主≠監。
Be blessed
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――――。
――。
二ヶ月後――。
「――……こうして堂々と来れるの、やっぱり楽だなぁ……」
周囲の目を気にすることなく学園に訪れていたその日の来訪者は、名無しに限った話ではなかった。
いわゆる開放日だ。
ハロウィーンほど大層なものではないけれど、それに近しいイベントといえば話は早いだろうか。
学外者が自由に出入りできる限られた日に、トレイが名無しを呼ばない理由はまずなかった。
「あ……トレイ!」
「!名無し……おはよう。ありがとな、今日は来てくれて」
それは喩えれば文化祭や学園祭のようなものだ。
そう命名するまでもないものではあれど、学外者が嬉々として学園内に来ていれば、意図としてはまあ同じだろう。
トレイとはもうそんな時期かと少し前まで話していたけれど、それだけ名無しと過ごしていた時間も長くなっていたということである。
敢えて特筆するならば、二人にとって残念だったのは機が合わず、その後は互いの部屋や海にもまだ行けていないことだけだった。
「人がいっぱいで……でもすぐ見つけられてよかった、ふふ」
「ああ……、ちょっと例年以上の入りかもしれないな……けど快適に過ごせると思うよ。まあ楽しんでいってくれよ……俺も身体が空いたらまたすぐに連絡する」
正直、はじめは招待することを渋りはした。
開放日のNRCに名無しを呼ぶということは、誰に見られても後ろめたさはなかったけれど、同時にデメリットが付き纏ったからだ。
いつどのタイミングで、名無しがジェイドに会ってしまわないか……結局不安がないわけじゃなかったのが、トレイの本音だった。
もっとも、自分とジェイドの関係は変わらず意外にも良好であり、副寮長同士の顔合わせでも、彼は決して名無しの名を口にすることはなかった。
名無しからも連絡はとっていないと聞いていたし、それを信じない理由も当然皆無であり、条件がクリアされていたからこそ、堂々と彼女を呼べたのだ。
「うん……それじゃ、あとでね?トレイ」
「ああ」
トレイと名無しが交際していることは、まだジェイドの他にはケイトしか知るところではなかった。
それが今日、他の連中に知れることとなってもトレイとしては問題なかったし、その方がいいとも思っていた。
ジェイドが名無しに手を出しづらくなる……などという、少しばかり浅はかな、妬ましい考えを抱きつつ……。
「……フッ」
肩書きのおかげで、他の生徒よりも持ち場があった分、すぐに名無しと二人で学園内を見てまわれないことには歯痒さを感じた。
けれどトレイは午前中のうちに、名無しが自分に会いに来てくれたことを心より喜んでいた。
ひっそりと待ち合わせ、人目を避けて共に自室まで向かういつもの彼女とは違う……。
堂々としていて、明らかに眩しいと思える。
そんな名無しと言葉を交わして、自然と目元を緩ませた。
「……さてと……俺もまじめに仕事しますか……っと」
名無しには、合流まで自由にしていて欲しいと敢えて告げてある。
束縛する必要もなし、落ち着いた時間が来てくれれば、あとは自然に寮の部屋へと行くだけだ。
トレイは名無しと一旦別れると、後方から自分を呼ぶケイトの声に応じ、その後請け負っていた仕事を再開する為に皆の元まで戻った。
そして名無しは……――。
「食堂……あったあった」
――瞬く間に過ぎた時間のなかで、単独で広い学園を見てまわり、疲労を感じたことで休憩することを選んでいた。
開放されていた大食堂でトレイと一緒に昼食をとれなかったことは少し残念だけれど、この日の為に出されていた特別な甘味を口含みつつ、疲れを癒すには最適な場所だ。
そして冷たいフレーバーティーも手に持ち、腰を下ろして暫く……。
名無しはそこで、出来れば耳にしたくないことを偶然聞いていた。
「そうそう~……ジェイドちょっと元気ないんだよねー」
「!」
自分の真後ろで響いた、僅かに聞き覚えのある声音。
その声音がなぞったのは、忘れもしない人のなまえ。
「――……ッ……」
名無しの背後には、偶々フロイドが着席していた。