主≠監。
betray the tongue
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『待って……何言って…!』
『アー……。だからぁー……RSAの生徒だからってみんな真面目じゃないんだよ。ウチのライバル校の野蛮な寮生より下衆い男なんて、普通に居るよねー』
『…ッ……』
『……、あーねえ……そんなにホテル入るのイヤなの?いつもは嬉しそうにおれの隣で部屋選んでたくせにさ。……まあ挿れさせてはくれなかったけど、フフ』
『……やっ……』
『おれたちは別にいいんだけどさ。このビル陰でだっていくらでもヤレるよ?ね?名無し……あーでもきみ、身体つきはイヤラシイから……やっぱ部屋入ろ?ベッドに押し倒したい』
『!』
彼に見られるだけで寒気を感じた。
連れに腕を掴まれただけで虫唾が走った。
生理的に受け付けない蔑みにまみれた表情がいくつも並び、そこに含まれる下心が名無しを恐怖に陥れる。
好きだった筈の彼に迫られることも、この一瞬で起きた変化には嫌悪しかない。
名無しは打開したいと思ったこの状況に、けれど竦んだ足腰にそれをすくわれ、まずは複数のいやらしい視線に犯されていた。
噛みつくことすらできない窮鼠とは、まさに今の自分だと涙を浮かべながら……。
『ふふ……褒めて欲しいよね。今まで部屋に入っても、おれが嫌がるきみにずーっと挿れずにいられたコト』
『離……っ、やだ……ね……っ』
『……やっぱりココでしちゃう?どうする?青い男女のおままごと同然な前戯で済ませてたツケ、ココで払ってよ、名無し』
『や……!!』
背後は壁とはいえ、四面楚歌にかわりはなかった。
何をしたって女ひとりでこの場は逃げられない。
掴まれた腕にも少しの痛みが走る。
トップスのボタンに手が伸びた時、本当に終わりなのだと痛感し、名無しが背負ったのは絶望だけだった。
一方の彼はもう、笑ってみせても名無しが好きだった頃のそれではなかったし、何より目が笑っていなかった。
その脳裏にあるのは自分を犯すことだけだったようで、目的が果たされるまではきっと、この路地から表の通りに出ることも叶わないだろう。
膝に走る嫌な感触は、他の連れの手のひらが滑るそれ。
スカートを捲し上げられて、乱暴な所作に微塵も感じない愛情に、名無しは唇を噛み締めた。
『はは…!今更そんなに抵抗してさ……ほら、裸はおれに何度も見られてるじゃん?いっぱい舐めたげたし、きもちよさそうに素股してくれてたじゃん?まあおれはフツーだったけど』
『…、ッ………』
『あぁ……ほら、部屋が嫌ならココの…もっと奥行くよ?平気平気、おれ達以外に誰にも見られないって。すぐ気持ちよくなれるからさ』
『や、だ……!!』
『チッ……。ねえ、言うこと聞いてくれない?ほらさっさと足開……――?!』
そのとき名無しが考えていたのは、最早逃げられないということ……何分、あるいは何時間経てば、彼らは自分の元を去ってくれるだろうかということだった。
ピリオドが打たれるまでの過程は考えたくない。
ただ便利な機能のように、記憶も感触もスキップできればいいのにと痛烈に願った。
『だれか―――』
なんとなく捧げられずにいたものを渡していれば、こんなシナリオは訪れなかったかもしれない。
一生残る傷をこれから抱えて、前に進めるメンタルなど持っていない。
どのみちどんな選択をしたって、いいことなどひとつもない。
悲観に暮れるしかない一寸先の未来を誰かが照らしてくれなくとも……――。
『!!――……だ…れ……』
『怪我はありませんか?』
誰かが照らしてくれなくとも、なんとかなる……。
そのなんとかなるという最後の言葉さえ信じられなかった。
だからそのかわり、名無しはぎりぎりまで抗っていた。
見られたらしい彼好みの下着を連中に揶揄われても、品の無い笑い声で辱めを浴びても、震える身体で力なく逆らって、小さな声で最後に乞うたのは神様に対してだ。
すべてが終わった後、その神様を恨むくらいのことはさせてくれと思いつつ、腿までおろされた下着が目に入り、そこで初めて抵抗を緩める。
――名無しが脱力しきった瞬間、雨とはまた違った水の飛沫や泡状のそれが、狭い路地裏で連中を巻き込み宙を舞っていた。