主≠監。
Be blessed
Please input the ur name.
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……どうしたの?」
しっとりとした浴室のなかに、さらに増すしっとりとした雰囲気。
察せないほど鈍くはなかったのは、名無しの腰に触れるトレイの下半身が熱いと思ったからだった。
「……キスマーク。…俺にも付けて?」
「、え……?ッ…え、……でも…寮で誰かに見られるかもしれないからって……いつもは……」
「ああ。けど会えないとき、鏡の前に立つたびにお前を思い出せる……まあ、たまにはいいかと思ってな。……だめか?」
「…っ……なんか…トレイらしくない理由だね……」
「ッ……はいはい…どうせ四六時中お前を思い出してるよ……なんならいつだってお前のことは、そのまま頭のなかで」
「!わわ……っ…もう……それ以上言わなくていい…から……ッ…」
名無しの感じたトレイの熱は概ね間違いないものだろう。
密かに昂っているからこその”お願い”も、意外さをまじえて何だかリアルに感じた。
トレイからの珍しいおねだりは、ひょっとしたら、今もまだ何処かで不安を感じていたからかもしれない。
或いは単純に、自分にも残して欲しいと思っただけなのかもしれない。
名無しがその意図を完全に説くには無理があった。
けれど分かっていたのは、その珍しいトレイの言葉を通し、彼は自分に弱さを見せてくれているということ。
名無しは、どうしてもそれが嬉しかった。
「頭のなかで何度も何度も……。俺が残して欲しいんだ……なあ、だめか?名無し、……つッ」
「…ッ……んぅ…、ちゅ……」
名無しは自分の中で納得する答えを出すと、素直にトレイのお願いに応じ、湯船の中で身体を半回転させた。
槽の底に両膝をつき、トレイの首に腕をまわし、耳元に優しくキスをする。
そして徐々に唇に吸う力を加えて、彼の首筋や鎖骨のまわり、胸元にも惜しむことなく鬱血痕を残した。
浴室に響くトレイの甘い声が、やけにいやらしかった。
「ん……」
「はぁ……薄いけど付いた……かな、……トレイ?」
「……薄い?これがか……?お前付けるの上手すぎだろ……」
「そうかな……普通に吸っただけ…だよ…」
「っ……まあそうか……お前のフェラ、最高に気持ちいいもんな……あれだけ吸ってれば、皮膚も赤くなるって?」
「!!~……ば…ッ……もう……っ」
「ははっ」
名無しが身体を動かしたおかげで、その水面は大きくゆらゆらと波打っていた。
ただ跡を残す目的のためだけに自分にしがみつく。
そんな彼女の姿の、いちいち視界に入る全身の曲線美にトレイは生唾を飲んでいた。
肌を吸われて、感じた甘い痛みに抱くもどかしさは、恐らくは焦れに似た類だろうか……。
名無しが先刻までこの部屋で味わっていた苦悶を、思わぬ機、違った角度で体験して、トレイは興奮せざるを得なかった。
だから冗談を零し、苦笑いで名無しをからかっていなければ、またすぐに糸が切れると思った。
「――でも、なんかえっち……あんまり見慣れないから余計そう思うのかな。……!ト……」
「ん……名無し…」
もっとも、それは思っただけであり、糸なんてすぐに切れてしまっていたのだけれど。
「ッ……あたって…トレイ……もう…気付いてたけど……。勃ってる、の……」
「、フフ……。嫌か……?俺はしたい……でなきゃ静まりそうもない…名無し……抱きたい。それでまだまだ、俺にもっと赤いの付けて?」
「っ……ずるいよ…――」
その焦れは実にもどかしいものだった。
同時に、とても心地のよいものだとも思えた。
癖になりそうだとさえ感じて、トレイは尚も名無しに同様の行為をねだり、それでいて主張をみせる部位を彼女に示してみせた。
思わぬ瞬間に垣間見た、トレイの素直な言動に名無しは呆れ半分、けれど一緒に照れも含みつつ赤ら顔を晒す。
目の前に見えるのは、自分の残した赤色の生々しさだ……。
満たされていた筈の身体が疼き出して、名無しはそのとき、浴室での滞在時間が延びることを確信していた。
が……――。
「――…あ…トレイ……その前にね、あの……私まだ……話し…」
こうなることはある程度想定していた。
だからこそ本格的にそういう空気が漂う前に、トレイのおねだりに応える前に、話しておきたいことが名無しにはあった。
彼女なりの罰は受けた。
あとはまだ打ち明けられていないことを……それを話して、やっとトレイの隣に堂々と居られる、その自信もつく……――。
「、……いや」
「?」
「もう話さなくていい……俺が話させない」
「!トレイ……だめ…っん…」
名無しがトレイを見つめ見上げたとき、その曇りひとつない彼女の瞳には、強くてかたい意志が見えた。
甘い雰囲気に自ら水を差しにくる行為を、愚かだと思ったから遮ったわけじゃない……。
「………」
何を言われるか分かってしまったから、みなまで聞く理由なんてないと思ったのがまずひとつ。
それを聞いて、折角塵芥のように消え伏せた嫉妬心や劣等感がまた芽生えまいか、正直不安だったのがまたひとつ。
何でも知っていたい気持ちと紙一重の場所に在る……目を背けるのではなく、知らなくていいこともあるということ。
その想いを痛感して、それを盾にトレイは逃げを選び、名無しに一方的、キスの雨を降らせた。