主≠監。
Be blessed II
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――――。
――。
ジェイドはキスの余韻に浸っていた。
が、名無しは同じようにはなれなかった。
当然そうなるわけにもいかなかったし、胸が高揚するだとか、今さらそんな初々しい反応すら見せることもなかった。
「それではって…なに……もう会わないのに……わたしはジェイドのことはもう……、はぁ……」
すべては過ぎたこと。
触れた唇も、ジェイドのキスだ……とは思えても、名無しにとってはそれ以上も以下もなかった。
少し強引で、決して離そうとしない。
それでいて優しさも含む甘い口吸いを交わしても、彼女の頭に浮かぶのは別の人物だ。
やはりトレイに早く会いたい。
時間を置くことで、先刻見た光景も小事に過ぎないと思えているのならばもう問題ないだろう。
あんな些細なことで妬けたとしても、どうしたって自分はそんな立場でいられるような人間ではないのだから。
トレイに比べたら、どんなに自分は甘いことか……。
「、……トレイに電話しないと……えっと…」
背は追い続けた。
けれどあくまでそれだけだ。
ジェイドが完全に視界から消えると、名無しは再びその場でひとりになった。
そして此処から近かった、メール画面にある指定の場所に移りながら、漸くトレイの番号を改めて表示させる。
発信を試みるその素振りにも躊躇いはなかった。
「……」
この数分間で災難に遭ったな……と軽く捉えられれば、心も澄んだままでいられた。
前の彼との再会。
ジェイドとの再会。
合流後、恐らくは寮の部屋にも行くだろう……。
日中起きた出来事は、機を見てトレイに素直に話すつもりだったし、今の彼女はちゃんと冷静だった。
――その後、気持ちを落ち着かせようとすぐにかけた電話は数回のコール音ののち、トレイの声が名無しの耳元で響いていた。
が、名無しはトレイの声色に違和感を覚えていた。
「あ……トレイ?遅れちゃって…返事できなくてごめんね……そのままメールの場所に着いたんだけど、トレイ今どこに……」
『悪い名無し……!実はちょっとトラブルがあって……』
「、……え……?」
純粋無垢な真っ白い心にかかった靄の点が、そこからじわりじわりと広がってゆく……そんな感触がふいに走る。
そうなってはいけないことを自覚しつつも、溢れた不安感が名無しに動揺の声を出させており、中庭から移動してきたばかりの彼女の足は自然と止まっていた。