主≠監。
Be blessedⅢ
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――。
――――。
「んー……おかしいな……食堂……って話したよな、確かに。どこ行ったんだ?」
背中に滲む汗が不快だ。
運動をして掻いたものでないゆえに、焦りから生じるそれはできればいつだって流したくなかった。
「しかしまあ……ほんとに一時間かかるとは……、悪いことしたな…名無しには。とにかく連絡してみるか……」
それは食堂までの道のりのこと。
トレイは改めて、自寮の後輩たちの素行の悪さを再確認していた。
粗暴な生徒は隣の寮の方が多いだろうにと、多少のらしくない偏見を思い巡らせる。
まあ、時々はそのような思考も持っていなければ、今頃はストレスに押し潰されていたことだろう。
――トレイは名無しに連絡を入れた後、トラブルの原因を自ら解決させていた。
性格上、電話口ですべての内容を名無しに伝えられなかったことが悔やまれる。
のちに今回のパターンはリドルに知られては厄介な案件だったから、と事後報告することは簡単である。
けれどこんな日に限って彼女を待たせることになってしまったのだから、当然胸は痛んだ。
「……」
通話中、ケイトが心配そうにこちらを見ていたことは嬉しかった。
”トレイくんのかわりに自分が何とかする”、という展開にでもなってくれればなお幸いといったところではあるけれど、そんなに上手く事が運ばないあたりもまた、生々しい話だ。
「ハァ……」
正直、起きた揉め事の典型的な原因を処理することにもそれなりに疲れていた。
漫画じゃあるまいし、他校の生徒と肩が触れただけで都度喧嘩をされていてはたまったものじゃない。
こんな些細なことがリドルの知るところとなれば……そう考えるだけで、秒で胃痛も起きそうだった。
「会いたいな……名無しに」
結局、トレイは該当の生徒には魔法も使って、先輩の威厳で複数人同時にこっ酷く粛清して、件を単独で上手く解決してみせた。
このとき、すべてが終わってからケイトに流石、と褒められたものの、語尾に見えた音符記号には些か苛立ったのは云うまでもなかった。
――そんな直前の出来事を回想しつつ、トレイはマジカルペンの魔法石を濁らせて、嫌な汗を掻き名無しの待つ食堂へと向かっていたのだ。
ほんの少し切れた息遣いもまたリアルで、制服の中に感じるペンが持つ熱にさえ不快感を覚える。
それに食堂到着後、トレイが何処をどう見渡しても、自分を待っている筈の名無しの姿はなかった。
確かに通話のとおり、合流までには一時間ほどの遅れを要していた。
けれど痺れを切らすにしても、彼女にとって移動するメリットも然程ないだろう。
トレイは素朴な疑問を抱くと、名無しに連絡をとるためスマホに触れた。
正確には、取ろうとした……。
「あー!ウミガメくんだー」
「!!」
スマホに視線を向けたトレイの背後で大きな声が聞こえる。
驚いて振り向くと、そこには他の生徒からくすねてきたのか、チョコレートが塗されたドーナツを片手に持ったフロイドが立っていた。
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