主≠監。
betray the tongueⅡ
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『なるほど……盲点、というか……そのような発想は僕にはなかったですね……』
『、……っ……そうだね……。ほんと、変な発想……』
『、いいえ……立場が逆ならそうは思いませんよ……確かに、好きな人が出来るまでのあいだじゅうずっと……。最後に触れられたのがこの先、ずっと嫌悪する相手とあらば』
『………』
『ただ……もしも好きな人ができたとき、最後に触れていたのが僕になってしまう……ということになるのは勿論おわかりですよね?それは構わないんですか』
『………あの人たちの感触が消えるなら、わたしは平気……ずっと残る方がいやだよ……』
『――……そうですか…。では、将来貴方を好いた方に、僕は恨まれないようにしなくてはいけませんね、ふふ』
『ッ……』
冷静さを欠くことはあまり柄じゃない。
自身もそうだし、初対面だった名無しにもそういう印象はついているだろう。
ゆえにジェイドは名無しのティーカップを片す素振りを見せて平静を保ち、頭のなかで懸命に彼女の言葉を処理していた。
必死さが露見していないのは、その落ち着いた風貌の所為だろう。
助けた女性に求められ、その切なすぎる理由は、実際に体験してみなければきっと誰にもわからない。
ジェイドは半ば名無しに同情さえしていた。
アカデミーの彼やその周りの男たちにさえ出会わなければ、順当に今後、両想いになれた異性にそれを捧げられたであろうに、と……。
『あとはそうですね。……善処しますとだけ。ですが途中で止められるかどうか……なんてね、ふふ……。――……!名無し……?』
『、大丈夫……不思議と。――……会ってまだ数時間、きっと普通なら対人恐怖症……とか……。なるところだよね……』
『……』
『あなたになら何されてもいい…って、思ってる……の。……こんなの、やっぱりおかしい?』
『ッ……ふふふ…そうですか……。いえ、おかしくなんて……むしろなんだかいとおしく感じます。会ったばかり、お互いを知らないまま……或いはそれもありなのでしょう』
『ジェ……』
『――名無しさん……貴方はひょっとして』
『?』
たとえば同情したから、途中まで。
助けてもらった礼を身体で、それも初めてで。
あまりにも不憫が過ぎると思ったから、敢えてそういう提案をジェイドがいざ見せてみても、やはり名無しは固まった決意を緩ませることはなかった。
どういう理論で会ったばかりの恩人に身体を捧げる気になれるのか……。
それでも、承諾しようとしている自分もじゅうぶん狂っているのだろう。
『貴方は……』
ジェイドは同時に、名無しには別の可能性も感じていた。
違う切り口で見てみれば、おそらくはきっと、扉さえ抉じ開ければ、或いは彼女は自分と同じ、……――。
『いえ……初めてだからこそ、半端な経験ゆえ好奇心に溢れて、どんどんいやらしい子になってしまったのかな、と。ただしその相手は彼でも、彼等でもなかった。なんて……ふふふ』
『!…ッ……いやらし…?!ちがう……っ、そういうわけじゃ……私はただ、……!わっ……』
そのときジェイドは確信していた。
不安と同じほど期待をして、扉を開け、その先を経験したいと感じている。
目覚めているのに開花しきっていない性へのそれを、名無しが本当は開きたがっていることを。
その相手が彼等ではなかったことに大きな理由はないかもしれない。
自分が選ばれたのも偶然かもしれない。
が、二度もすれ違って、気にかけていた名もなき女性だった彼女が自分を求めてきたのならば、互いがこうなることは何処までも決まっていたことなのかもしれない。
ジェイドは奇跡や運命なんて言葉を特に重要視してはないなかったけれど、それを別に否定する気もなかった。
『名無しさん』
思慕や恋愛感情なんて生まれなくてもいい、無理やり生み出さなくてもいい。
予想外のこんな出来事で、今まさにこれから自分の未来が楽しく色付くならば、彼が名無しを組みしかない理由はなかった――。
『ずっと彼にゆるせなかったのに、数時間過ごしただけの僕を選ぶということは、そういうことですよ……。男を知れば、貴方はもっともっと今以上に、貪欲に……きっといやらしくなる』
『ジェイ……ドさ……』
『ジェイド、ですよ……名無し』
『ッ……!――……そんな、わたしは……っ…そういうつもりじゃ……。――……ん……』
『………』
『……そういうつもり、なのかな……。そうだよね……。――……知りたいよ……もっと自分のこと……だってまだ私…何も知らない……』
『フッ……。――……でしたら一緒に……なりませんか?今よりも……。誰にも言えないふたりだけ……これから始めるのは、僕と貴方の、秘密の関係です』
嘘でも嬉しかった。
ただの口約束、なんの契約も交わしていないけれど、ジェイドは優しく名無しの頬を撫でる。
同じことを彼にもされたことは多分あった。
が、愛情なんて類は何も感じなかった。
『ひ、み……つ、……!!ッ……、…ジェイ…ド……?』
『本当にいままで辛かったですね……よしよし』
『!っ……ジェイド……』
『心配しないで……今日のことも、今日までのこの半年間のことも……もちろん彼等のことも。すべて僕が忘れさせて差し上げます……名無し――』
ジェイドにぎゅっと優しく抱き締められた名無しは、その場で彼の匂いをゼロ距離に感じ、目を閉じる。
腫れものを扱うかのようにゆるりと慰められ、零れる涙を拭う様にも頬が染まって、改めてその日起きた出来事が未遂で済んだことを心から良かったと痛感する。
この人が来なければ自分は終わっていた。
考えるなとは言われても、それが事実だったのだからどうしようもなかった。
連中に触れられた身体が恩人であるジェイドによって綺麗になるのなら、ジェイドがその身体を汚すことなど、感覚の麻痺した名無しにとっては小事と同等だった。
『ジェイド………――』
雨に濡れたまま半端に乾いていた髪にさえ、優しく指先が触れ、それを撫でている……。
押し倒された反動で一瞬の驚きが名無しを襲っても、ゆっくりとジェイドの唇が自身に近付いても、名無しは彼を拒まなかった。
寝具の四方の軸足がうるさく呻り、シーツに複数色の体液が滲んだのは、そこから数十分ほど経った頃のことだった――。
『、……っ……そうだね……。ほんと、変な発想……』
『、いいえ……立場が逆ならそうは思いませんよ……確かに、好きな人が出来るまでのあいだじゅうずっと……。最後に触れられたのがこの先、ずっと嫌悪する相手とあらば』
『………』
『ただ……もしも好きな人ができたとき、最後に触れていたのが僕になってしまう……ということになるのは勿論おわかりですよね?それは構わないんですか』
『………あの人たちの感触が消えるなら、わたしは平気……ずっと残る方がいやだよ……』
『――……そうですか…。では、将来貴方を好いた方に、僕は恨まれないようにしなくてはいけませんね、ふふ』
『ッ……』
冷静さを欠くことはあまり柄じゃない。
自身もそうだし、初対面だった名無しにもそういう印象はついているだろう。
ゆえにジェイドは名無しのティーカップを片す素振りを見せて平静を保ち、頭のなかで懸命に彼女の言葉を処理していた。
必死さが露見していないのは、その落ち着いた風貌の所為だろう。
助けた女性に求められ、その切なすぎる理由は、実際に体験してみなければきっと誰にもわからない。
ジェイドは半ば名無しに同情さえしていた。
アカデミーの彼やその周りの男たちにさえ出会わなければ、順当に今後、両想いになれた異性にそれを捧げられたであろうに、と……。
『あとはそうですね。……善処しますとだけ。ですが途中で止められるかどうか……なんてね、ふふ……。――……!名無し……?』
『、大丈夫……不思議と。――……会ってまだ数時間、きっと普通なら対人恐怖症……とか……。なるところだよね……』
『……』
『あなたになら何されてもいい…って、思ってる……の。……こんなの、やっぱりおかしい?』
『ッ……ふふふ…そうですか……。いえ、おかしくなんて……むしろなんだかいとおしく感じます。会ったばかり、お互いを知らないまま……或いはそれもありなのでしょう』
『ジェ……』
『――名無しさん……貴方はひょっとして』
『?』
たとえば同情したから、途中まで。
助けてもらった礼を身体で、それも初めてで。
あまりにも不憫が過ぎると思ったから、敢えてそういう提案をジェイドがいざ見せてみても、やはり名無しは固まった決意を緩ませることはなかった。
どういう理論で会ったばかりの恩人に身体を捧げる気になれるのか……。
それでも、承諾しようとしている自分もじゅうぶん狂っているのだろう。
『貴方は……』
ジェイドは同時に、名無しには別の可能性も感じていた。
違う切り口で見てみれば、おそらくはきっと、扉さえ抉じ開ければ、或いは彼女は自分と同じ、……――。
『いえ……初めてだからこそ、半端な経験ゆえ好奇心に溢れて、どんどんいやらしい子になってしまったのかな、と。ただしその相手は彼でも、彼等でもなかった。なんて……ふふふ』
『!…ッ……いやらし…?!ちがう……っ、そういうわけじゃ……私はただ、……!わっ……』
そのときジェイドは確信していた。
不安と同じほど期待をして、扉を開け、その先を経験したいと感じている。
目覚めているのに開花しきっていない性へのそれを、名無しが本当は開きたがっていることを。
その相手が彼等ではなかったことに大きな理由はないかもしれない。
自分が選ばれたのも偶然かもしれない。
が、二度もすれ違って、気にかけていた名もなき女性だった彼女が自分を求めてきたのならば、互いがこうなることは何処までも決まっていたことなのかもしれない。
ジェイドは奇跡や運命なんて言葉を特に重要視してはないなかったけれど、それを別に否定する気もなかった。
『名無しさん』
思慕や恋愛感情なんて生まれなくてもいい、無理やり生み出さなくてもいい。
予想外のこんな出来事で、今まさにこれから自分の未来が楽しく色付くならば、彼が名無しを組みしかない理由はなかった――。
『ずっと彼にゆるせなかったのに、数時間過ごしただけの僕を選ぶということは、そういうことですよ……。男を知れば、貴方はもっともっと今以上に、貪欲に……きっといやらしくなる』
『ジェイ……ドさ……』
『ジェイド、ですよ……名無し』
『ッ……!――……そんな、わたしは……っ…そういうつもりじゃ……。――……ん……』
『………』
『……そういうつもり、なのかな……。そうだよね……。――……知りたいよ……もっと自分のこと……だってまだ私…何も知らない……』
『フッ……。――……でしたら一緒に……なりませんか?今よりも……。誰にも言えないふたりだけ……これから始めるのは、僕と貴方の、秘密の関係です』
嘘でも嬉しかった。
ただの口約束、なんの契約も交わしていないけれど、ジェイドは優しく名無しの頬を撫でる。
同じことを彼にもされたことは多分あった。
が、愛情なんて類は何も感じなかった。
『ひ、み……つ、……!!ッ……、…ジェイ…ド……?』
『本当にいままで辛かったですね……よしよし』
『!っ……ジェイド……』
『心配しないで……今日のことも、今日までのこの半年間のことも……もちろん彼等のことも。すべて僕が忘れさせて差し上げます……名無し――』
ジェイドにぎゅっと優しく抱き締められた名無しは、その場で彼の匂いをゼロ距離に感じ、目を閉じる。
腫れものを扱うかのようにゆるりと慰められ、零れる涙を拭う様にも頬が染まって、改めてその日起きた出来事が未遂で済んだことを心から良かったと痛感する。
この人が来なければ自分は終わっていた。
考えるなとは言われても、それが事実だったのだからどうしようもなかった。
連中に触れられた身体が恩人であるジェイドによって綺麗になるのなら、ジェイドがその身体を汚すことなど、感覚の麻痺した名無しにとっては小事と同等だった。
『ジェイド………――』
雨に濡れたまま半端に乾いていた髪にさえ、優しく指先が触れ、それを撫でている……。
押し倒された反動で一瞬の驚きが名無しを襲っても、ゆっくりとジェイドの唇が自身に近付いても、名無しは彼を拒まなかった。
寝具の四方の軸足がうるさく呻り、シーツに複数色の体液が滲んだのは、そこから数十分ほど経った頃のことだった――。