主≠監。
betray the tongueⅢ
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「―――……クソ……ッ…」
すぐにでも組み伏せて、理性を吹き飛ばして赴くまま、愛情をたっぷりと込めて抱きたかった。
それができなかったのは、加虐した果てに喜びを覚える彼女の姿を見たいと思ってしまったから。
猜疑心を持ったまま、汚い感情を持ったまま、その欲望を叶えたくなかったから――。
「――……そんなに名無しが好きか……?自分の女が俺に何度も抱かれるのを見て……俺に奪われて初めて気付いたのか?」
捨てきれないジェイドへの嫉妬心。
名無しを目下に、その感情だけは前面に押し出したくはなかった。
自分を想うがゆえの嘘をゆるし、けれど加虐の罰と総じてソファに置き去りにして、お預けを食らった果てに求めさせる……なんて、どんな腰抜けのすることだろうか。
それでもトレイは一度、名無しを突き放す選択をとっていた。
「先に出会って、奪っておいて……また奪うために俺と出会わせたのか……?ジェイド……」
一人で来た洗面所には、乱雑に服が脱ぎ捨てられたままだった。
改めて頭のなかをクリアにするためにシャワーを浴びる。
トレイは自身を待つ名無しを想い、ただただ悋気を振り払うため、暫くのあいだそれに打たれていた――。
――――。
――。
「ん……っ…、ン……」
トレイがシャワーを浴びていることは確かに分かっていた。
微かなそれの流れる水音が耳に入っていたし、微妙な音の変化で、身体を洗っているのであろうことも察することはできた。
「トレ……も…っ……」
もっとも、それが知れたからといって名無しには何の意味もなかった。
目の前に彼が居てくれないことが辛くて、無情に進むモニタの中身だけを嫌々視界に入れさせられて、その所為で感じたくない想いを胸中に漂わせる。
「ん……ッ」
好きで性的に興奮していたわけじゃない。
穿き心地の悪くなった、湿った下着が食い込んでもどかしい。
「はぁ……、トレイ……はやく…――」
言いつけを守る自分のなんと馬鹿正直なことか。
恐らくは、それが無自覚たる性癖を表しているのだろう。
手首のタッセルなんていくらでもすぐに外せる。
画面をオフにしようと思えばいくらでもできる。
トレイの期待通りの未来をいちばんに望んでいたのは、他ならぬ名無しでもあった。
「ト……、……ッ」
「――終わったのか。……お、違う動画に変わってるな……フフッ」
「!トレイ……ッ…」
その後、ソファの上で息を乱していた名無しの元にトレイが戻ったのは、名無しが彼を待ち焦がれて、なかなか時間のたった頃のことだった。
実際には一時間ぐらいだろうか……それでも名無しにとっては数時間にも及んだように感じられた。
火照った身体は既に肌を赤らませ、唇もほんのりと色付き、しっとりとしている。
トレイはローブを羽織った状態で、男を求めてもどかしい思いをしている彼女の傍に近付いた。
その表情に、いつもの優しさは滲んでいなかった。
「風呂場についてるモニタで俺も見てたよ。いかにも乱交って感じだったな……女一人に寄ってたかって。ははっ」
「ッ………」
「今流れてる動画はイマイチかな、お前的に。しょうがないから消してやるよ」
「トレ……」
「……お前はちゃんといい子にして待ってると思ってたよ。俺の言いつけどおり……偉いな、よしよし」
「…っ……トレイ…あの……」
声音の低さで察せられるのは色気。
ボディソープの匂いが相乗効果を齎し、それと垣間見えるのは、トレイの欲望の渦。
恥じらいながら自分を待っていた名無しの頭をゆっくりと撫でる彼の手付きだけはなだらかで、どこまでも名無しのことをより昂ぶらせる。
リモコンに手を伸ばしてモニタを消すついで、ずれた眼鏡をスッと手直す仕草にさえ、こんな状況でもときめかずにはいられなかった。
だから早くトレイが欲しいのに。
そのトレイが目の前にやっときてくれたのに。
遠くに感じる歯痒さが、下着の中を潤ませる――。
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