主≠監。
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――――。
――。
どうにも気が晴れないなと思っていたけれど、ものは考えようだということを名無しが改めて感じたのは、街へ出てふと空を見上げたときのことだった。
交通機関を使って訪れたそこは馴染みの深い場所。
友人と、家族と。
そしてトレイとだって通ったその大きな駅は、週末というだけあってなかなか賑っていた。
「………」
吹き抜けのターミナルから差す陽には、ほんの少しだけ眩しさを覚えて目を伏せる。
その明るさになんだか救われているような気がして、名無しは時間を確認するために腕時計を見た。
普段ならスマホの時計を使っていたけれど、電源を切っている今、それは不可能だった。
癖づいている習慣に流されず、もたつかずに腕に視線を向けられたのは、それだけ彼女の意思も固いということだろう。
どうなることかと一憂を含みはした。
けれど名無しは目的をしっかりと持っていたし、それが終わったらさっさと帰宅しようという考えにも変化はなかった。
たとえばなにか寄り道をすることになったとしても、せいぜいカフェでひと息つく程度の予定が生じるくらいだ。
「っ……はぁ…、……先にごはん……」
そして今はちょうど、ランチタイムと呼ぶに相応した頃合でもあった。
マーケットへと進む通路でふくよかに香るのは、様々な料理のそれ。
誘惑されて初めて気付くこともあり、そもそも二日間すべての食事を自炊で済ませるのなら、食材は地元で揃うし、わざわざ都会に出る必要なんて名無しにはなかった。
つまりは一食くらい、学生らしさも残した、贅沢を孕んだ外食をしたかったのだと気付かされる。
名無しはこの日、自分が何も食べずに街まで来たのを腹のむしが鳴ったことで思い出し、沸いた食欲には忠実であるべきだとも思い直して、漸く気を緩ませた。
そうすることで、どれだけ自分が緊張感を張り巡らせていたのかも確かめられた。
油断はできない、けれどあくまで自然に……何事もほどほどが一番だということだ。
「……よし」
立ち止まった通路でUターンをして、マーケットに背を向けて前を進む。
その後、買い物の順番が前後することくらいは構わないだろうというこたえに辿り着いた名無しが向かったのは、以前トレイと寄ったことのあるカフェだった。
上を見たときに広がっていた青々とした空には、予報とは異なった雨雲が多く混ざり始めていた。
そのことに彼女が気付くのは、もう少しあとのことである――。