主≠監。
mistake eraseⅡ
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「!……ッ…」
フロイドとは異なる傾きを持つ、強く、鋭い瞳に力がこもる。
魔法を発動させるためじゃない。
名無しへと向ける執着と熱が、彼の目の色を変え、扇情的なものへと昇華させてゆく……。
「ジェイド……なに言……っ」
「卑猥な音と甘い声が沢山響いて、複数の男に弄られた彼女の身体を見た貴方が、いまどんなにそのローブの中をしっとりとさせていても、僕は手を出せないんですよ……ふふ」
「…ッ…ジェイ……ド…」
言葉の意味など分かっている。
理解が出来、聞き取れる彼のそれを拒むために、名無しはジェイドと距離をとっていた。
どんな状況に置かれても、ただひとつ決めていたことだけを想い、それを意志の強さにかえて今を過ごしている……。
交わした約束が裏目に出るなんて、考えもしなかったことだ。
こんな密室。
非日常。
情欲に駆られていたのはジェイドではなく名無しの方だった。
無音の空間がよくないと思ったばかりに、また選択を誤った。
名無しはローブの胸元を自ら掴み、加速する鼓動が落ち着くことを祈りつつ、傍ら、どうしようもなく疼く身体に頬を紅潮させていた。
「勿論、僕からは約束を反故にはできませんので。……そうですねえ……ただ一言。名無しの口から仰っていただければ、或いは話は変わってきますが……」
「!ふ……ざけたこと…言わないで……私はただ…っ、これをトレイと見たことがあったから……そんなこともあったなって…ただ思い出して…わたしは……」
「思い出して、濡らしていた。……僕とトレイさんに抱かれた日のことを。――……彼がご自分の魔法石を汚してまで……スプリット・カードを使って、貴方を抱き潰した日のことを」
「ジェイド……やめて…それ以上言……」
「名無し。先日……僕が電話で話したことも思い出して下さいよ……。……嘘なんかじゃないんですよ?」
「!!」
ベッドの上、それぞれの端に寄っていた二人の距離はまだ縮んではいなかった。
ジェイドはそこから動こうとはしなかったし、名無しだって、彼の口車に迂闊に乗ることも、一応は防げていたからだ。
とはいえジェイドの言葉はあまりにも巧みで、隙を見つければ簡単に論破することも或いはできたかもしれない。
けれどそこまで思考を巡らせることを、今の名無しにできる余地はなかった。
引き合いに出される、トレイの名を口にする機もあまりに卑劣と感じさせられる。
彼が自分を犠牲にしてまで共に享楽に溺れ、快楽を優先して激しく求め合ったことをまぶたの裏側に思い出さされる。
色めき立った艶やかなシーンが脳裏で走れば、モニターに釘づけになっていた名無しの身体は、火照るほかないのもまたそこにある事実だ。
「やめ……て、もう…」
いっそ襲われれば、すべてジェイドの所為にできただろうか。
膝を擦り合わせて焦れる名無しは、話を止めない彼の言葉をこれ以上はもう聞きたくない、聞いていられないと感じ、手をあげそうな勢いで自らジェイドに近付いた。
もたつきながら膝を使って進行して、止むを得ず、思わず両肩を掴んで声をあげる。
けれどそんなことでジェイドが狼狽える筈もなく、彼はただ悪い笑みを名無しに向けるだけだった。
そして名無しがおそらくは今、一番望んでいるものを甘く甘く、静かに言葉に乗せた……――。