主≠監。
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「――……それで?俺の女かどうかを今すぐ確かめるためだけに、わざわざ俺を探してたのか?」
「んー……そう見える……?」
「~……ケイト…」
「うそうそ!ゴメンってば……。――……トレイくん、ずーっと忙しそうだったし。真面目に心配だったからさ、オレ……だから安心したんだ。安らげる場所、ちゃんとあるんだって」
「!」
彼が影を持ち、陽気なキャラクターを演じていることくらい知っている。
誰にも話せないことも人にはひとつやふたつ、ない方がむしろ今の世の中には珍しいだろう。
ケイトは寮内でもその外でも明るく振る舞うけれど、トレイは彼の時折見せる、虚無を抱く瞬間を幾度となく目にしていた。
きっと、逆もまた然りなのだ。
そんなケイトが自分を見ていない筈はなく、一番近しい友人として気にかけてくれている……それを今この瞬間、改めて思い知らされる。
だから素直に嬉しかった。
淹れた紅茶を美味そうに飲んでくれていることよりも、他人である自分を想ってくれていたことが――。
「……あー……そう…だったな……。抜く暇もない……みたいな話、お前としたんだっけか……前に。ハハ」
「そうそうっ……。……オレもちょっと投稿見ただけだけどさ。可愛い子だよね……水着、パーカーからネイビーのギンガムにフリルがギリ覗いててさー?あれ、きっとかわいいビキニだよッ」
「!おい……見すぎだろ…、お前……俺はそこまで確かめてないぞ?!」
「ゴメンゴメン!ついね~ッ、気になって画像拡大しちゃった。でももうそのスクショはエースちゃんのスマホから削除済み~」
「はぁ……何やってるんだよお前は……」
「だからごめんってば~!……とにかくさ。悪いムシがつかないようにしなくちゃね、トレイくん」
「、……――」
目の前で揺蕩う湯気に息を吹きかけ、おちょぼ口を作ってカップに唇を付けるケイトは、なかなか殊更に可愛かった。
勿論トレイにそういう趣味はなかったし、それはあくまで彼を好いた女性が見るであろう目線で喩えたものだ。
そんなケイトが真剣になることもまあまあ稀であり、今がそのときでもあった。
本当は、隠していた女の存在に妬いているかもしれない。
水くさいと愚痴り、軽く肘鉄を食らわしたい腹積もりで此処へ来ていたのかもしれない。
その一切を思わせず、ただ自分に気を向けてくれたのが、ケイトなりの心配の念というものだろう。
良い友人を持ったと、トレイが心から思うのも当然だった。
「はっ……そうだな…―――……ついてないわけじゃないあたり、お前はもう見抜いてるのかもな」
「ん?何か言った……?」
「いや……なにも?」
――だから、そんな大事な友人だからこそ、最後まで話せないこともやはりあるものだ。
もっともそんなケイトだからこそ、みなまで言わずとも、何かしらには勘付いている可能性もあったのだけれど……。
トレイは二杯目の減りゆくカップの中で波打つ、小さな水面を眼鏡越し見下ろしながら、隣のケイトにはおおよそ聞こえはしないであろうトーンで一言囁いた。
案の定すぐに聞き返されたが、当然、トレイが同じ言葉を告げる機会は二度と訪れなかった。