけれど、間接的なところが逆にリアルさも感じさせるし、今はどうやらジェイドの謀の枠から外れた展開らしい。
急ぎの用件というのも確かのようで、彼の困り眉で残念そうにしている顔も不本意だけれど頷けた。
「っ……」
漸く解放される……。
名無しはジェイドから離れられることに胸を撫で下ろした。
が、離れるぎりぎりまで改まってキスを浴びせられ、再び乱れる情緒に不安感を覚えた。
首筋に這う唇の感触にビクンとなる。
そして額を触れ合わせて紡がれた、間近での囁きに目を見開く。
「ちゅ……ン。――……名無し……貴方はこれから、どんな顔をしてトレイさんにお会いになるんですか?」
「……ッ…ジェイド……」
「先程も……先程のあれは、僕の本心です。貴方に嘘はつかない……」
「――……そんなの…嘘だとか、本当のことだとか、わたしは……、全部今更……ッ」
「名無し」
ジェイドはスマホの画面を複数回タップして、返信のひとつでも打っていたのだろう。
それを終えると上着にしまい、自身の服の乱れを簡潔に整えていた。
ずっと名無しの内側に居たそうにしていた下半身。
それを通常の状態に戻すのも変わらず名残惜しそうに、けれど切り替えの早さも相変わらずといったところである。
青みがかった前髪を整え、身嗜みにまで気をまわすことが出来ずにいた名無しの肩を抱き寄せれば、今度は彼女の乱れを正すのを手伝っていた。
甘く囁いて垂れる本心をそれと貫く。
嘘なんてなにひとつないとでも言いたげに、真剣に口を開くジェイドの何を信じればいいのだろう。
そんなこと、名無しには選びようもないことだ……。
「ジェ……」
「お利口な名無しが理解していない筈がないですよね……僕と再会して、見つかる度に抱かれる。……その度に、トレイさんの心がどれだけ擦り減っているかを」
「!…ッ……そんなこと……知らな…」
これから一人、今居るこの魔法薬学室に置いていかれるということは、間接的にジェイドが名無しのメンタルを汚していたも同然だった。
不安は顕著で、震える喉から漏らす声はか細いが過ぎたのだ。
それでも急いでいる様子だったジェイドを見ていると、こんな状況でも自分を置いていく……呼び出された相手が勝るほど、リドルは大きな存在ということだろう。
そのすべては、彼に今を含めた面倒事を悟られない為に……。
トレイが普段から目を光らせていることを知っているからこそ、不安があっても納得も出来た。
ただ、自分と二人きり……謀って起こしたこの状況をみすみす手放すことに、きっとジェイドは納得していないと名無しは思った。
汗を拭われ、髪を撫でられる所作に少し強張りを感じたのが原因だ。
知らせを送ってきたフロイドと、自分を探しているリドルには相当な怒気を抱いたに違いないと、刺々しい彼の言葉を聞いて感じた……。
「知らない筈がないでしょう……?擦り減って、擦り減って……ふふ、何れは魔法石が深く滲む可能性だって……」
「っ……なんでそんなこと……言……!ん……」
「ちゅ……、…貴方が好きだから、ですよ。……自覚した今、後戻りなんてできそうもない……何度も言いますが、これが僕の本心です」
「ッ……」
「それに、きっとまた会えるのが僕たちですよ、ふふふ……さあ?ほら……」
「!!何し……ッ…ジェイドまって、鞄…っ……」
今の好機を手放す歯痒さと不運を、これからジェイドが何処へぶつけるかなど知ったことではない。
ないけれど、自然と気になってしまうことが悔しくてならない。
名無しはジェイドが意地悪く漏らす言葉をあくまで冷静に聞き入れたけれど、ふと、一瞬で慌てふためく様を見せてしまい、その頬には赤らみを孕ませた。
触れていた唇が身体ごと遠ざかる。
ジェイドは作業台から離れると、名無しの鞄を手に取った。