主≠監。
plz forgive me.
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――――。
――。
『ッ……はぁ…っ、ハ……ぁ…ト、……レイ……』
「…っ――……ああ…聞こえてたよ、ぜんぶ……。そんなに感じて……ほんと、お前はえっちで素直で……可愛いよ」
脈が途切れてゆっくりと我に返ると、なんだか虚しさよりも恥ずかしさの方が勝っていた気がする。
大胆なことをしたものだ……恋仲になって間もない関係、どれだけ発情りがついていたことか。
それでも全身に広がる多幸感を確かに抱きながら、トレイは満たされていた。
名無しも同じ気持ちなのだろうと、ひとり思いながら――。
『……ッ…トレイ……あの…』
「おっと!ストップ……謝ったらもう一度やらせるぞ…?今の」
『う……っ…』
「フフッ……」
自分も果てていたのだ、ゆえにそれと同時、電話の向こうで名無しの呼吸が途切れたのは、間違いなく絶頂を意味していた。
彼女も満更でもなかったのだろう……寝返りを打ったシーツの擦れ音に続く、まともな会話のための声音が少し遅れて発される。
輪郭と肩の部分を使ってスマホを挟むと、同じく射精していたトレイはボックスティッシュに手を伸ばしながら、名無しの言葉を待った。
もっとも、彼女が何を言うかは予想もついていたのだけれど……。
きっと、”寮の部屋であんなことをしていたにもかかわらず、通話を経てまだこんな状況を作ってしまったことを詫びるに違いない”と思ったそれは、しっかりと当たっていた。
だから端的に、且つ的確に、トレイは自分がどこまでも満たされていたことを名無しに伝えた。
「……なぁ名無し。初めてだな…その……こんなことするのも……だから俺は嬉しかったよ。まだ知らないお前の一面が知れて」
『トレイ……』
「お前が気にやむことなんて何ひとつないんだ……謝られたら俺が病むぞ?なんてな……ハハ」
『な……っ、そんな……もう…』
「ん……確かに。次会えるまではちょっと長いよな……けど、それだけ楽しみでもいられる……。――……好きだよ、名無し」
『ッ……トレイ…――』
もしかしたら自慰に耽ったあとに虚無を迎えるのは、その字の如くにある、虚しさの所為じゃないのかもしれない。
ただ脈切れののち、到達した折角の最高潮、その快楽が去ってゆくのが惜しかったからかもしれない。
名無しにそう刷り込ませようとしていた自分は悪い男だろうか……頭の中で自問するトレイは、それでも名無しが笑っていてくれればよかった。
大量の魔力を要し、他人の個性を使ってまで享楽に溺れた。
代償はとてつもない疲労感だった。
けれどその直後でもなお、トレイは遠くに居る名無しをスマホ越しに愛でた。
どんなに疲れていても、求められることの方が今は嬉しかったから……。
そのためなら、少しの無理だってしてみせてこそだと思えた。
「シャワーは……これから浴びるのか?メールは……いや、時間が許すときは電話だってできる。俺もそうする……な?名無し」
『っ……シャワー…うん、……お風呂行かなくちゃ。……ありがとう、トレイ……わたしもすき…――』
「フッ……知ってるよ。……それじゃあ、――ああ……」
『?』
淡々と事後処理をしてしまうのは男性特有だった。
トレイは身形を整えながら、再び自分の手でスマホを持ち、名無しと通話を続けていた。
少し強引ではあったけれど、この場で求めてしまったことを悪いと思いかけていた名無しの考えも、なんとか晴らすことができた。
悪い筈ないのだ……むしろ困らせて欲しいくらいだと感じる本音は、敢えて口にはしなかった。
「名無し……」
自分が身嗜みを元に戻しても、きっと名無しはまだベッドの上でぐったりとしているのだろう。
精液で汚れる身体の後始末も大概だが、女性は女性で面倒だと思う。
名無しの溢れさせる蜜の量を知っていれば想像にも容易いし、まあ、これからのんびりと入浴するのであれば、ひとり微睡むのも肯けた。
――そんなトレイの予想に外れない名無しは、案の定まだベッドの上、乱れた姿で彼の声をうとうとと聴いていた。
気持ちよくなって、色気のある低い声音に癒されて、悪いと思ったそれも気にすることはないと強く意思表示された。
濡れた下半身を拭ったあとは、機を見て浴室にも移り、入浴しなければいけない。
やがて色艶の孕む脳内を片しながら名無しが漸く上肢を起こすと、いよいよ通話も締めくくられようとしていた。
けれど、名無しは再びベッドに全身を委ね、表情を凍らせた。
「ちょっと早いけど、……おやすみ、名無し」
「!!―――……ッ……、ん……おやすみなさい」
――きっと限界だったトレイの体力も、精神力も、自分の為ならばと彼はその限界を超えてくれた。
結果遠くに居ても、スマホを通して近くに感じ、互いにまた満たされた。
「―――……」
機械ごしの声音でも、耳元でトレイのことを考えて、想って、たとえ触れる指先が自身のそれでもリセットできたと思った。
こんなに笑えない皮肉などないだろう……。
それは偶然の出来事だったけれど、名無しの胸を抉るにはじゅうぶん過ぎる一瞬だった。
「どうして……――ッ…」
どうして。
同じ言葉を選び、同じようなトーンで優しく、撫でるように囁くのか――。
無理を強いてねだって、次に会うまでの時間をトレイのことだけ考えられるようにと願った名無しの望みは、奇しくもトレイによって砕かれていた。
トレイが忘れさせてくれた数十分前、同じ耳元で聞いたワンフレーズ。
思い出してしまったことを、どうかゆるしてほしい……。
涙こそ流さなかった。
けれどベッドの上で、追いつめられたかのように激しく煩悶する名無しの頭に浮かぶ影は、既にトレイのそれだけではなかった―――。
plz forgive me.
20210122UP.
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