主≠監。
dreaming island
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――気を失う間なんてなかった。
聞こえる声音。
意識する息づかい。
唇と、絡みつく舌の感触に抗いの術を見つけられない。
キスのさなかに漏らされる言葉のひとつひとつが真実かどうかと問われれば、そうだとは言い切れないのは当然だ。
「ん……ン…」
「名無し…好きです。……名無し……ん…」
「ッ……」
激しい行為が終わっても、ジェイドは自らの腕から名無しを解放することはなかった。
時折痙攣して震えている彼女の足を優しく撫で回し、引っ掛かった下着に手を伸ばして事後を思わせる雰囲気を醸し出していても、交わす口吸いはずっとずっと濃密だった。
名無しはそのとき、はじめてスマホが振動していることを気取っていたけれど、それはその気配があまりにも近くで起きていたからだ。
が、自分の鞄の中で着信とメールの受信を繰り返している事実があれど、そちらには気付けないでいる。
なんとも皮肉な話だ……今間近でスマホが五月蠅かったのは、ジェイドのそれだった。
「はぁ……んんッ、ン……」
「チュ……ちゅ、ん……名無し……ッ、――……?」
名無しが描く理想は、寝かされた台から降り、一刻も早くジェイドを押し退けてこの場から遠ざかることだった。
そのすべてが叶わないのは……ジェイドの所為でもあったし、また自分自身の所為でもあった。
意志の弱さ。
欲望に忠実であるよう仕向けられ、とことんまで策に溺れさせられる。
抱擁から逃れることも出来ず、何もかもが望みとは正反対であるこの現実。
離れゆく快感が生々しく現状を物語り、引き戻されているさなか、それでも名無しは自ら起き上がれずにいた。
「…!おや……フロイド……?」
「?……は、ぁ……、……」
言葉少なく、一寸ずつでも気持ちを整理しようと試みる努力だけはしてみせる。
そんな名無しの上で、彼女と同様に自身のスマホの振動に気付いていたジェイドは、制服からそれを取り出しては画面を検めた。
ジェイドの顔をおぼろげに見ていた名無しにとって、彼の表情が少し曇ったように映ったのは、どうやら気のせいではなかった。
「――……、……ああ……残念…」
「……?」
スマホに集中していたジェイドから上肢を解放されると、名無しは自分が望んでいた状況を迎えて背を起こした。
もっとも思っていた以上に体力を消耗していたゆえ、起き上がれたのは一瞬だったのだけれど……。
大きな快感を得た次に訪れた、発汗とその熱による不快な気持ち。
乱された身形もなんとかしようと、もう一度意を決して腹筋に力を込める。
そしてスマホを見ていたジェイドと目が合うと、名無しはやはり、彼が不満気な表情をしていることに核心を持っていた。
「名無し……。このまま……僕の部屋まで貴方を攫って……ふふ、随分と激しく動いてしまいましたからね……シャワーでも一緒にと思っていたところでしたが……」
「……!!っや……」
「!おやおや……事後の余韻が醒めてしまいましたか?ふふ……ほら、暴れないで……」
「っ……」
「……、すみません名無し……とても急なことではありますが、僕は自分の教室に戻ります。……呼び出されてしまいました……、はぁ……」
余韻など要らない。
醒めるものならさっさとそうなって欲しいし、解放して欲しい。
それが叶いそうな空気が漂って、けれど全力でジェイドを否定できない名無しは、その自身の甘さに辟易していた。
この期に及んでまだ事後を共に過ごそうとしていた彼の言葉に慌て、起き上がれたのをいいことに今度は腰にも力を加える。
大きな机上で身を後退させた名無しは、事後のこの数分間に成されたやりとりにもため息をつき、直後耳に入るであろう情報にも身構える姿勢を示した。
誤算は、思わずその情報にきょとんとしてしまったことだろうか……。
不安、焦燥、困惑。
どの感情を当て嵌めれば今は相応しいか、すぐには決められなかった。
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