主≠監。
Be blessedⅢ
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ジェイドが魔法薬を口にしたのは、恐らく名無しをきつく抱き締めたときだろう。
自身の服用行為が彼女の死角に入り、姿かたちが変化する瞬間も見られずに済むとあらば、そこしか機はなかった。
制服のポケットに忍ばせていたらしい小瓶は、空の状態でいつの間にか自分たちの傍に、作業台に置かれていた。
が、激しい律動ゆえに底が浮き、転がったことで床に落下してゆく……それまでにかかった時間は一瞬だった。
「ああ……っ…」
難なくトレイの姿を借り、本人さながらの口調でいまだ繋がっていたジェイドは、名無しの変化にも敏感だった。
明らかな違いは顔色だろうか……もう自分では見ることのできない、というよりは見たこともあまりない、恋をしている女の表情とでも言えば伝わる筈だ。
恥じらう素振りも、けれど嬉しそうに感じている様子も、自分を抱いている男が本物のトレイでないと分かっていて見せる反応にしては、あまりにも出来すぎていた。
その裏返しは、どれだけ名無しがいま、トレイを求めていたかが痛いほど分かる瞬間でもあった。
同時に、トレイがずっと自分に感じていたであろう悋気と、その大きさ醜さも……――。
「ジェ……、……!」
「名無し……」
「…っ………」
「フッ……赤いカオして…かわいいな。……イキたくない…?名無し……ほら……」
「ッ……、っ……ひ、あ……」
「名無し……イこう…?俺と一緒に……お前のナカで……きもちよくなろう?」
「…や…ッ……――」
偽りの声音で名無しの弱い部分を突き、容赦なく舌を伸ばし、とろ甘く囁く。
ジェイドは下半身の窮屈さにもうずっと何度も眉を顰め、短く吐息も零していた。
自分の知らない名無しを知り、猛り興奮がおさまらない。
恋をしている彼女の愛らしい表情を間近で見下ろせるなら、何度だって同じ愚行に走ってやろうとさえ思えたほどだ。
が、ジェイドが今ここまでしていたのは、彼にとっても今が余程のことだったからに過ぎなかった。
単純に今の名無しはどんな風に溺れるか、その顔見たさがまずは最優先。
次点で名無しが恋慕している一番の相手が、確かにトレイなのかどうか……。
この瞬間にこたえははっきりとしていたゆえ、ジェイドはある意味で区切りをつけるつもりでもあった。
名無しのことは手放さない、繋ぎとめてみせる。
名無しもまた自分に迫られれば拒み切れずに、何度だって身をゆるす。
そのループに加えた今は気が向いた、この行為はジェイドにとって新たな嗜好のひとつだ。
「名無し……あ…っぐ、ああ……きもちいい……名無しっ……も、出……イクよ……!!んン…ッ――」
「!!嫌……ッ、抜いて…いっちゃう……やだ……いクいく……ッだめ、…い……いきた…く…!!だめ…ッ、らってイク……ト…!!んむ、んッ……!ンン……ッ――」
迫られれば拒み切れずに、何度だって身をゆるす。
そんな名無しを何度だって、優しく微笑んでトレイがゆるす。
彼がいつまでも看過できるとは思えないことを見越した、それはジェイドにとっても賭けだった。
らしくないといちばん思っていたのは他ならぬジェイド自身だ……予定調和は好きではないけれど、それにしたって凝り過ぎているという自覚はあった。
それだけ名無しの存在は大きかった。
悪夢を祓って欲しさに縋りついてきた姿も、甘えてくる愛嬌のある仕草も。
打算的でない少し天然の入った性格に沿い微笑む表情に、いつのまにか癒されていた。
互いに無感情から始まった、身体だけの関係に少しずつ変化が起きていたことは、ジェイドにとって本当に新鮮だった。
「――……ん、……その表情も…その声も……貴方は」
割り切った関係でいいと思った。
自分から提案して、経験して、悪い遊びを覚えて、ずっとずっと続けてきた。
「!………ッ…、ふふ……連続して飲めば、やはり切れるのはすぐですね……。恐らく免疫もできたことでしょうし、改良でも加えない限りは、もう偽れそうにありません」
「…はぁ……ハァ…」
「けれど……その方が貴方にとっては幸せですよね……どう思います?名無し」
他の男に惚れられて、奪われて、名無しもまたいつしか惚れていた。
何度も何度も隙を突いて以前のように抱いて、そこでやっと気付いたことがあった。
繋がりが保てるなら一番でなくて構わない……。
それは本当だと思う。
けれど二番目、なんていうのは……本当はあまりにも、本心からかけ離れてもいた。
こんな感情ははじめてだ――。
「は…ッ……はぁ…ハァ……トレイ……あ……んん」
「………」
「…ッ……」
「、……名無し……――」
「!ん……、んん…ッ……」
度重なる絶頂に頭がくらくらしていることは、短い息遣いを見ていれば明白だ。
脈切れによる快楽の余韻が消えゆくことを惜しそうに、名無しは吐息を漏らし続ける。
ジェイドは射精のあと、数十秒でその姿を元に戻していたけれど、居心地の好さのあまり名無しから出ようとはしなかった。
膣中に沈んだまま彼女の頭を撫で、額に滲む汗を指で拭い頬にキスを落とす。
そのキスが耳元に移ったとき、名無しは漸く相手を再認識していた。
時間差で訪れた罪悪感を抱く間もなく、囁かれたのは目の覚めるような言葉だ。
「はぁ……ッ、……!あ……」
「ふふ……名無し」
「ッ……?ジェイ…ド……」
「――……誤魔化せそうもないんです……、僕は……僕も、今になって後悔しているんですよ……。刺激欲しさにあの日、彼を連れ込んだことを…」
信じる道理がない。
真に受ける必要なんてない。
事後で疲弊した身体は変わらず起こせずに、上から見つめられて名無しはジェイドの目を見ていた。
一瞬、左目が光ったように見えたけれどそれは気のせいだろう。
ただ、ジェイドの瞳そのものが潤んでいるのは確かだった。
「名無し……好きです。誰よりも貴方を……」
「ッ……――…」
「二番目で構わないなんていうのは……僕が貴方についた、唯一の嘘です……――」
それは、完全に途切れた快感から引き戻される現実のなか、最初に耳にするにはあまりにも酷な言葉だった。
嘘か本当かなんてどうでもいい。
知りたくなかった。
身体の中で踊るジェイドの体液が奥から手前へと流れている……。
それが分かる意識下で、彼が離れ、解放されたと分かっても名無しは今だに動けずにいた。
「ジェ……!んん…ッ……――」
「ん……――」
鋭い目つきにそぐわない甘い視線を下ろされる。
塞がれた唇はまた暫くそのままで、継続させられたキスを浴びる名無しは脱力感ゆえに身をそらせず、再びジェイドに抱き締められていた。
鞄の中で、何度も響くスマホの振動音に気が付ける筈もないまま……――。
Be blessedⅢ
20221230UP.
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