主≠監。
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「ん……っ…、て……ああ、お前か……エース。……熊にでもぶつかったかと思ったぞ」
「熊って……ここ廊下すよ!学園のっ」
「はは!そうだな……ま、歩きスマホなんてしてる奴にツッコまれたくはないけどな」
「うっ……スンマセン…」
ばったりと鉢合わせし、ぶつかっていた相手はエースだった。
トレイはその瞬間、直感で書類を置いてきた後でよかったと思いながら、半分は無自覚、もう半分はわざとらしく皮肉を漏らす。
素直に謝ってくる後輩は可愛いと思えるけれど、ぶつかった原因が少々腹立たしかったのだ。
まあ、皮肉を交えるのもトレイとしてはもっともだ。
これがリドルなら、この場限りで済まない可能性もあったのだから。
「ほら、スマホ。勢いよくぶつかって落とした割には丈夫だな、お前に似て……ん?マジカメか?」
勢い激しく、画に描いたように吹き飛んで廊下を滑るスマホを拾い上げながら、トレイはそれをエースに手渡した。
もちろん、極力画面の中は覗き込まないように……それがトレイにとってはエチケットだと思ったからだろう。
けれどどうしてか、思いのほか気になってしまったのは、それがいかにもエースらしいと言えば恐らくは過言でもない……そんな画像が視界に入った所為だ。
「そりゃあ、こう見えて保護シートもケースもつけてますからっ!……ああ、そうっす……ちょっと気になる子のアカウントがあって……」
「ハァ……だからって画面に釘付けで人にぶつかってたら世話無いぞ?俺でよかったものの、これがリドルだったら首を……、――……」
気になったのは多分、画面に映っていた人物の数と、肌の露出が多かったから。
男という生き物な以上、肌色に反応してしまうのはおそらく本能的なものだろう。
それをからかい、微笑まじりに後輩とコミュニケーションをとって、それで終了……。
きっといつもなら、それで綺麗に場はおさまっていた。
エースのスマホを凝視してしまったのは、背中に滲む嫌な汗を感じたこととは関係ない――。
トレイはその瞬間、そう必死に言い聞かせていた。
「………ッ…」
「?どうしたんすか……?トレイ先輩」
「なあ……お前、この子の…いや……アカウント、どの子のだ……?」
「え?!……あーやべ、投稿開きっぱじゃんオレ……てゆーか、なにガン見してるんすか!?もしかしてトレイ先輩もこういうの結構好きとか……?」
「いや……そういうわけじゃないんだけどな……知り合いに似てたからつい……」
「へー!!まあ、イマドキの女の子みんな可愛いっすもんね……っ、色々と偏差値高すぎ、みたいな」
寮服のインナーの中に不快感を抱き、紅茶を飲んで落ち着きたいという気持ちがより一層強くなる。
いや、もしかしたらそのティータイムすら今は無理だと思うほどの苛立ちだったかもしれない。
頭の中までクラクラとなって、トレイは目の前のエースに、そんな自分のコンディションの急激な変化を悟らせまいと必死だった。
眉間に皺がないか意識して、呼吸も平常通りを保ち、表情こそいつもどおりに、ラフな体勢で……。
ただ、流石にごまかせたとしても、食いついてしまった以上は自然に興味をそそられたことを打ち明けておかなければ、エースは余計な誤解をするに違いなかった。
後輩にあわせるペースの、なんと疲労感の強いことか。
それでもトレイは、見えてしまったスマホの画像の真相を確認しなければならなかった。
そしてエースの言葉に、的確な語彙を用意する必要もまた……。
「っと、オレのお気に入りはこの子すね!この前バスケ部のみんなで海行ったんすけど、ちょうどそこで……まあナンパっす」
「………」
「みんな陽!って感じでいいっすよね…!オレらが声かけたときはこの前列の四人だけだったんすけど。後ろの三人はなんか別行動してたとかで……全然接点ないんスよ」
「別……?一人だけが?それとも三人一緒にか?」
「さぁ……?でも後ろ三人も全然キラキラしてて、オレ的には大アリっす……この奥の大人しそうな子なんか特に。パーカーの中からチラ見えしてる水着、ぜってーカワイイ!!」
「……ハハ。お前、結構雑食なんだな……お目当ての子と比べると、随分好みが違うんじゃないか?」
「そうすか?まあでもオレはこの子しか狙ってないんで!……そういえばその似てる知り合いってどの子っすか?ついでにトレイ先輩の好みなんかも……」
「エース、悪い……キッチンに用がある途中なんだ……まだ別件も片付けなくちゃならないから、答えは秘密ってことにしておくよ。フフ」
「え~……知りたかったんすけど!トレイ先輩の好みー……――まあ……了解っす。……てゆかお疲れっす!」
「ああ、お疲れ。じゃあな……――」
――――。