主≠監。
betray the tongueⅡ
Please input the ur name.
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――――。
――。
「!!んっ……はぁ…、トレ……」
「んん……チュ。……あの日ぶりなんだ……ホント、たかが知れてる期間でも待ち切れなかった。こうしたかった……お前にたっぷりキスがしたかった……名無し…ン……ちゅ」
「!ン…ッ……んぅ、……む、んぅ!……ちゅ……は、ァ……」
建物までの道のりはなんだかとても足早だった。
気付かれないように冷静に歩んでも、目的地の為に先へ先へと急いでいた。
「ちゅ……んん…名無し……ハァ…もっと……」
「ッ……んぅ、ハ、…ぁ!……あん、ん……」
悩む間も惜しみ部屋を決めた。
その一瞬で向かうフロアを見定めてエレベーターに乗った。
衝動はあった。
けれど箱の中ではただ手を繋ぐだけで済んだことが、どうやら名無しは意外に感じていたらしかった。
トレイは部屋の前に着くと名無しを先に入室させ、次に自分が入った瞬間、彼女を抱き締める。
そこでその日初めてのキスをして、啄ばみと貪りを繰り返しながら、ずるずると奥のベッドまで進んでいた。
――円やかで甘美な時間が一旦ここで途切れることなど、今の名無しには知る由もなかった。
「――……さっきの話だけどな。……俺が先に話すよ。いいだろう?多分同じなんだ……考えてることは」
「っ……や、トレ……それは私が先に云わなくちゃ……、じゃないと意味な……!んむ……」
「チュ。……――いや。……この前、たまたま後輩のスマホを手に取る機会があった。偶然だったんだが、そいつのマジカメを見たんだよ……一年のバスケ部だ。……海に行ってたよ」
「――……」
既に視界には入っていた。
押し倒される筈だったベッドは、今はトレイの部屋のそれではない。
それでも寝具という、自分たちにとってとても大事な場所に背を着かせられ、上からまっすぐに自分を見つめる彼の姿に名無しは高揚していた。
あまりにも単純だと思う……誰だってそう感じるだろうと思う。
深刻な話をしてその後、こうやって結局色欲に基づく流れが訪れれば、たとえば身近な人に知られて呆れられても文句は言えなかった。
名無しはトレイと交わした口吸いにとろけながら、同時に耳にした、本来は自らが打ち明けるべきことを彼の口から聞かされ、そこで初めて抵抗を見せた。
が、両腕を掴まれ、抗いの言葉もキスで塞がれ、続きも結局はトレイがすべて話していた。
「ああ……正確には、表示されてたのは女の子のアカウントだ……後輩が自分のマジカメから、その子のホームまで飛んでた画面だった」
「………」
「……まあ、海くらい誰でも行くだろうさ。勿論俺だって行ったことはある。……お前だって、たまにはクラスメイトと遊ぶだろう?」
「っ……あの――…、ト…レイ……み、ず…」
「水着。……本当は準備してくれてた?俺の為に――」
――真っ直ぐで綺麗な色をした眼鏡の奥の瞳に淀みを感じたのは、トレイがその言葉に疑問符を乗せた瞬間だった。
名無しの胸が痛むのは当然だ……。
それこそジェイドとの出会い、過去の話に加え、自分からきちんと話したいと思っていたことなのだから。
名無しは自ら告白する前にトレイがその件を知っていたことにも至極驚いたけれど、話の中にあった経緯によって動揺は僅かに和らいでいた。
とはいえ、後輩を通じて偶然知ってしまった事実がそこにあったのだ。
改めてその二文字を恐ろしく感じ、それは何処にでもない、けれど何処にでもあることなのだと痛感した。
そして同時にトレイが言った優しい嘘という意味も、必然的、そこで確かに繋がっていた。