主≠監。
betray the tongueⅡ
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「その……アカデミーのことは分かった。俺も幼馴染が一人居るんだが……そいつは良い奴だ、心配するな。ただ……お前のことは伏せるし、そいつの話題も嫌なら出さない」
「!ありがと……それは多分、おいおい……だってトレイに気を遣わせたくないもん……。幼馴染さんの方が私よりずっと長い付き合いなんだから、……本当に気にしないで」
「……、そうか……まあ、おいおいな。ん……」
トレイが握るストローは真ん中あたりが指圧でへこみ、そこを軸に少し折れ曲がっていた。
苦しい過去を背負った上で出会ってしまったジェイドに妬き、そのとき名無しと自分が出会っていればと、彼女とのイフを思い苦悩する。
偶然の一言で片づけられたくない。
けれど偶然の一言で片づけられる無情な事実。
トレイはなんとか自身の幼馴染の話題を出して場の空気を軽くしようとするも、そんな事情があれば、この先彼と名無しを会わせる機会も当分訪れはしないだろう。
身体の中に巣食う闇をさっさと葬りたい。
目の前に大好きな名無しが居て、なのに余裕が減りゆく自分自身が許せない。
一頻り話に区切りがついたその直後、いつもどおりの自分で居るためにトレイがその場の一瞬で浮かべた策は、結局いつもの典型だった。
所詮、恋仲ゆえに求めてしまうのは心も当然のこと、その身体もなのだと思い知らされる――。
「……映画のあとだったのに……。楽しかったのに、こんな空気にさせちゃってごめん。その……このお店も、こんなこと話す為に見つけたわけじゃなかったんだけど……」
「ああ……いや!平気だ……それは。……俺はむしろ、聞いておかなくちゃならなかったことをお前から切り出してくれたことが嬉しいよ……正直まだ動揺はしてるけどな……はは」
「……むしよくトレイの部屋には上がれなかった……上がりたくなかった。こんなきもちで……全部話すまでは」
「名無し……」
「だって……トレイがすきだから……嘘は付きたくなかった。……し、隠してるって、絶対思われたくもなかった……」
「!」
涙を堪えながら強かな瞳で話してくれた名無しにだって、当然思うことは山のようにあるだろう。
たとえばそれを打ち明けることで嫌われるんじゃないか。
避けられた果て、相手からは別れという選択肢だって或いは出てくるかもしれない。
恐怖を前に……だから余程の想いがなければ、普通これらはきっと隠し貫くような話だ。
そんな想像以上に勇気を要する告白でも、名無しが辛かったことを以ってしても、トレイはどうしても嫉妬心が抑え切れなかった。
それだけ彼女を愛しいと思っていることにはなるのだけれど、それなら尚更悋気など持つべきではないだろう。
渦巻く感情が邪魔すぎる。
撥ね退けられるほど冷静にも大人にもなれない。
どんなに愚かしいことか……。
「………」
その場で悩みに悩み、浮かんだ策も一瞬水に流そうかとは思った。
けれど結局は名無しの一言で、トレイはまた胸の内に濃厚な黒を住まわせていた。
「――嘘、か……。確かにな……。つかれれば信頼関係は誰だって崩れるし、その言葉の響きだけでも、気分のいいものじゃない」
「、……?ト……」
「寝不足だ、ってさっき言ったよな?俺が。映画でもだいぶウトウトしてたしな……ふふ。――……それで?どの話だ?お前が俺についた優しい嘘は」
「っ……」
心が黒で覆われる。
けれどそれはあくまで優しく、優しく。
メンタルが崩壊しかねない状況の名無しに、とても穏やかな声音で訴える。
トレイは名無しから聞かされた初めての情報の多さに混乱していたけれど、自分が純粋に知りたかった疑問がクリアになっていないことに気付き、そちらに焦点をあて変えた。
動揺を誘われて気が狂いそうになっても、ふとしたことでどうとでもなる。
ここまで知ってしまったトレイは、更にもっと、より奥深く名無しのすべてを知りたいという気持ちが、このとき悋気よりもまさっていた。