主≠監。
Be blessed
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「―――……」
『お兄さんの方が好きかも』
「……あんな光景ひとつ見ただけでこんなに胸が痛いなら……トレイは今まで、どれだけ苦しんできたの…」
下を向く名無しは足元の草花に視線を合わせ、女性の嬉しそうな顔と、トレイとケイトとのやりとりを思い返す。
そしてズキズキと響く胸元に手をあてがい、改めて思うのはトレイのことだった。
彼がどんな気持ちで自分を選び好いてくれているのか。
どんな想いで、ジェイドを拒絶しきれない自分をそれでもいとおしいと言ってくれているのか。
「……何度も断り切れなくて好きにされて……付き合うことになってからも流されて……それを知って、トレイが傷ついてないわけないじゃない…っ……」
名無しが見たのは、マジカメの中で見てきた羨望や憧れの対象、その本物を目の当たりにして嬉々としていた女性たちだった。
ただそれだけだ。
――それだけのことに妬けてしまう愚かさ、浅ましさ。
トレイの抱いているであろう感情と比較するには、今の自分はあまりにも烏滸がましいのだけれど……。
「ッ……なんで…あのとき私は……」
初めてをジェイドに捧げたのだろう。
ただ考えないようにして、忘れればよかっただけなのに。
甘い言葉と優しさに身を委ね、その場で少し汚れただけの身体を、どうして彼に預けてしまったのだろう。
「なんで……」
「名無し?」
「!!」
捧げてなどいなければ、トレイにそれを託せた。
けれどそれでは、トレイにはきっと出会えていなかった。
何を思考するにも、その始点にはジェイドが居た。
「あ……」
浮かない表情のままついたため息はあまりにも深かった。
が、そのため息を拾う声が聞こえたとき、名無しはそこで顔を上げた。
「やっぱり名無しだ、久しぶりだねー。元気してた?」
自然と表情を明るくすることができるのならば、いくらでも自分を呼ぶ声にも応えただろう。
名無しの顔色が更に酷くなったのは、目の前に立っていたのが「彼」だったからだ。
今ではただの思い出したくもない、過去でしかない、過去の記憶、過去の男。
本性を知ったのち、飄々と話す印象がよみがえり、名を呼ばれた所為で名無しは眩暈さえ覚えていた――。