「はは……！なーんだ、やっぱ舐められたいんだーー？ねー名無し～……？」

「っ……そ、……だって…」

「あはは……心配しなくても全部するからさ……お前のして欲しいコト。……だからもうちょっとオレに付き合ってよ……ね？名無し」

「！……ッ…ふ、…あぁ……ッ」


下着が濡れたばかりにすべてを見抜かれる。
大した言葉ひとつ漏らさずとも、顔色ひとつで見透かされる。
自分が、自分の思う以上にフロイドを求めている。
頭の中が既に卑猥な色に染まっていることを暴かれれば、逆らったってなにも良いことなどないのは察すべき事実だ。


「や……フロイド…っもう……」

「ん……ハァ…、……ふふ！鳥肌よく分かる……おしりきもちいいんだ？んぅ……チュ…」


勿論、名無しにとってはその全身が性感帯といっても強ち間違ってはいなかった。
どこをどうされてもフロイドの所作には蕩けてきたし、滑らされる舌遣いは、雑に見えて繊細すぎるほどに甘かった。

ただ、やはり名無しが恥ずかしかったのはその部位である。
いつまでもうつ伏せ、振り向きながら無理に首を傾げなければフロイドの顔が見れないのも辛かった。

かと言って素直にもなりきれず、下半身に走る快感に甘んじる。

噛み締める名無しの唇はほんの少し震えていた。


「………」

「……？！」


膨らみは五指の腹で爪弾きながら揉みしだき、揺れる曲線を愛でるフロイドが時折漏らす、吐息にすら反応してつま先をピンと伸ばす。

――いっそ羞恥心も捨ててしまえば、もっと夢心地でいられるだろうか……そんな折のことである。




「―――！！あ……、……！ッあ……」


「ッ……はは……驚いた？――……もう挿れられちゃったから……」


それは、全身を愛してもらいたい欲望をひとまず押さえ込み、今は彼が嵌る臀部への刺激を精一杯感じようと、名無しが切り替えた矢先のことだった。

段々舐め回される感触にも慣れ、焦れに繋がる愛撫だと認識すれば、余計に陰部はじゅくじゅくと熟れてゆく。

それを一番間近で見ていたのは当然フロイドだ……彼はその蜜を味わうために名無しの腰をおもいきり引き、名無しもまた、入口には舌が向かうのだろうとばかり思っていた。


「……ッ…」


うつ伏せのまま背が撓り、尻を突き出さされ、実際にうんといやらしい体勢をとらされる。

また粘膜同士の接触があるのだなと覚悟した瞬間、名無しの陰部に触れたのは、水面下で露わにさせていたフロイドの主張の先だった。


「！あ……、ぁ、あ……ッ」

「あーー……すっげー締まっててサイコー……こんっな敏感になってたんだねー……ア……ン…」


そのときの名無しは、驚愕のあまり目を大きく見開き、逆に自身の顔の向きがフロイドと違えていてよかったと痛感していた。
はしたない格好がこの場で吉と出て、なんと皮肉だったことか。

舌だとばかり思い込んでいたそれは容赦なく入口を割り、体積を以って掻き分けられる。

フロイドは容赦なく名無しの内部にまで侵入すると、その狭窄具合に唸るような嬌声をあげ、彼女の尻に両手を食い込ませながら下半身を力ませた。


「フ……ろ…、ああ…あっ……んぁ…！！ンンッ……」

「チュ……、…ね、……いっぱい突くね？名無し……すーき」

「！ッ……――」


名無しの臀部に食い込んだフロイドの指。
その周囲に浮かぶ影が、肉厚なそこの弾み具合をよく物語っている。

いきなりの挿入をまったく予想していなかった名無しは、混乱と快楽に気を取られ、加えて続く律動にまで、気持ちはまだ追い付いていなかった。


「あ……あァ…フロイド……」

「んー？クリも舐めて欲しかった？後ろばっかで……いきなり突っ込まれて。……それともまだ恥ずかしいとか？こんな濡らしてオレの締めといてさ？」

「…ッ……んん…ッ！」


フロイドは自身をさらけ出した時、別に下着をずらす際に出る音に気を遣っているわけじゃなかった。
ファスナーの音だって普通に鳴ったし、つまりは名無しが鈍かっただけだ。
もっとも、それだけ名無しがフロイドからの愛撫に気を取られており、陰部も舐められるものなのだと、先入観で思い込んでいたのがよくわかる。

奥へ奥へと挿入された瞬間の淫猥な音にさえ感じながら、いきなりの露骨なセックスに発展した今、名無しは枕カバーを握り締め、著しく悶え始めた。


「ひ……！！フ……んぁ！っ……」

「ね……クリはもうちょっと我慢してなよ。今はほーら……こうやって指で弄りながら突いてあげるから……あとはそうだなー、もう少ししたらおっぱいぺろぺろしながらも突くね？んむ……」

「！そんな……フロ……ひぁ…あッ……ア…っ……―――」


名無しは再び余裕がなくなっていた。
頭の中まで間接的に犯されたことで思考力が低下して、それでもフロイドに伝わっているのだろう、こちらの本心を読まれて、彼の下でひとり恥じらう。

唐突な挿入、構えられなかった状態での律動。
諸々を整えたくとも容赦なく突かれ、そこに付随する快楽に口元が緩む。

垂れ落ちた唾液がいやらしく、濡れる唇は食した桃のように、色艶やかにピンクがかっていた。


「は……ぁ…アッ……フロイド……」

「すきだよ名無し……。すーき……ん、……チュ」

「！……ッ…ァ……ああ……っ――！！」


名無しはフロイドに望む行為の殆どを、今はまだ下半身への舌遣いと挿入のみで済まされていた。

けれど後背位で耳元に近付かれ、そこで俄かに予告を零されると、その囁きにも確かな昂りを覚え、無意識ながら、徐々に素直さを見せていった。


そんな名無しを見下ろし、彼女を激しく突くフロイドは変わらず尻を揉み、ゆっくりと舌なめずりをしながらセックスに興じた。


背後から抱かれる名無しがフロイドの表情に気付くことはなかった。
けれど彼女に全力で愛されているという実感が湧いたのは、その律動ともうひとつの囁きに、余りあるフロイドなりの熱情が込められていたからだった。