主≠監。
I'll get even!!
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どこまでも愛おしい、純情でいて卑猥に満ちた名無しの表情。
そのとろけた瞳をじっと見つめていれば、彼女の目の奥に凍り付いた瞬間があったのを見逃す筈もなかった。
「!!あ……ッ、…ぃ……待…っ、だめ……トレ…ッ」
「んむ……チュ。フフ……それじゃあ、こっち側も感じてくれるか…な……んむ」
「……――!!」
トレイにとっては、その発言で名無しの身と心が強張ることなど想定内だった。
それでも身体は濡れ、性に忠実……素直に溺れてゆく現実から逃れられなかったのだから、彼が自責の念を抱くこともない。
「いや…、ぁ……ッ!」
あの日、あのとき。
頭の良い名無しなら、どうしてトレイがそれを知っていたのかくらい、もう理解したことだろう。
概ね正解を口にしていれば尚更だ……。
「あっ…ア……あッ…、ひぃ……!も、おかしくなる……らめ、とれい……ヒ…ッ」
トレイは頭を起こしていたのも束の間、名無しの首筋に再び顔をうずめると、今度は宣言どおり彼女の右側に狙いをつけていた。
あの日、ジェイドが名無しを攻めた首筋は左側だった。
左側でなければならない理由があったからだ。
通話状態になっていたスマホを見られないようにする為ということにも気付いていれば、あとはその部位に執着せざるを得なかった、ジェイドができなかったことに自分が走ればいい…。
上を獲ることも決して不可能ではないだろう。
名無しがそれに感じるかどうかは賭けにも等しいかもしれない。
けれど、ここでトレイが彼女を攻めない手はなかった。
そしてその賭けの結果は見事にトレイの表情を綻ばせ、見方次第では、トレイは悠々と勝ち誇ってさえいた。
「トレイ……トレイ…や、ぁ……ッ!!あ……んッ」
「いいぞ、おかしくなれよ。イッたばっかりで頭のなかも、身体ももう……アソコもまたグチョグチョだろう……?挿入ってれば分かるさ……名無し……ん」
「!あッ……!あ…ッッ……、らめ……、ぁ……」
「ッ……その様子だと、どうやら初めてみたいだな……こっちは咬まれたことなかったのか?ん……んむ」
「や……むり…、っも……きもちいい…へん、に……私、壊れ……」
「かわいいよ……すき…名無し……ああ…、――……お前の全部…俺のものにしたい……してもいい?」
「…ッ……」
名無しの首筋に既に残った咬み痕を横目に、トレイは新たな痕をこれでもかと刻んでゆく。
歯に鋭さが無くても感じて、身悶えて、全身から悲鳴が聞こえるほどに喘ぐ彼女の姿は、まさに淫猥そのものだった。
そうしているのが自分自身であり、繋がる下半身も律動を止めずに犯し続けている……。
トレイが舞い上がるのも無理はないだろう……そこにたとえ慢心が孕もうとも、少しのあいだだけは何もかも忘れ、ひたすらに乱れていたいと思えた。
「ト…ッ……」
「……フッ、そうそう……そうやって驚いたカオも、全部すきだ。……ナカに出すよ、名無し――」
「…ッ……!!あ……待…っ」
「待たない……俺もイキたい…。ナカにぶちまけて、俺のでお前のことめちゃくちゃに汚したい……もう我慢できない」
自信がないわけじゃない。
が、トレイが「俺”だけ”のものにしたい」と言えなかったのは、どんなに夢中になって彼女を抱いても、ここで口にするべきではないと感じたからだ……。
自分一人で独占できれば、それはこの上なく幸せなことだろう……けれどそんなに都合よく時は進まないし、賭けた結果を悔やんでも、時は二度と戻せない。
全身と脳が快楽の花に溢れる。
たとえそれが満開になろうと、ここぞとばかりにか細い糸が、ふいにトレイを理知的でいさせる。
頬を染める名無しが彼の言葉に動揺して、どんなに満更でもなさげにしていても、トレイはあくまでまだ紡ごうとはしなかった。
「ト……――ッ」
一方で頭の向きを変え攻め立てられた名無しにとっては、トレイのそれは初めて経験する行為に、初めて浴びせられた快楽でもあった。
たかだか左右の違い……けれど愛咬されたことで、身体にも頭のなかにも齎される甘さは未知にも等しい。
ジェイドが触れてくれなかった理由もそこで察した。
それを狙って、トレイが今仕掛けてきていることも分かった。
これらに対する、どういう反応が誰にとっても正解になるかは、正直判断も難しいところだろう。
だとしても名無しが向き合うべきは、自身を組み敷く、いまはトレイだった。
「あ……ア…ッ……」
「っ……ん、……また狭くなった…んぅ、チュ……ハァ…名無し……」
「と…れ……ッ…トレイ……トレイ……あ!きもちいい……っひ、ゃあ……」
「ン……、…イク?お前もまた……一緒に……おいで、名無し」
彼に首筋全体を統べられたことでトレイは支配欲を満たしている。
名無しはそんなトレイに抱かれて、味わったことのない享楽に突き落とされている。
陰部に漂う再びの兆しだって無視できなかった。
身体の上下に異なる快感、トレイもそれを全力で名無しにぶつけていた。
「ッ……、…トレ……あ…んっ……いっしょ…、いっしょ……ッ」
「ん……ああ…名無し……んっ…出る、っぐ……ふ、ぁ……ああイク…――ッ!!」
「…ッ………トレイ……!!いくっ…いく……ア……ッ―――」
名無しはそのとき、たとえ事情を知っても、トレイに言及する資格くらいはあるだろうという気構えで、一応は彼を問い詰めようとしていた。
が、素振りを見せる間もなく溺れてしまう未来も目に見えており、事実溺れさせられて、トレイの陽物を自身の波で覆い尽くした。
あのとき、電話がどういう経緯で繋がって、どういう理由があって、ジェイドがトレイにそれを聴かせたかなど、出来ればしらばっくれていたいものだ。
二人の狭間で揺れ動き、二人に抱かれることが自分にはベストだと思っていた。
けれど気持ちを持ってしまえば、均衡は瞬く間に崩れてしまうだろう。
「―――ハァ……ん…」
「ッ………」
崩壊はきっと、誰も望まない……願ってすらいない。
それでもトレイは、ただの身体だけの関係以上に気持ちを見せてくれている。
名無しはふと、トレイによって再び頭のなかを真っ白に染め上げられて、彼にしがみつきながら脳裏で考えていた。
今のままでいいと痛感した筈なのに。
たとえばこの人の彼女になったら、どれだけ楽しいかを。
同時に、それが分かるからこその、どれだけ間違った出会い方をしてしまったかを。
そしてきっかけを作ってくれたジェイドを、どうしたってやはり自分から切れないことも――。
「……名無し」
「っ……んん!チュ……はぁ…」
「フッ……相変わらず、まだヒクヒクしてるな……俺が締め付けられてる。きもちいい」
「ッ……」
「――……安心しろよ。俺のものにしたいのは本当だ……間違いなくな。けど、お前が俺だけのものにならないことくらい、よく分かってるよ」
正直、名無しは救われていた。
そうとでも思わなければ、恐らくは自分たちの関係はただの泥沼化を辿る一方だったからだ。
そんなのは自分たちらしくもないし、当事者にだってなりたくない。
言葉のあやを利用して、こんな状況、たとえベッドの上でも安心させてくれるトレイが、名無しにはなんだか健気に思えた。
もっとも、名無しにそう思わせておきながらも我を貫いていることには変わりないトレイは、両腕に名無しを閉じ込めながらひとり決意を固めていた。
「……名無し――」
妥協できるかはわからない。
むしろできない。
けれど、名無しが自分だけのものにならなくとも、それはつまり向こうも同じということだ。
今はただ、ジェイドの知らない名無しを抱けた……その事実が、トレイの心に巣食う闇を浄化していた。
「!……トレ…、あ……」
「……ふふ、抜くぞ?ほら……風呂!続きは向こうでな……話したいこと、一気にできたんだろう?俺もだよ。ちゅ……」
「ン!…ッ……ん…――」
「……ローションのこと、忘れてないぞ?俺は。フフッ……」
「ッ……もう…っ……」
名無しに流し込んだ欲望とともに開放感を覚え、多幸感に満ちたトレイはひたすら名無しを抱き締めた。
型の残った首筋を舐め、キスをして、名無しがそわそわとしていた、自らに原因のあった言葉に補足まで付け加えながら、確かな安堵も覚えさせる。
トレイはそのとき、自分の強欲さを改めて噛み締めながら、名無しに抱く想いが間違いなく愛情であることを再確認していた。
それは過去に自ら否定した、名無しへの強い恋愛感情そのものでもあった。
I'll get even!!
20200819UP.
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