主≠監。
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どんなときでも呆気なく訪れる幕切れがあるということ……それを肌で感じた瞬間だった。
べつに蟠りも未練も、何ら負を思わせるような感情は抱かない。
ただどう表せばしっくりくるのだろうか……まともに別れの挨拶を交わせなかった、なんて言うのもおかしな話だ。
なぞられた唇に残る熱が、やけにあたたかい――。
「ジェイ……」
「フフ……気が変わった、と喩えるのはらしくないかもしれませんが……ですが僕は、あくまで本体ではありませんから……」
「……っ…?」
「今の僕は、貴方と繋がるというよりは、この身体を一方的に愛したかっただけなんですよ。この舌で……ね?ですからまたお会いしましょう。きっとそう遠くない未来で……」
「じぇ、い……」
「ふふふ。ええ……次があれば、そのときもたっぷり……嫌というほど舐めて差し上げますから。……それではごきげんよう?名無し。……チュ」
「!ン……ッ……――」
――その別れ際の言葉は、本音か否か。
名残惜しさを見せたのは、最後まで自分も名無しを抱きたかったからだろうか。
それが魔法の供給が途絶えて消えてしまうことに対する、フェイクからのジェイド本体への不満だったかどうかは名無しには分からなかった。
けれど本体さながらに顕現していた時間が確かに在って、名無しを愛でていた事実も確かにそこに在る。
消える間際に触れた額へのキスもまたあたたかく、到底忘れがたい経験を、最後にフェイクは名無しに擦り込んでいた。
「――……ッ…」
そこで思い出すのは、二人に犯されているあいだしばらく忘れていた、もうひとつの経験だ。
――本来名無しが望む相手。
今それを求めても絶対に叶わないゆえ、だからこそ今だけは忘れていようと思った相手……。
「!あ……ジェ……、ぃ……!!」
そしてその瞬間、身体に表れる気持ちがジェイドごと締め付けて、名無しは彼のことをどこまでも煽っていた。
自分への言葉を残し、フェイクはゆっくりとその場から消えていったけれど、それだけだ。
だから――。
「?!ンッ……んっ!!あ……ジェイド…、……」
「、フフ……貴方とのセックスに夢中になりすぎて……少し集中力が切れてしまいました。上着の中……僕のマジカルペン、今はきっと魔法石もくすんでいるのでしょうね……」
「ッ……ジェイド……」
「フッ……そういうことです。また二人きりになりましたね……まあ…僕としては、まだまだ彼に頑張っていただきたかったんですが……ん…」
ジェイドはフェイクが消えた理由を隠そうとはしなかった。
どころか、自らの未熟さを素直に認め、名無しを最後まで二人で愛せなかったことを遠回しに詫びていた。
名無しの方はそんな風になど思ってもいないというのに……。
彼は自身のフェイクの消滅の機が、トレイのそれと近いことを知っていたからこそ、名無しに正直だったのだ。
それが計画的かどうかはさておき、同じに等しいことが自身不満だったのだろう。
呆れ笑いをひと混じり、未熟さに腹立たしさを覚えているあたりが、恐らくはその証拠なのだから……。
「っ……もう、いい………。あっちのジェイドには……その……」
「?」
ジェイドは名無しがフェイクの消滅に驚いている隙を狙って再び突きを始めた。
魔法石の表面が濁ることは想定内だ……ゆえに尽力を過ぎても、セックスを止めることはありえなかった。
互いに溶け合い、一緒に好くなりたいという気持ちは嘘じゃなかったし、ジェイドがそれを望んでいた。
「名無し?」
「ッ……いっぱいしてもらった、から…ン…ッ……。――……だからいまはもう、…今は……その、……――ッ」
「!――……本当…可愛いことを言ってくれます。貴方は……――……手放すには本当に惜しい……」
「!!ちが……う…いまの……忘れて…いまのは違……!んん……」
「違いませんよ……貴方は、本当に性に貪欲で、忠実で……抗えずに苦悩するその姿……ああ、まったく……たまらない…」
「――……ッ…」
複数で犯されることを望む名無しに詫びた直後、ジェイドが次に聞いた名無しの返答は、彼にとっては存外嬉しいものだった。
どんなに嬲られても、ずっとずっと脳裏の何処か、その中には本来の男性が居座っている気がした。
恋仲に昇格したトレイの面影だ。
勿論それでもよかったし、その方が背徳感も犯し甲斐も大きく感じられた。
けれど自分が絶頂に着くまでのあいだに、名無しがここまで傾倒していることが愉快でたまらなかった。
誰でもいいわけじゃない。
トレイじゃなければいけない。
が、例外もある。
甘い誘惑をして手を差し伸べた、トレイがまだ知らないであろう名無しを、自分が深淵から救い出した過去がある限り……――。
全身を愛撫したあと、トレイを差し置いて無意識に自分に縋る……その姿にジェイドが抱くのは、愛情の他に何があっただろうか。
「!ん……、ジェイド……ッ……?!あ……」
「ふふふ……僕ももう達きます……貴方のナカに。……、ん…あ……名無し……ハ、ァ……」
「っ…あ……ぃ、ド……待っ……」
「出しますよ……ちゃんと感じて……僕と、一緒に…――!!あッ……イク――ッ」
「!んん……ッ、んアッ……アっ……ッ……――!!」
名無しと溶け合って、夢中になって、集中力が途切れたことでフェイクを失っても、名無しの気持ちは途切れていなかった。
きっと否定が混ざっていても、繋がっていた事実が覆らなかったからだろう。
激しく揺れるベッド。
心地のよすぎるそこに改めて組み敷いて、ジェイドがらしくなく垂らす汗は、下半身の律動の猛々しさを物語る……。
「はぁ……、ハァ……!んぁ……ンッ」
一方的、それも三度も果てさせられた。
それでもまだなお突き上げられた感触には、名無しもきっと、気が狂うほどの高揚感を覚えていたに違いない。
ジェイドにはそれが目に見えて理解出来ていた。
そして体内に欲望を注いだ数秒間、ジェイドは名無しを見つめ続け、目が合うまではずっとずっと、熱い眼差しを彼女へと送っていた。
そこにどんな意味が込められていようとも、確かなのはただひとつ、二人が結ばれていたということだった。