主≠監。
HBD1025
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「トレイは何が欲しい……?」
奥ゆかしさの残る愛らしい笑みを浮かべながら無邪気に話す姿は、いつだってトレイの心模様を波立たせる。
些細な仕草ひとつで欲情に駆られることを、彼女は知っているはずなのに……。
「ん?ああ……そうか…もうそんな時期か……早いな」
「もう……そんな他人事みたいに……」
「ハハッ……、いや…なんだか照れくさくてな。けど……何が欲しい?なんて聞かれたら、嬉しいな……やっぱり」
「!ふふ……子供みたい」
「な……っ、悪かったな。子供で……っ」
商業施設で買い物を済ませ、トレイのお気に入りの店でケーキを食べたこの日は、終日二人で過ごせる貴重な休日だった。
今は既に”その月”に入っていたのだけれど、まだ上旬ゆえだろうか、どうやら件についてはトレイの方が無関心のようで、名無しは少し自分が力みすぎていた事を自覚していた。
一年に一度しかない、それは彼にとっても自分にとっても大切な日。
名無しがそわそわとするのは当然で、できれば悟られないよう、サプライズでトレイの望むものを用意したいという気持ちが彼女にはあった。
が、断念したのは、シンプルにハードルが高かったからだ。
急に欲しいものを遠回しに問うても、相手はトレイである。
見抜かれるに決まっている……なんとなくそう思った。
だから名無しはストレートにこの日を利用して、トレイに質問を投げかけていた。
彼女がそれを激しく後悔するのは、この数時間後のことだ―――。
「………欲しいものねえ…。――まあ……あるよ、俺も人並み」
「!ほんと……?!何なに?!」
「あ……いや、……ここで言うのか?」
「?ん……教えてくれないと何も用意できないし……ほら、食べ物なら買い出しして準備する時間も必要でしょ?食材は取り寄せなくちゃだし……」
「ああ……まあそうだな」
「……それともまだはっきり決まってない、とか……?」
「いや……。………決まってるよ……けど、お前引くだろう?」
「え~…?引かないよ今更……、だから話し……――?!」
――たとえばデートのとき、特に決まった予定がなければ、二人はいつも空いた時間を使い、いっとき部屋を借りていた。
甘い雰囲気にまみれた、ほんの少しでも性欲があればむせ返るような……実にしっとりとしたあの空間のことだ。
カフェに居た際、ショートケーキの上に乗ったいちごを手づかみで食べる為わざわざ腕を伸ばした名無しは、その手にトレイが同じ部位を重ねてきたことで空気を読み取っていた。
自分の皿にもいちごは乗っているのに、彼はこちらの分まで欲しいのだろうか……。
なんて子供っぽい文言を口にするまでもなく、視線を合わせれば、眼鏡の奥には甘美な瞳。
とろついた目つきと会話の流れで、今日もそういう方向へと風向きが変わっていたのもまたいつものことだった。
けれどまさに部屋へ向かっていた、ひと気の少ない今は路地という場所にしても、名無しはトレイが口にしたその言葉を心の奥底より疑い、驚愕ゆえに表情を歪ませていた。
「ッ……な…、……な…」
「な、じゃないよ……ちゃーんと聞こえてたろ?――……オナホが欲しい、お前の尻まで忠実に再現された……って言ったんだよ」
「!!に、二回も同じこと言わなくていいか、ら……っ…ん……」
「フッ……何度でも言ってやろうか?ああ、ほら……準備する時間だって必要なんだよな?なんだったらこれから部屋に入って、早速とるか?お前のえっちな……ナカの型」
「~~……!!トレイ……ッ」
トレイの真剣な表情にはいつもどきどきとさせられていたし、鼓動が高鳴って、身体が熱くなってゆくのがよく分かった。
名無しはいま例外なくその症状に苛まれており、路地裏、よく行くその建物が視界に入ってからも、それは実に顕著であった。
「何が欲しい?なんて聞かれて……俺が素直に”お ま え”って言うと思ったか?ハハッ……あ、首にリボンも付けてな?までがデフォか」
「ッ……」
「まあ、ベタでも一応言おうとは思ったんだが……けど、どうせならもっと高望みしてもいいかと閃いてな……どうだ?驚いたか?」
「お……おど……、お……」
手を繋ぎ、隣に並んで歩くことに噛み締める幸せに、予想だにしない発言ひとつで押し寄せる驚きの波濤。
困惑が渋滞する名無しの脳裏は、トレイの言葉があまり認識できないほどにパニックを極めていたようだった。
まあ、目の前に恋人が居て、その恋人のものを模した自涜具を本人にねだる者など、どこの世界に居ようものか……。
それが冗談か真面目な話か、名無しはトレイの口からそれを確実に耳にするまでは、そんなぶっ飛んだ内容でも半信半疑でひとりふらついていた。
当然、トレイにとってはもちろん、それはユーモアに満ちた黒いジョークにすぎないのだけれど。
名無しは数分後、目的地に着き、フロントを通って部屋に入ったとき、ようやく彼の口から冗談だったことを聞かされていた。
そして―――。
「本気にしたのか?」
「…っ……」
「――……フッ…。お前に会えないとき、お前のオナホがあったら最高だと思ったんだけどな……けどそんなものが手に入ったら、お前がやきもち妬いちまうよな。フフ」
「!っ…も……、ん……ッ……トレイ……」
「はは……!安心しろ。冗談だ……それにお前の、この複雑で……」
「ッ……!あ……」
奥ゆかしさの残る愛らしい笑みを浮かべながら無邪気に話す姿……に加えて、いつだってトレイの心模様を波立たせる名無しの表情は、他にいくつもあった。
そのうちのひとつが、たとえば着ているものを脱ぎ合い、バスタブいっぱいに溜めた、泡沢山の温かい湯船に身を委ねている時間に見せる頬の紅潮だった。
まるで吸い付くようなみずみずしさ、しっとりとした肌にひとたび触れれば、抱擁がただのそれ以上に昇華される。
果ては粘膜も混ざり合い、浴室に、そして部屋じゅうに嬌声が鳴り響き、互いが互いの存在を確かめ合った。
「よく締まって……ん……、俺にじっとりと絡みついてくる肉なんて、魔法でだって再現できそうにもないさ……。ココは、俺だけの特別な場所だ――」
「…ッ……んぁ……!!あ……トレイ……!ん……ッ」
その日、トレイが一体何を望んでいるか……。
それを彼の口から聞き出すことは、名無しには叶わなかった。
けれど嫌というほど愛されて、全身に感じるトレイの熱情を浴びたことで、聞き出す必要の無さというものも同時に学んでいた。
めいっぱいの愛を囁かれ、触れて撫でられ、舐られて……ひとつになってしまえば、案外と、あとはどうでもいいのかもしれないとさえ感じられた。
「トレイ……ッ…ト……!んん…――……すき…っ……すき、トレイ……だいすき……――」
「!……機嫌なおった……?フフ……俺も。好きだよ、名無し……チュ……――」
肩の力を抜いて、次までには驚かされた冗談にも柔軟に応えられるような……そんな自分になっていたい。
気取らない姿のまま、ずっとずっとトレイの理想でありたい。
バスタブから流れ出る泡湯が増して、名無しが肉体的にも精神的にもトレイに貫かれたとき、名無しは夢中で彼にしがみつき、愛を囁き返していた。
自分にできる今の精一杯……そしてそれこそが、トレイがいつだって、年に一度のその日にさえ、唯一欲しいと願うものだった―――。
happy birthday dear Trey!!
20201025UP.
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