主≠監。
Be blessed II
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「言わせるんですね……貴方は」
「…ッ……!!ジェ、イ……、…ッ……?!」
「誰のものにもしたくない。誰にも渡したくない。後になって気付いたときには、どうしようもなく……。諦めずに手に入れたいと思うのは、いけないことでしょうか」
「……何言…」
「先程……フロイドから連絡がありました」
「!」
「ふふふ……彼の気まぐれは相変わらずですが、流石の僕も今日は肝が冷えましたね。なんてメッセージが入っていたと思います?」
そんな感情は知らない。
ジェイドの気持ちなんて、この先もきっと一生、誰にも分からない。
彼の心を奪う相手だって、こちらの知ったことではない。
そうやってごまかしてきたけれど、ジェイドの表情はとても真剣で、名無しは近付く彼の視線を逸らせないまま話を聞いていた。
「ッ……」
その言葉に秘められた真意を理解しようとしても、そうでないままでいても、見える未来はやはり暗いままだ。
だから名無しは、未来でも手を繋ぐ相手は、ずっとトレイであるべきだと決めていたし、トレイでなければだめだとも思えていた。
それなのに……。
「”ウミガメくんのカノジョ来てるよー。まあ気が向いたら話してよ。アズール抜きで”」
手のひらの中におさまる、小さな画面に覗く事実。
遡る過去。
いつぞやの夕刻、正門での出来事。
そして、名無しが先刻の食堂で耳にした会話がすべて繋がる。
――何を考えているか分からないのが、ジェイドという男だ。
けれどはじめて、名無しは彼の嘘偽りない本音を垣間見た気がしていた。
ぜんぶ今さら。
遅すぎる……――。
「……、あ……」
「僕としたことが……ふふ、……!メールですか?」
ジェイドのスマホを見て、動揺を隠せたのなら大したものだろう。
もっとも、そんなことは名無しに出来はしなかった。
間違いなくそれはフロイドからの連絡だ。
画像を作ったような形跡もなければ、そんな細工をジェイドがわざわざする筈もない。
知られていたことはあまりにも想定外で、どうやらジェイドも多少は困惑していたようだった。
それはフロイドが鋭いのか、はたまた勘であるか……まあ、どちらにせよ見透かされているということだ。
いよいよ本心が見えそうな……だからといって、それもまたぜんぶ今さら。
たとえば想われていたことが真実ならば、一歩先にあるのはどうしたって間違いなく、泥沼なのだから――。
「……っ…。ジェイ…ド……、わたし…行かないと……」
「メール、トレイさんからですね?……彼もずっと忙しそうにされていましたから。いまは漸くブレイクタイムといったところでしょうか」
名無しはジェイドのスマホを見るために首を傾げていたけれど、数秒かけて上半身の歪みを戻し、彼から数歩の距離をとった。
息を整え、平常心、平常心。
周囲の雑音が消えないように、冷静さを自らに引き寄せる。
そんな折、まるで名無しに味方をするかのように、彼女の鞄の中ではスマホが震えていた。
メールの通知は正直ありがたかった。
それが誰からのものでも……互いに気を逸らすには、じゅうぶんすぎるアクションになり得たからだ。
名無しが漸く手にしたスマホの画面に映る通知は、トレイからのそれだった。