主≠監。
end in melancholy.
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ジェイドの手をとるということは、分かりきった未来が待っているということでもあった。
極力避けてゆく……切れない彼女にとってそれは唯一の手段であり、けれどそれさえ奪われては、状況に呑まれてゆく。
よくない選択肢を選ばされても、今できるそれが最良だった。
ジェイドは直接的な言葉は控えていたのだろうけれど、バスケ部がこの辺りまで来るということは、それはナンパを視野に入れていたということを言いたかったのだろう。
名無しにとってそのメンバーがどういった性格か、なんて知ったことではないにしろ、彼らが男である以上そういう予想も決して難じゃなかった。
即ち喧騒から逃れていた自分にとっては、名無しはジェイドの手をとるしかなかったということだ。
その後サンダルを脱ぐ間もないまま、名無しは海へと飛び込んでいた。
もっとも、伸ばした腕をジェイドに掴まれ、引き摺り込まれてしまえばあとは一瞬だ……。
そこでのやりとりを見ていた者は皆無で、二人は海中へと姿を消し、ジェイドの言う目的の場所へと名無しは連れられていた。
海面の不自然な揺れが消えた頃には、ちょうどフロイドたちも近辺に到着していたようだった。
――――。
――。
まともに泳ぐなんていつぶりだろう。
まあ、泳ぐというよりは腕を引っ張られ、何もしないまま海中に数十秒居ただけではあったけれど……。
段々と酸素が欲しくなって、やがて名無しが頬を膨らませ始めたと同時に、彼女の願いはそこで叶っていた。
「っはぁ……!もう……っ…強引……!」
「ふふふ……強引、ですか……そんな僕も珍しいでしょう?察していただければ……ね?」
海面が近付いたと分かった瞬間、名無しはその身をジェイドにホールドされていた。
水の抵抗や不規則なうねりに身体が投げ出されないよう、自らも彼の上肢に両腕を回してしまったのは仕方がないことだ。
とはいえ、多少は後ろめたい気持ちがあった。
大きく息を吸い、吐き、その動揺を悟らせないべく虚勢を張る。
そしてふと目元の水気を掃いながら周囲を見渡すと、そこは本当に人の気配のない小さな浜で、名無しはジェイドに未だ海中で囚われていた。
「ッ……だから、も……今日断ったことは謝……ッ……!!」
「ええ……ですから、名無し」
「!……っ…んん……」
砂浜は横目に見えている。
なのにどうしても遠くに感じて、名無しは自分の足が地に届いていないことにも不安を抱いた。
溺れるかもしれないという意味でのそれではなく、だからジェイドが、自分の腰に腕を回し続けているということに対する不安だ。
背には都合のいい大岩があり、此処に追いつめられていた名無しは、いよいよ一寸先の未来を読みとることにすら抗いを示していた。
「は…ぁ……強引…っ、それに浜に上げて……よ…ジェイド……。足があんまり着かな……」
「大丈夫……僕が支えていて差し上げます。……それにしても……水に濡れると、身体に纏わりついて不快でしょう?この上着は、今だけは脱いでおきましょうか……」
「!!だめ……このままで…ッ……――」
「……ッ…」
ひと気のない小さな浜に連れられてしまえば、ジェイドとすることなどひとつしかなかった。
彼はそのつもりで、勿論名無しが受け入れざるを得ないことも分かった上で、此処まで泳いだのだろう。
支えられていたことで触れている、ひんやりとした青白い腕の感触に、いちいち敏感になってしまう。
それはジェイドが自身の皮膚を名無しのくびれに執拗にあてがっている所為でもあり、海中だというのに伝う艶めかしさ、体温が、澱み色めく感情を呼び起こさせていた。
水の中でうまく抗えない名無しがジェイドにキスを許したのもそのときで、やがて彼の手がパーカーに伸びた時、名無しはそこで一番の抵抗を見せた。
身体を隠す為に着ていた、ぶかぶかとしたそれのファスナーを下まで下ろされ、そして脱がされる。
名無しは赤面ゆえ下を向き、ジェイドは大きく目を見開いていた。