主≠監。
betray the tongue
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――――。
――。
「~……――」
水面に口元をつけて、ぶくぶくと浮いては弾け、浮いては弾けを繰り返す気泡をぼうっと見つめる。
広い湯船の中でこんなことが出来ているのなら、自分の精神はまだまともな方なのだろう。
傷ついているのは自分じゃない……。
きっと今、ジェイドと此処に居ることを知ったときのトレイのことを想う方が、胸は痛んだ。
「――……」
間違った選択ばかりを続けて、誘惑に勝てないまま自分からジェイドを押し倒した。
手は出せないと言われ、だからこそ何もないままで居られれば、今頃は堂々としていられた筈だった。
「……ハァ…」
あの瞳に見つめられて、自ら点けてしまったテレビのモニタに触発されて、身体は言うことを利かなくなった。
今までだって、互いの快楽のため。
それが急に熱情のこもった言葉を挟みながら、ジェイドは自分を最後まで抱いた。
「ッ……トレイ…――」
本当に好きだと思える人が出来てから、嘘のように気持ちも変わった。
だからもう、どっちつかずのだらしのない立場から抜け出したかったし、好きな人にはきちんと態度で示したいと思った。
名無しはそのとき、ぼんやりと考えていた。
自分の買った水着のことを。
本当は手元にあること……そしてそれを、どういう理由でトレイに見せられなかったかということを。
相手の為を想う優しい嘘だからといって、それはついていいものじゃない。
保身に走るのをごまかす寝言に過ぎなかったことに気付いてしまえば、それを背負ったまま彼に会うことなど、名無し自身が許せなかった。
「…帰ったら……」
次の待ち合わせのことを決めて、映画を観終わった後は、トレイの家に行く予定を変更してもらおう……。
やっぱり彼の部屋に行くのは、全部終わってからだ……――。
「おはようございます……名無し」
――すっかり冷めきっているとばかり思っていた湯船は、広さや湯量も相まって、殊のほか温かかった。
セックスの事後、火照りっぱなしだった身体には、皮肉にも心地の好いぬるさである……。
「!!ジェ……入って来な…ッ……」
名無しが皮肉に思うことはもうひとつあった。
その湯船は既に、ジェイドが入れていたものだったからだ。
性的な意味でない場面で感じる心地よさを、彼の手で作られた環境で味わうということ……。
屈辱的と喩えても何ら違和感はなかったけれど、身体の疲れ、汚れ、気持ちの切り替えの為にも、今の名無しには必要だった。
べたついた髪や肌を洗い、内側に残ったジェイドの余韻も流す……。
大きく息を吐きリラックスできる時間が来たのも束の間、そこにジェイド本人が裸で現れれば、身体を重ねたばかりの関係を以ってしても、名無しが目を逸らすのは当然だろう。
眠っていた筈の彼の登場に驚き、名無しは浴槽の端に身を寄せた。
けれど言い分ひとつでジェイドを全否定出来ず、結局近くに来ることをゆるしていた。