主≠監。
end in melancholy.
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――――。
――。
「ん~……」
一週間後―――。
我ながら行動に移すのが早いなと感じたのは、性格ゆえか、それとも相手の期待に応えたいという、ささやかな思いからか……。
どのみち散々照れて拒んでいた割に、実は案外と乗り気でいたことを突かれれば、名無しは否定できない状況下に今いた。
頭を下に向け、自らの身形を見直しながら染まる頬は、なんとも年頃の女性らしさがあった。
「んー……」
その日、名無しは仲のいいクラスメイト数人と、共に海へと訪れていた。
「はぁ……やっぱり失敗だったかな……ちゃんと試着もしてイイと思ったのに……。恥ずかしくてパーカー脱げな……ん?」
名無しが最後にトレイに会った日、その翌日からなんとなく考え込んでいたのは、意外にも自分たちの複雑めいた関係についてではなかった。
もちろんそれを軽んじるつもりはない。
あのとき結局まともに話したのは、お互いの気持ちを確かめ合うことくらいだ。
どうしてトレイが、自分とジェイドしか知り得ないようなことを知っていたかも訊けないまま終わっている。
まあ、必死になって追求せずとも、相手がジェイドならばからくりなんてすぐに分かったことでもあったのだが……。
それに、他に気になっていたことが別にあったと喩えれば、話は早いだろうか。
『水着姿……今度見せてくれよ』
恥ずかしながら、名無しはトレイが行為の最中に発言していたことが、やけに頭から離れずにいた。
悩むよりも素直になった方がいいと考えを改めたのは、その日の授業を終えた帰り道でのことだった。
「……ッ…え、……?!」
もともと、このごろは徐々に暑い日も増えていたし、そうなれば海にでも出かけようという話は友人間で出ていた。
真面目な性格とはいえ、積極的に輪に入り、遊ぶときは遊ぶ……そうでなければ誰だってストレスはたまる。
だから名無しが急に水着を新調したいと口にしてみたところで、誰に怪しまれるなんてことも微塵もなかった。
名無しは早速買い物に出かけており、ショップで理想のデザインにも運よく出会え、無事にそれを手に入れるところまでは順調に叶えていた。
が……叶いはしたのだけれど、どうしてもそれを着た姿を、最初にトレイに見せる勇気だけは芽生えなかった。
羞恥心がこういうときだけ無駄に邪魔をしてくるのは、トレイの希望を優先した、挑戦的なデザインだったからだろう。
「……ッ」
霞んでゆく自信を完全に失わない為、名無しはトレイに見せる前に、友人らと海に来ることでそれを取り戻していた。
ちゃんと身に纏えているか。
身体のラインにサイズが合っているか。
水着に自分が着られてはいまいか。
結果、身体に馴染む感触を忘れない為にという意味も込めて、出かけて正解だったと名無しは思った。
挑戦したことのないタイプ、露出の多さに、流石にパーカーを脱ぐにはまだ躊躇うものはある。
けれど、一度それを着て海にまで来られたという事実は、名無しに巣食った貧弱な気持ちを吹き飛ばしてもいた。
まあ、その大きくなった彼女の気は再び瞬く間、脆弱なものとなってしまうのだが……――。
「こんにちは、名無しさん」
「!!ジェ……なんで、どうしたの……?!」
コンディションを掻き乱された原因もまた、想像に容易いことだ。
名無しの目の前に広がる海はその水面から、突如としてジェイドが姿を見せたからだった。