主≠監。
betray the tongueⅡ
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「ト……」
自分という存在はなんて単純なのだろう……。
そうトレイが自嘲したのは、その胸の内でのことだった。
「トレイ……ッ…あ……」
「!ああ……待て待て……そんな顔するな!俺が焦るだろ……?!――いや、違うな。焦らせたのは俺か……悪い」
「ッ………」
「――……なあ名無し、……場所、移動するか?俺の家は全部クリアにしてからって言うなら、結局いつものところになっちまうが……俺は行きたい」
虚ろな視線を、プライベートな空間以外で晒すことで相手を支配する。
そうしていたことにすぐに気付けたのは、驚き、キョトンとした名無しを目の当たりにしたからでもあった。
嫉妬心と闇にすべてを持って行かれるところだった。
というよりはもう既に堕ちているからこそ、或いはなんだか落ち着いていられたのかもしれない。
眼鏡の奥の瞳に不安の色はない……そもそもトレイは、名無しとの未来をずっと見ている。
「トレイ……」
過去よりも未来。
だからその切り替えも見事だったのか、それとも安直に、己の欲望に正直なだけだったのか。
名無しを一瞬でも怯えさせたことに後悔はなかったけれど、それが本心でもあることを自覚したトレイは、まだまだ自身の想いをそこで押し通した。
こんなところで寛いでいる場合ではない。
もっと互いが深まり合えるところが、自室以外にあるだろう、と……。
なにより、それが策なのだから。
心も身体も、全部欲しいがゆえの――。
「いやか?」
「…、……っ……ううん……。ついてく……――私も…行きたい……」
「!ん……じゃあ行こう、名無し……――」
――それからすぐ、カフェを出ていつもの場所に向かったのも、彼女のことを巧みに言い包めた結果かもしれない。
これを済崩し的にと思われても仕方ないだろう。
策はもちろん、肉体の結びつきを強く求めているそれである……。
自分の中に浮かび回る疑問も、名無しへの想いも、たとえ何もかもをセックスに繋げなければ前進できなくとも、トレイは小さなその手を強く握り締めた。
赤らんだ顔で小さく頷く名無しを見つめ、その後トレイは明るくも暗くも笑みを浮かべながら、同じように一度首を縦に振っていた。
トレイの中に潜む健全な体積を保つブロットは、まだその質量でざわついているだけだった――。