主≠監。
Be blessed II
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――――。
――。
あのとき助けられなければ、自分は最後まで汚されていた。
だからいつまで経っても、救われたことへの恩は感じていた。
どんな偶然にせよ、いつだって自分のことを見てくれていたのは、ジェイドだ……。
「?!……ハァ、……うそうそ待って待って。そんなコトある?……面倒くさ」
「ため息ならこちらが零したいところですが……フゥ。まったく懲りない方ですね……本当に投書しましょうか?アカデミーへ。もっともその瞬間に貴方の人生は終了しますが……」
「ッ……!ち…っ……」
「ええ…そうそう。その悔しそうなカオ……ですが自業自得ですからね?お分かりいただけたのなら、もうこれ以上、僕の大事な人に近付かないでくださいね」
自分と彼以外にこの場に人が来てくれたという事実に、驚きで目が見開く。
彼の焦る様子が視界に入ると、名無しは助かったのだとすぐに認識できていた。
が、助けを求めたトレイの姿とは違うシルエット、その声色にまたしても眉を顰める。
「……」
トレイではなく自分が現れたこと……それよりもまずは別の話だ。
名無しに訝しい表情を零させたジェイドは、彼女がそうなってしまうほど、怒りを露わにした顔色を滲ませていた。
「……ハァ…ふふ。分かりましたよ、現行のボーイフレンドさん?せいぜい愛し合っててくださいよ」
「っ……」
「……んじゃ、元気でね名無し。……今カレ、とってもクレイジーだね、ふふふ」
「!……っ……」
「はは……図星なんだ?おれマトモでよかった!じゃあ、今度こそ本当に……きみにはもう、二度と会うものかよ」
「…ッ……」
あまり表情の変わらない、何を考えているか察しがつきにくい。
そんなジェイドだからこそ、今ほど凍り付いた雰囲気を纏わせていることはかなり珍かだった。
その口調はいつもと同じなのだ。
けれど言葉の節々に殺気すら覚えるような……薄ら笑んでいたとしても、とにかく目が笑っていなかった。
名無しにとっても、そんなジェイドは当然初見だった。
「……っ……は、…ぁ……、…」
「!……、怪我はありませんか?名無し」
名無しは彼が自分から離れ、ジェイドに怖気づいて冷や汗を垂らしているのも間近で見ていた。
棘のある会話に割って入ることなどできず、たまらなく込められる皮肉の数々にぐうの音も出ない彼は、それはそれは悔しそうだった。
なんとか一矢報いてやろうという気配も感じられない……彼もジェイドと関わることを避けたいと心から思っている様子だけが、ただただその場で静かに伝わっていた。
「ッ……んで……ド…」
負けが確定して、彼は名無しとジェイドの元から立ち去ることを最優先に選んでいた。
威勢の良さはつゆと消え、退いてゆく後ろ姿は情けなささえ窺える。
そのとき吐露したほんの少しの捨て台詞すら、怯えていた名無しにとってよもやかすり傷にも感じなかったのは、素直に喜ぶべきことであろう。
多少は抉られた、ジェイドの印象を聞いて驚いても、彼と話すことは今さらなかった。
まあ、そうであれた理由は、またそこにジェイドが居たからなのだけれど……。
ジェイドは彼が去り行くのを暫く見届けると、名無しにそっと近づき、彼女の体調を気遣った。
触れられない肩は、手をそっと添えるだけ。
怒気を漂わせていた先刻と打って変わって、あまりにも優しい物言いで声をかけていた。
「先程、おひとりで中庭を横切っていたでしょう?偶々お見かけしたあとに、彼が貴方を見つけて声をかけに行こうとしているのが分かったので、それで……」
「……、偶々……?」
「ハーツラビュルの……トレイさんの担当しているメインの催し場所も、此処からですと遠かったので……。何かあってはと思い……、名無し?」
所詮は安堵も束の間。
一難が去っても、名無しにとってまた一難が訪れたのは言うまでもなかった。
どんなにホッとしても、またこれからすぐにこの場の攻略法を考えなければならないと思ったからだ。
再会、元彼の意地汚い誘惑……それらから逃れられても、救ったのはやはりジェイド。
どうして、何が何でも。
こういうときにトレイではなくジェイドが来るのか。
名無しは確かにジェイドへの謝意を持っていても、そのジェイドと果たしてしまった久しぶりの再会にも心を乱された。
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