主≠監。
Be blessed
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「~……トレイ?聞こえてるか分からないけど……。く、来るならきてもいいよ……?じゃあ……お湯いれなおしながらまってるね」
「んん………」
洗面所で身体に残された赤色たちを見て、目で追えるものを少しばかり数えた。
恐らくは下半身の、腿の周囲にも付けられているのだろう……そう思いながら視線を下げて、再び顔をあげたときには、その鏡にトレイが映っていた。
振り返る間もなく背後から浴びた抱擁。
汗ばんだトレイの匂いがふわりとその場に漂う。
散々だ……散々セックスして、そのうえでまだトレイは名無しの耳元で、ただ一言「物足りない」とだけ甘い声で囁いた。
名無しは一瞬のうち、そのときより少し前に流れていた時間を反芻したけれど、トレイの言葉の意味は驚きながらも理解してしまっていた。
散々な目に遭ったのは自分だけだ。
名無しの懇願した仕置きに対する欲は発散し終えていても、トレイの性欲そのものはまだ満たされていない……。
そういう解釈があてはまれば、名無しは黙ってトレイに抱き上げられるしかなかった。
「――ん……、…?」
脱衣所の洗面台に座らされて覚えた身体への圧迫感……と、同時に来る多大な快感。
そうなる理由なんてひとつしかなかった。
暫くすると、今度はその場所から再び、名無しはベッドまで連れ戻された。
どんなに汗を掻き、体液にまみれていても、まだまだ構うことなくどろどろになって、純粋なセックスに恥溺させられた。
澄んだようにさえ見える黒い欲望。
ただただひとつになって、下半身を振るって、快楽のみを互いに貪り合う。
そんなセックスに……――。
「ん……ッ…名無し……?…ッ……ああー…」
そんなセックスが続けば、いよいよ熟睡するまで事後に落ちるのも当然だった。
先に目を覚ましたのが名無しだっただけで、その名無しはトレイの耳元に伝言を残し、ようやく浴室にひとり向かい直していた。
のちに名無しの声を夢か現かのはざまで受け取ったトレイが起床したときには、ベッドの上は無論、彼ひとりだけだった。
「…名無し、は……?シャワーか…。ああ……うっすらそう聞こえたような……んー……」
やがて漸く目覚めたトレイは、その全身の気怠さになかなか引いていたけれど、同時にそれは自業自得だということも受け入れていた。
まあ、おかげで得たものは絶大だったのだけれど……。
それは多幸感であったり、名無しに対する再確認した愛情だったり。
目元を片手で覆いながら、口呼吸をして名無しのように行為を思い返した。
「――……少しやりすぎた…かな、……ふぅ。……」
嫉妬や過去の名無し、自分の知らない名無しを知る瞬間の不安はあった。
けれど疑ったことなんて一度もない。
健気な姿を見ていて、どんな行為にも愛らしい声を上げて啼く彼女を、どこまでもいとおしいと感じた。
抱く度に発見があって、それもまた、それが大なり小なり幸せのひとつなのだとも思えた。
「……俺も行くか。ローブは……確かまだ向こうにも使ってないのがあったよな……」
その数分後、トレイも名無しのように起き上がると、自身の汗だくになっていた身体をさっぱりとさせるために浴室に向かった。
この部屋で起きたことを頭のなかで思い返しながら起床したのを少し悔いたのは、どんなに疲弊して気持ちを満たしていようと、男の身体はどこまでも正直だった所為だ。
とはいえ体の構造を抜きにしても、それだけ彼が名無しを想っているがゆえの、いわば生理現象でもあるのだろう。
浴室で抱かない自信もなかったあたりは、トレイはまだまだ欲望に溢れていた。
そして、自嘲を零しながら向かった先では既にシャワーの流水音は無く、名無しが時折、浴槽の水面を耳心地よく弾けさせている音だけが聞こえていた。