主≠監。
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「僕も使えると言ったでしょう?……一言下されば、今すぐ此処で貴方の願いは叶います。……まあ、僕はまだ一人増やせる程度ですが……ふふふ」
「ジェイド……やめて…わたし、裏切れない……うらぎりたく…だってトレイが、あ……」
自分を繋ぎとめるための嘘だと思った。
それでも一言話すだけで誘惑され、抑え切れずにトレイに連絡して、そのまま電話ごし彼に抱かれた。
慰めた後の虚無感など二の次で、そんなことが小事に感じるほど、ジェイドの方が脅威に思えたのは当然だ……。
名無しはそのジェイドに改めてひとつの事実を口にされて、渇望する行為への衝動を抑え込むために彼を睨み付ける。
もっとも、睨みなんて厳しい形容は、彼女には不釣り合いが過ぎていたのだけれど。
せいぜい潤んだ瞳で懇願する非力な女性にしか、ジェイドには映っていなかっただろう。
「ッ……」
「………」
ジェイドが本当にスプリット・カードを使えることを知ってしまった。
この部屋で、ベッドの上で。
見覚えのあった卑猥な映像に、身体が影響を受けた状況で。
そのうえでいまだ進みゆく壁面のモニターは、変わらず、女性が男たちに激しく淫らに犯されている……実に淫猥なシーンが映っていた。
甘くて甲高い、その声色も声量もひどくなった、まるでそろそろ”最後”が近いと思わせるような――。
「!……ジェイドッ、……や、音……消し……?!ジェイド…ッ……」
「………」
名無しは直感で、これ以上は本当に聞いていられない、流すべきじゃない……そう痛感してジェイドに改めて乞う。
勿論、彼が首を縦に振ることすらおろか、リモコンに手を伸ばすことも、そこでは起こり得るはずもなかった。
挙句は掴んでいた両肩から腕をとられて、名無しはそのとき、初めてジェイドに真の意味で背後を許していた。
間近に迫られ、けれどあくまで、ただ単に背後をとられただけ……。
後ろから耳元で囁かれれば、火照る身体は、その熱が静かに増していった。
「、フフ……おやおや……。彼女、今随分といいシーンじゃないですか……トレイさんとはご覧になったんでしょう?ほら……名無しも。もう一度ちゃんとよく見て」
「や……!…あ……」
「フッ……同じですね……きもちいい、きもちいいって。奥を突かれて、なのに色白な身体にはずっと、いやらしく舌が這いまわって。……同じことを、今すぐご所望ですよね?」
「っ……」
背後をとられた際、一瞬ローブごしに触れ合った肩にも熱を感じる。
平静を装いながら巧みに言葉を連ねるジェイドもまた、視聴覚的に触発されていたのか……それとも単純に入浴後の名残りか。
動揺と混乱に足掻く自分に見極める術は既になかった。
けれど少なくとも、熱いのは自分だってそうだという事実をジェイドに知られていることが、名無しは悔しかった。
ここまで接近して、口を開くだけで何もしない、手も出さない……だって約束だからと言ってのけるジェイドが、心底おそろしかった。
止まない映像は視覚的に拒めても、どうしたって聞こえてしまう水音と嬌声に、名無しの身体が打ち震える。
「やめ……」
「名無し」
「ッ……ジェイド…おねがいだからこれ以上……変な気持ちに……せ…ないで……」
「……名無し……セックス、したくないですか?此処で今すぐ……誰も見ていない、誰の邪魔も入らない……気持ちよくなることだけを考えられる、この部屋で」
「!……あ…」
「フフッ……、こんなに熱くなって……手のひらも随分しっとりしていますね……苦しくないですか?頬を染めて……僕を誘惑する、いつものいやらしいカオだ。……僕の大好きな」
「…っ……」
ぶるると震えた身体は同じく、今度は名無しが、ジェイドにローブごし肩を触れられていた。
突如として振り向かされ、けれどどれだけ近くなっても、合うのは視線だけだ。
そこに唇があって、息遣いさえ感じても、ジェイドは首を傾げようとはしなかった。
孕む熱情に頭がおかしくなる。
何度考えても此処に居るのは、目の前に居るのはトレイではなく、ジェイドである。
甘い言葉に、柔く強かに見つめられる……。
唯一起きた接触は、名無しの汗を掻いた手を、ただ軽く握られたそれだけだった。
半端な触れにまた焦れが増し、何度も何度も膝を摺り合わせる。
小さな動きが重なって、たとえば名無しの腿が露わになっても、ジェイドはそこを撫でることすらしなかった。
「手……はなして…ジェイド……、もう…」
「ん?……ふふ……名無し……僕、別にいまは…貴方の手を握り締めているわけではありませんよ?いつでも……貴方が一振りするだけで離せます」
「!…ッ……」
「ね、溺れたく…ないですか?だって好きじゃないですか……貴方は。長いキスをされるのも、卑猥な舌にしつこく……耳を中まで掻き回されるのも。……首筋に噛み付かれるのも」
「っ……それは…もう全部…ト……」
「名無し。……めちゃくちゃにされたくないですか?今すぐに……ねえ?名無し……」
「…ッ……ジェイ、ド……」
何度言い返しても言い返される。
意味を成さない平行線に、いい加減辟易とさえなってしまう。
楽になりたいと思えばその方法も知っていたけれど、名無しを繋ぎとめていたのは、彼女が今は心から恋慕するトレイの他なかった。
ずっとトレイの名を出していれば、いつか誘惑も止むと思ったし、そう願いたかった。
たとえ浮かべる幻想でも、思わないよりは幾分もマシだった。
消えそうな影を懸命に思い浮かべて、この場から救って欲しかった。
「ふふ……まあ、念を押しますが……僕からは何も出来ませんがね。……なにも」
「――……ッ………」
それでもジェイドは当たり前のように名無しを説き伏せようと、ゆるやかに喉を震わせる。
強い意志を持っていたかった。
次に会うときは、トレイの彼女らしく凛凛と、堂々としていたかった……――。