主≠監。
HBD1105F
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それは深夜の三時頃のことか、はたまた四時頃のことか。
明確な時間は時計を見なければわからなかったけれど、この部屋に居る場合は自身のスマホで確かめた方が早かった。
疲れて眠ってしまった……までは覚えているのだが……――。
「んん……」
「……ふふ。……眠ってると静かなんだから……」
真夜中、ひとり目を覚ましてしまった名無しは、隣でスヤスヤと寝入っているフロイドの横顔に見惚れていた。
閉じた瞼とて、明るさに反応してしまったゆえに意識を取り戻す。
消灯せずに落ちていたのは、リモコンに手を伸ばす気力もなかったからだ。
ただ腕の関節を曲げ伸ばしするだけの所作がとれないほど体力を消耗していた理由など、当然絞られよう……。
「ん……んー…、ん……」
「……フロイド……?」
「ンー……ん、……すぅ…――」
「~……」
眩しくて目が覚めたのと同時、鼻をツンと掠める甘い香りもして、それがゆっくりと名無しを覚醒させてゆく。
棚や机上にそのままにしていた菓子が原因だろう。
ベッドに入る前、確かに封を閉じろと名無しはフロイドにやんわり話していた。
にもかかわらずそのままだったあたりは、何とも彼らしいことだ。
とはいえ、湿気てしまっては食感と味も落ちてしまう……。
ゆえに名無しは、封の開いたままだったスナック菓子の袋を閉じるため、ゆっくりと起き上がろうとした。
「!」
が、床に足をつき座った体勢を作った瞬間、腰に感じたぞわぞわとした気配に、彼女の全身は自由を失っていた。
「!!わ、わ……ッ」
「ん~……何処行くのー?名無し……」
名無しが起きたのは、寝落ちる前に触れられなかったリモコンを手に取るためでもあった。
暗めの照明に設定して、改めて朝まですやすやと眠りたかったのだ。
フロイドの部屋で一夜を共にできるのは特別な日、細心の注意を払ってこそできたこと……。
貴重な一日を穏やかに過ごしたいのは、彼女の立場ならそれもまた当然だろう。
「フロイド……ッ」
そんな今日は大切な日、菓子にもリモコンにも手を伸ばせずに名無しがとらわれていたのは勿論、フロイドの腕のなかだった。
目を覚ましたらしい彼の乾燥した、喉から奏でられる擦れた声色に、ほんの少し耳元がくすぐったかった。
「ッ……はぁ…、なんで起きるの……いま…っ。さっき名前呼んだときはぐっすり寝て……」
「えー……だってお前居なくなるとベッドが冷えるじゃん……んんー」
「冷……、一瞬でそんなに温度が変わるわけ……」
「変わるよ?オレお前より体温低めだしー……それにギューってしてた感触が消えれば誰でも起きるって」
「……フロイドだけだと思うよ…?そんなに器用に起きられるの……」
ベッドから出ることを阻まれた名無しは、フロイドの起きしな、やけに明確な話し口調に疑問を覚えていた。
実は寝たふりをして、案外とずっと起きていたのかもしれない。
まあそれを追求したところで、きっと彼ははぐらかすだろうけれど……。
身体を倒されると、名無しは再び寝かされ、言葉とは裏腹にフロイドと向き合った。
そして霞み目らしい彼の重い目蓋をした瞳をまっすぐ見つめ、その瞳に愛しさを覚えれば、つい数時間前の出来事までをも回想し、頬を染めた。
どうして体力が尽きたか……それは今日がフロイドの誕生日であり、彼のお願いごとをすべて叶えていたからだ。
「はは……。あーでも眩しいね……ひょっとして電気消そうとしてくれてた?ありがと名無し」
「!ん……そう。だから消……!!フ……」
「あーぅ……んん……あむ…」
「ッ……フロ……寝…」
誕生日に彼女が彼氏に渡すものなど、物のプレゼントを除けば、それ以外のことはわざわざ喩えるまでもない。
乱れに乱れたシーツが一部床に擦れていれば、どれだけそのベッドが軋んだかも想像に容易かった。
限界まで名無しを抱いたフロイドの体力は、云わば底無しに近いとも形容できる。
けれど名無しの場合はそうはいかなかったし、だからスタミナが切れ、彼女は寝落ちていたというのに……。
いっときの起床を挟んで、これから再びすることが睡眠ではなく、セックスを連想させるような言葉が耳元に飛び交えば、名無しの胸の鼓動は速くなるばかりだった。
「フロイド……もう眠…」
「チュ……ん~……」
「ッ……は、ぁ……だめだよ…朝、起きられなくなっちゃう……それにさっきまで散々…」
「えーやだ……ちょっと寝たら元気になったし~……あと一回だけしたいな」
「っ……フロイドは…元気かもしれないけ、ど……ッあ…」
「ふふ……ねーえ……しよう?名無し……もっとオレにプレゼントちょーだい?ね……?」
結局、自分のスマホを見るタイミングもなかった。
名無しは正確な時間が分からないままベッドに呑まれ、その渦に身を委ねざるを得なかった。
滾る想いはある。
熱もある。
主役はフロイドなのだから、本当ならば自分が彼に施したいと思っていた。
が、それをよしとしなかったフロイドに組み敷かれ、日付が変わる前からずっと、名無しは彼に成すがままにされていた。
せめてこちらから何か、今度こそは……。
そんな気持ちがあったからこそ、誘い文句を受け流さずにいようと、一応は決意も固めたのに――。
「――…、……あと…いっかいだけ……だからね…ッ、おわったら絶対寝……!!あ……」
「ん……!あと一回……いっしょにいこうね、名無し…――」
「……!待っ……私が……わたしばっかり…フロイドの、たんじょうび……なのに…――ッ、ひぁ……」
「んー?……オレのたんじょうびだからじゃね……?オレが名無しを好きにしまくっても誰も文句言わねえ日じゃん?ふふ……!」
「ッ……っも、う……!!あ……ッ…」
うとうととしていた眠気が一気に吹っ飛ぶ。
それだけフロイドの一挙一動に、名無しはいつだって影響を受けてきた。
もちろん、いい意味でも、悪い意味でも……。
彼の存在は嵐のように感じることもある。
けれど少なくともフロイドにとっては、名無しは自分をどこまでも癒す、甘く優しいそよ風そのものだった。
「あー……あと一回だけどさ、その一回で朝まで好きにしまくるね……?でもきもちよくなるときは一緒だからね?名無し……すき――」
「―――……ッ」
心地の好い風を求めるのは当然だろう。
安らげる場所であることを意味していれば、求められて受け入れてしまうのもまた、名無しにはごくごく当然のことだった。
ベッドが揺れ、肌に行き交う彼の舌が快楽を孕ませ、時折咬み付かれて喉元が呻る。
フロイドを受け止められる唯一でありたい。
当然のように、その胸に飛び込みたいと思われていたい。
縛られることを好まないフロイドが、自身の知らないうち、名無しにだけは縛られることを望んでいる……かのように振る舞っている。
そんな彼の仕草が、名無しは愛おしくてたまらなかった。
眠る時間が欲しい……が、惜しいに変わる。
たった一言の愛を囁かれる瞬間、名無しもまた、自らフロイドに腕をまわしていた―――。
HBD1105Floyd!!
20201107UP.
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