主≠監。
betray the tongueⅡ
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――――。
――。
落ち着いて欲しい――。
最初にジェイドに言われた言葉だ。
紅茶を飲み、名を知り、時間が過ぎたことで起きた心境の変化を気の迷いだと言われる覚悟はできていた。
ただ、迷っていればそんな発言などしないということを、ジェイドはきっと理解している。
だから言ってしまえばそれは真実になるし、その覚悟があったからこそ、名無しも冷静にそれを話していた。
『震えは止まりましたか……?』
『ッ……はい…、あ……ん、止まった…かな……。あ、あの、どうして…』
『?……ああ……すみません、彼らに呼ばれていたのを聞いてしまっていたので。それにしても……ふふ…。やはり笑顔を覗かせる方が魅力的ですね、あなたという女性は』
『……ッ』
ジェイドという名を知り、親しみやすさも一層増した気がしたのは事実だった。
鞄の中の参考書は、あの路地から此処に運ばれてくるあいだ、気絶していたさなかに見られたのだろう。
それを気味悪いとも思わなかったし、むしろ同じ学年だったことを知れて嬉しかった。
――そんな恩人に向けるべきは、早すぎた、唐突すぎたこちらからの願いごとかもしれない。
それでも名無しは、震えが少しでも引いたまさにこの機に頭のなかを整理して、そっとジェイドに告げた。
もしかしたらこの人なら、この人なら……。
そう直感で思ったことを声音に乗せる。
『――……あの…』
『!そういえば……シャワー、浴びられますか?他の生徒のことなら上手くごまかせます。濡れたまま僕の部屋に貴方を運び込んでいたものですから……きっと今も不快でしょう?』
『っ……そうじゃなくて…』
『?』
『――……』
――それを言った瞬間は、あまりにも急な展開だったのだ、ジェイドも目を見開かざるを得なかった。
けれどそうなるだろうことを想定して、冷静な頭で名無しは話した。
まっすぐ見つめるジェイドの顔は、その目が片方ずつ別の色を帯びていて、とてもミステリアスに感じた。
金色に光る片目に惹かれ、吸い込まれそうになるのを堪えながら話す名無しの同じ部位もまた、彼に負けじととても強かだった。
『――今なんと仰いました……?』
『だから……その。――……これはお願いです。それに、私に出来るお礼はこれくらいしか……こんなに人に優しくされたのも、本当に嬉しくて……』
『、……本当に好きな人ができたときのために、守っておいた方がいいのでは……?それとも、恋愛なんてもうしたくない。といったクチでしょうか』
『ッ……』
名無しがジェイドに話したのはその会話から知れたことだ。
ぶっ飛んだ展開、なんてことは彼女自身一番強く感じているだろう。
ではどうしてそんなことを言ってしまったのか。
それはジェイドにも、彼女の言い分を聞くまでは理解出来ないものだった。
『学生の身。……社会にすら出ていない状況で、好きな人なんてもう出来ないという言い分は、流石に無理があると思いますよ?僕への礼の形だって、他にいくらでも』
『分かってる……でも…』
『なら、素直にその人に捧げるべきですよ……むきにならずに…』
『ムキにだってなる……!だって…、あの人たちに触られたままでいたくない……っ!あの人の……感触がずっと残った……そんなままの身体、好きな人に触らせたくないから……』
『!』
怖い思いをしたばかりだった。
だから尚更ありえない願いだった。
ジェイドが耳を疑いたくなるのも当然で、それでも名無しの語気を強めたまっすぐな言葉には、嘘偽りを探す方が困難でもあった。
何故自分を相手に、守り続けてきた貞操を捨てたい……なんてことを望むような発言をしたのか。
それはいつまでもあの連中に触れられたままの身体で居ることの方が、名無しにとっては辛すぎたからだった。
ジェイドは名無しの言葉で我に返ると、自分一人では到底、そんな思考には辿り着けないだろうと息をまいた。
同時に、いくら唐突でも彼女の覚悟を知り、揺らぐ気持ちに胸元はちくりとしていた。
――。
落ち着いて欲しい――。
最初にジェイドに言われた言葉だ。
紅茶を飲み、名を知り、時間が過ぎたことで起きた心境の変化を気の迷いだと言われる覚悟はできていた。
ただ、迷っていればそんな発言などしないということを、ジェイドはきっと理解している。
だから言ってしまえばそれは真実になるし、その覚悟があったからこそ、名無しも冷静にそれを話していた。
『震えは止まりましたか……?』
『ッ……はい…、あ……ん、止まった…かな……。あ、あの、どうして…』
『?……ああ……すみません、彼らに呼ばれていたのを聞いてしまっていたので。それにしても……ふふ…。やはり笑顔を覗かせる方が魅力的ですね、あなたという女性は』
『……ッ』
ジェイドという名を知り、親しみやすさも一層増した気がしたのは事実だった。
鞄の中の参考書は、あの路地から此処に運ばれてくるあいだ、気絶していたさなかに見られたのだろう。
それを気味悪いとも思わなかったし、むしろ同じ学年だったことを知れて嬉しかった。
――そんな恩人に向けるべきは、早すぎた、唐突すぎたこちらからの願いごとかもしれない。
それでも名無しは、震えが少しでも引いたまさにこの機に頭のなかを整理して、そっとジェイドに告げた。
もしかしたらこの人なら、この人なら……。
そう直感で思ったことを声音に乗せる。
『――……あの…』
『!そういえば……シャワー、浴びられますか?他の生徒のことなら上手くごまかせます。濡れたまま僕の部屋に貴方を運び込んでいたものですから……きっと今も不快でしょう?』
『っ……そうじゃなくて…』
『?』
『――……』
――それを言った瞬間は、あまりにも急な展開だったのだ、ジェイドも目を見開かざるを得なかった。
けれどそうなるだろうことを想定して、冷静な頭で名無しは話した。
まっすぐ見つめるジェイドの顔は、その目が片方ずつ別の色を帯びていて、とてもミステリアスに感じた。
金色に光る片目に惹かれ、吸い込まれそうになるのを堪えながら話す名無しの同じ部位もまた、彼に負けじととても強かだった。
『――今なんと仰いました……?』
『だから……その。――……これはお願いです。それに、私に出来るお礼はこれくらいしか……こんなに人に優しくされたのも、本当に嬉しくて……』
『、……本当に好きな人ができたときのために、守っておいた方がいいのでは……?それとも、恋愛なんてもうしたくない。といったクチでしょうか』
『ッ……』
名無しがジェイドに話したのはその会話から知れたことだ。
ぶっ飛んだ展開、なんてことは彼女自身一番強く感じているだろう。
ではどうしてそんなことを言ってしまったのか。
それはジェイドにも、彼女の言い分を聞くまでは理解出来ないものだった。
『学生の身。……社会にすら出ていない状況で、好きな人なんてもう出来ないという言い分は、流石に無理があると思いますよ?僕への礼の形だって、他にいくらでも』
『分かってる……でも…』
『なら、素直にその人に捧げるべきですよ……むきにならずに…』
『ムキにだってなる……!だって…、あの人たちに触られたままでいたくない……っ!あの人の……感触がずっと残った……そんなままの身体、好きな人に触らせたくないから……』
『!』
怖い思いをしたばかりだった。
だから尚更ありえない願いだった。
ジェイドが耳を疑いたくなるのも当然で、それでも名無しの語気を強めたまっすぐな言葉には、嘘偽りを探す方が困難でもあった。
何故自分を相手に、守り続けてきた貞操を捨てたい……なんてことを望むような発言をしたのか。
それはいつまでもあの連中に触れられたままの身体で居ることの方が、名無しにとっては辛すぎたからだった。
ジェイドは名無しの言葉で我に返ると、自分一人では到底、そんな思考には辿り着けないだろうと息をまいた。
同時に、いくら唐突でも彼女の覚悟を知り、揺らぐ気持ちに胸元はちくりとしていた。