主≠監。
Be blessed
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――――。
――。
「……ッ…」
連絡を待つ身で、スマホの画面にトレイの連絡先を表示している……。
そんな今の自分がやるせなかった。
「うそだよ……だって…あんなの……」
名無しは食堂をあとにすると、具体的な行先も決めないまま学園の廊下を歩いていた。
無数の教室のある校舎のそこを行けば、騒々しさから、気がまぎれると思ったからだ。
なんて痛々しい行動だったことだろう。
こんなことで動じている自分が恥ずかしかった。
「トレイ……まだフリーにならないのかな……会いたい…」
ひと気の少ない場所よりは、確かに少しでも気分は楽だった。
とはいえ先刻よりたった数分、そして今。
脳裏に張り付いているフロイドの言葉は、どこまでも名無しを惑わせていた。
漏らす独り言も大概だ……トレイの負担になるなんて言語道断だというのに、頼らずにはいられないほど、名無しはまだ情報を整理しきれなかった。
「………」
何度考えてもありえない。
自分はもうトレイのものであり、たとえフロイドの言葉が、ジェイドに想われていることが真実でも、其処から見える未来は真っ暗だった。
ジェイドは何を考えているか分からないし、初対面からその印象はかわらなかった。
行為を重ねるごとに互いに刺激が足りなくなっても、割り切った関係だったから提案にも応じてきた。
「……っ……」
ジェイドへの感情を恋慕に見紛うことはあっても、結局それは気のせいで終われた。
ただ、汚れた身体でいたくなかったから抱いてもらっただけ……。
たったひとつの理由から交わったことで、いつまでもあのときから始まった関係が枷になるなんて。
それを知るためには本当に好きな人が必要だったなんて、分かるわけがなかった。
「あのとき……」
助けてもらうだけで終われていれば、この苦しさは味わわずに済んだのだろうか……。
名無しはぐちゃぐちゃに掻き乱された、頭のなかの歪みを少しでも正そうと必死だった。
呆れるくらい反芻した過去。
彼以外の人の口から聞かされた生々しいジェイドの本心なんて、真に受けてはいけない筈なのに。
だからといってどうしても気になってしまうのは、ジェイドに感情を抱いているからじゃない。
それが事実なら、ジェイドは簡単に諦めないということだ。
たとえばどんなに、トレイと愛し合っていたとしても――。
「……!トレイッ……、ト……――」
名無しは学園を訪れたときとは打って変わった表情でいる自分の頬を二度ほど叩き、無理くり冷静さを取り戻していた。
トレイに縋りたくはあっても、くよくよしている場合じゃないことも同時に理解していたからだ。
本当は縋って、甘えて、優しく抱き締めて欲しい。
安心させてほしい……けれどやはり強く居なければとも思った。