主≠監。
betray the tongue
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――――。
――。
「はぅーー……面白かったね……!誘ってくれてありがと、トレイ」
「ああ……俺もお前と観れてよかったよ。やっぱり評判通りだったな……続編があるなら待ち切れないやつだ」
トレイと映画を観るのは初めてだった。
初めてだったけれど、きっと彼は上映中、ああするだろう、こうするだろうという想像が簡単に出来た。
ずっと手を繋いでいた分、肘置きにあったそれを奪い、指を絡ませてくること。
流石は寝不足気味だと先んじて訴えられていた分、案の定、肩には彼の頭が何度か寄りかかってきたこと。
どの機でも、トレイは名無しの肩が触れて間もなく意識を戻し、スクリーンに集中していた。
とはいうものの、時折横目に見える欠伸を零す仕草で、やはり眠いのだなということが大いに伝わっていた。
「あるんじゃないかな……そういう終わり方だったよ?もちろん今回限りでも悪くないエンディングだったけど……」
映画の前に入った店でも、トレイは少し眠そうだった。
注文したクリームパスタを美味そうに頬張り、空腹が満たされてしばらく経った頃が、ちょうど上映中の出来事でもあった。
食後にサービスで付いていたドリンクは二人ともあたたかい紅茶を選んでいたけれど、そこでカフェインを摂取しても、暗いシアター内の環境が眠気覚ましの意味を失わせていた。
「……あったら、次も一緒に観てくれるか?」
「え……?」
「まあ……二、三年は先かもしれないけどな……ハハッ」
そんなトレイがようやく覚醒してくれたのは上映終了前、ラスト三十分のクライマックスに差し掛かったときのことである。
睡魔に邪魔をされている場合ではないと思うような展開だったのもあるけれど、それだけ夢中になっている彼を隣で見ているのは、名無しにとってはやはり新鮮だった。
同時に、そのことをとても愛しいと感じたのだ。
繋がれた肘置きにあった手はその握力が増し、初見の映像に息をのんでいるのもなんとなく伝わった。
物語を楽しみにしている純朴な少年の画を真横に感じ、この人の傍にずっと居たいと名無しが改めて痛感したのも、同じ機のことだった。
「――……二年後も。三年後だって……私はトレイと一緒に居たいよ……」
「、……名無し?」
「この先も変わらないよ?ずっとずっと……トレイがすき……」
「!名無し……、……どうした?」
「だから……話したいことがあるの。トレイに言えなかった……全部今日…、話したい。……わたしのこと」
「――……」
改めて強く思った。
トレイが好きなのだと。
だから彼には、やはり自分のすべてを知って欲しかった。
期待した反応が返ってくるかなんてわからない。
けれどエンドロールが最後まで流れきり、その後席を立つ際、解かれていた手が今いちど笑顔で差し伸べられれば、名無しの決意に変化が起きることは当然皆無だった。
――予定していたカフェには勿論向かう。
ざわつき過ぎない落ち着いた空間、他の客と距離をとれると評判のそこで、名無しはトレイにすべてを打ち明けた――。