主≠監。
betray the tongue
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――――。
――。
「悪い!!遅くなった……いっぱい待ったんじゃないか?!」
「!ううん……だいじょぶ……さっき来たところだから……ふふ、なんかいつもこのやりとり。おもしろいね」
「なっ……、いつもってお前なぁ……まあいいか……。フフ」
「ふふ」
「よし……じゃあ行くか!ああほら、手!」
「ッ……あ……トレイ…!」
今日の天気はとてもよかった。
上を向けば一面が青空。
雲を見つけるのも困難だったほどだ。
こういう日に会うことができて、デートらしいことを終日できるのは本当に幸せだなとふと思う。
名無しも、トレイも……。
「別に最後に会ってから一ヶ月……?なんてわけでもないのにな……ホント、俺は我慢弱い男だなと思うよ……。連絡もそこそことってたのにな……俺たち」
「トレイ……」
「ハハ。……お前に会えるのが楽しみ過ぎたのか、昨夜はあんまり寝付けなかったよ。おかげでちょっと寝不足だ……映画の途中で寝落ちないようにしないとな」
「もう……ふふっ。わたしも会いたかった……はやく行こう?トレイ」
人間は気持ちを切り替えられるようにできている生き物だということを今回も痛感した。
会う当日までのカウントダウン、時々メールをしたり、少しの時間、声を聞く為に電話をしたり……。
べったりというわけにもいかなかったけれど、まずは連絡を取り合うことが全く叶わなかった、という状況を避けられて、二人は互いに安堵していた。
勿論、それぞれに思惑はあった。
無い方がおかしかった。
ただそれを前面に出すことで歪みが出来ようものなら、二人ともが、その歪みを避けたいと思っていた。
名無しは当然ジェイドのことを。
トレイは名無しの……自分の知らないところでの、動向に対する疑問についてを。
それぞれがどこかで真実を明白にしたいと感じながらも、どうしても、暫くぶりに会えた喜びが前のめってしまっている……。
それはきつく恋人繋ぎをしている、二人の手を見ればよくわかったことだった。
「時間はまだあるから、先に何か食べようか。お前の行きたいところに合わせるよ」
「いいの……?えっと……お昼と、映画のあとのお店も一応チェックしてたんだけど……」
「!ハハ……抜かりないなっ。そんなに今日を楽しみにしてくれてて、俺も嬉しいよ………じゃあそうしようか」
「ん……ありがと、トレイ」
最後に抱かれたのはスマホごしだった。
その同日、石が濁るほどの魔法を使ったトレイに激しくその身を貫かれたけれど、そうまでされても恋しくなって、電話でトレイを求めた。
ジェイドに挑発されたことが理由のひとつでも、そこまでして求めるほどトレイが好きなのだと、名無し自身思い知った。
今日だって会うのが本当に楽しみだったし、待ち合わせ場所に小走りで近付くトレイを見つけた瞬間、出来ることなら飛び付きたささえ覚えた。
食事なんて、映画なんてすっ飛ばしたい。
提案され、招かれる予定であるトレイの部屋に今すぐにでも行って、許されるのなら彼のベッドで早くひとつになりたかった。
「――……」
けれど切り替えができようとも、ふと思い出してしまうのが、反芻してしまうのが……それもまた人間だ。
知らないふりをして彼の部屋に上がる資格と理由がなくなっていた名無しには、のこのことトレイの家についてゆける立場では既になくなっていた。
「………」
雨上がり、じっとりとした外の空気を纏い帰宅した家族不在の自宅。
その自室でベッドにうつ伏せ、改めて固めていた決意は、今もちゃんと胸に在った。
抱かれる前に、トレイに明らかにしたいことのすべてが――。