主≠監。
betray the tongueⅡ
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――――。
――。
アクリルガラスのコースターの上には、汗を掻いたグラスのそれを受け止めた、小さな水たまりが出来ている。
氷は殆ど溶けて、中のラテは水と分離し、二層になっていた。
「―――……そうか……」
「………」
話したいと言ったのは名無しだった。
その為にゆっくり真剣に話せる場所まで移った。
正直、観たばかりだった映画の印象が薄らうほどに名無しの話は濃密で、トレイの気持ちを極端に掻きまわしていた。
耳にしたトレイはそれを受け止められるだけの器を確かに持っている。
が、器の大きさに気持ちが追い付かなければ、情緒はどこまでも乱されるだろう。
彼ほどの男がそうなってしまうほど、名無しの口から語られたジェイドとの出会いは、トレイの想像の上を行っていた。
「それで……――それじゃあ、ジェイドが……。いや……」
「うん……?だいじょうぶ。なんでもきいて……?」
「……、ジェイドが……お前の…――」
「!…ッ……、ん…、……」
「………」
飲めなくはないけれどろくに飲めそうもない。
グラスの中身のラテをストローで掻きまわす仕草には、まるで自分を反映させているようで、そんなくだらない所作を早く止めたかった。
が、手先を動かしていなければおかしくなりそうだった。
一番聞きたくないことまで自身の口から問うて、僅かに感じるのは致し方ない後悔。
名無しにこたえさせたトレイの表情は曇っていた。
形容しがたいこの想いは確実に嫉妬だろう。
マジカルペンを握らずして黒い気持ちが渦巻きそうになるこの状況に、誰にぶつけるでもない、トレイはほんの少し苛立ちを覚えていた。