主≠監。
HBD1105J
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その日がやってきたからといって、当事者であるジェイドがいつになく笑みを浮かべているのを見ていると、なんとなく多少の不安が募るのも致し方なかった。
が、もしや自分に何かよくない点があったのかと省みても、名無しにはまったく心当たりはなかった。
「……ジェイド…」
「ふふ……、…!ああ、はい……どうしました?名無し」
「~……」
日付も変わっている。
今は既に、二人にとって大切な暦と時間が訪れている。
自分たちの人肌であたたかくなったベッドはシーツに包まれ、抱き寄せられる名無しの枕は、当然といっていいほどにジェイドの腕がそれだった。
「さっきからずっと笑ってる……わたし何かした……?」
「!なるほど……すみません。僕……そんなに緩んだ顔をしていましたか……?」
「~……ん。してる……どうしたのかなって思うじゃん……変なきのこでも食べた?」
「ふふ……名無しはまったく。酷い冗談を仰いますね……そこが可愛くもあるんですが…」
火照った身体をちょうど冷ましていたさなかでもあった。
微睡みのなか呆けて、甘えて、摺り寄せる頬は胸元へ……。
確かに男らしい筈なのに、華奢にも見えるジェイドの胸板をキャンパスに見立て、名無しが指先でなぞるのはでたらめな曲線だった。
視認できない落書きを描く名無しの指心地だけでジェイドが笑っているとしたら、それは大きな間違いだろう。
名無しがそう思ったのは、この手の仕草に彼がくすぐったさを覚えた試しは今まで皆無だったからだ。
「是非当ててみてください」
「っ……、え…っ?!そんなの無理だよー……もう…」
「フフッ……ではヒントを。――……今日のことといえばそうですが、今日じゃない別の日……といえばよろしいでしょうか?そのことを思い出していました」
「?」
ジェイドのベッドで寝そべるのも、彼の隣で目を閉じ、眠りにつくことももう何度も経験してきた。
すっかり慣れたものだ……とも言いきれないのは、組み敷かれる度に胸が高鳴っていれば、簡単にはそう喩えられないのが普通だろう。
唇を重ね、粘膜を溶け合わせて、高みに昇りつめたそのあとにようやく、名無しは胸を撫で下ろすことができていた。
身体の中にジェイドの感触を残したままひと眠りする多幸感……。
名無しはそれを至高と思っていたけれど、ジェイドはどうやらそうではないらしい。
彼の微笑の原因を追究する過程で名無しがそこに気付いたとき、事後の微睡みのシーンは、一気にコメディ色に染まっていた。
「今日じゃない誕生日の話……?」
「ええ、そうです……正確には、僕と名無しが出会って最初に迎えた、僕の誕生日の話……ですね。……ふふ、思い出しましたか?」
「出会って最しょ……――……!!ジェ……ッ」
「ふふ……!大正解です……それじゃあ、名無しには正解したご褒美を……ン。…ちゅ……」
「!!ん…ん……っ」
紳士的な態度や立ち居振る舞いが印象に残るジェイドと明朗な思い出を残せるのは、それだけ自分たちが円満でもあるからだろう。
たとえ自惚れでもそれが事実だし、名無しはそれを誇らしいとも思っていた。
洒落も通じる、その洒落を零しもする。
意味に気付いてベッドの上で慌てふためけば、不意打ちで自分を制するジェイドにも、何度だって惚れ惚れさせられた。
「ジェイド……!んん……あ…」
「フッ……名無しがもういいと言って呆れようと、僕は何度でも言いますよ?――……僕が誕生日に何もねだらないのは、もう最高の贈り物をいただいているからです」
「ッ……は、ぁ…ッんん……また挿入って……」
「ええ。だって……名無しのすべてが、僕は大好きですからね……ずっとここに居たいくらいです。フフ……」
――出会って最初の……そう言われて名無しはすぐに、ジェイドの出したヒントがそれ以上の殆ど答えを示していることに気付いた。
名無しにとっても忘れもしない日だ……。
きっと、忘れる方が難しいとも思えるほど、大切な大切な共通の思い出。
今日の主役はジェイドだというのに、問題形式の会話を経て褒美を受ける形になって、名無しは動揺で彼の拘束をかわすことが出来ないでいた。
冷ましていた身体がまた火照るようなことを……ベッドの中であれば、それは概ねひとつだ……。
「初めて一緒に過ごしたあのときの誕生日は、いつまでも色褪せませんね……まあ…僕が唯一、駄々をこねた日でもありますから」
「ッ……だって…あのとき、……ン…っまだ、わたし……」
「ふふ……そうです。ですからあの日を思い出すと、つい嬉しくて表情が緩んでしまうんです……勿論、名無し以外の誰にも見せませんがね……ご安心ください」
「…っ……あ…ジェイ…ド……ッ」
「……僕の我が儘…――”名無しの初めてを僕にください”……いつまでも真新しい記憶ですよ。……ん、……チュ……」
名無しは枕となっていたジェイドの腕が解け、彼に組み敷かれたのち、すぐにその身を制されていた。
下半身に触れたのがただの肌熱でないことも今更、内腿に感じる物理的な気配で分かる。
ジェイドは名無しに浴びせられるだけ様々な箇所、上半身に口付けを落とすと、唇に辿り着いた時に初めて口を開き、勢いよく舌を伸ばした。
口腔に割り込ませたそれが名無しのものと絡み合えば、部屋には瞬く間に吐息と、甘い空気と、艶やかな二色の声音が漂った。
そして舌が絡み合うように、シーツの中でジェイドが名無しを捉えれば、あとは中心の猛りが彼女の内側を探るまでだ――。
「あ……あっ……ぁ、ん…、ッも……今日…何度……」
「さあ……?僕は何度でも構いません……。らしくなく……野獣のように、朝まで貴方を抱きまくるのも悪くありませんね。フフ……ッ」
「!!ひ、ぁ……」
「だって……今日は僕の我が儘が通る日ですから…――……してもいいですか?名無しを初めて抱いた、あのときのように……優しくしますよ」
「……――ッ」
互い授業も課題も、部活すらない休日らしい休日でよかったと、最初は話していた。
ずっと部屋でのんびりと出来るし、街へ出かけたくなれば、それはそれで日中になってからでもよかった。
日付が変わる少し前から朝がくるまでは、まずはゆっくり二人きりで過ごしたい……。
それぞれが主張して一致した意見ではあったけれど、ベッドの軋みがうるさくなるにつれ、名無しはその意見を訂正したい気持ちにも少し駆られていた。
後悔するほどに一回一回をねっとりと、優しくも激しくも抱かれる。
笑顔の真相を知って孕ませる羞恥心に、追い付かないのはジェイドに恋慕する強い気持ち。
陰部に響く快楽の染みた揺らぎ、上や背後からのピストンに囀りはおさえられず、名無しの被虐体質気味の身体は悶え散らしていた。
「……ッ…―――」
拒む理由もない、だからといって恥ずかしさゆえに求めきれない。
それでもジェイドは容易く名無しの想いを読んだ。
制圧されること、縛られることに夢心地を覚え、名無しはいつだってその脳内を、ジェイドが舞わせる花弁で満たしていた。
「ジェイド……ッ、ぁ……あ…好……!もっと…、もっ…――」
「ッ……ええ…、もっと……僕も貴方を感じたい…ずっとずっと……――」
それらしい言葉はやけに照れくさくて、日付が変わったときに囁いたくらいだった。
顔を上げて重なった視線の先には、あまりにも優しい眼差し。
この人と出会えて本当によかったと心から思えたけれど、それを口にすることができるのもまだまだ先の話だろう。
目を閉じて、次に目覚めた時には朝が来ていた……なんて展開は、この日は訪れそうにもなかった。
けれど名無しは、自分を抱き伏せるジェイドの今は真剣なその瞳を見つめ、再び事後同様の多幸感を抱いていた。
そしてジェイドもまた同じように感じていたのを名無しが知るのは、ここから少し、深く沈んだ夜夜中のことだった――。
happy birthday Jade !!
20201105UP.
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