主≠監。
he got cuckold.
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「では……来週名無しがトレイさんと会った、その次こそは……また三人で遊びましょうか。そうですねえ……趣向を変えて、外ででも」
「ッ……、え……?ジェイド……」
「その言いようですと、貴方もお困りのようですしね……ふふ。確かに、僕もトレイさんの話題を少し出し過ぎたかもしれません。反省しましょう」
「~……かもじゃないんだってば……むぅ、……!んんッ」
扉の前で話す会話には、いつもよりも少し彩りが欠けていた。
それもそうだろう……。
結局トレイの話題が出たことで、二人きりでいられる最後の時間を、甘やかに過ごせなくなってしまったのだから。
が、件も含めジェイドは名無しに改めて詫びると、彼女の頭を何度も何度も丁寧に撫でながら、とある提案を口にしていた。
廊下に出たあとはその一歩目から、これから名無しを一切の他人の目に触れぬよう、欺かなくてはいけない。
その為に神経も多少使うのだけれど、伴う疲労感というデメリットをも厭わずに彼が名無しに話したことは、殊の外名無しを喜ばせていた。
それは二人の男に翻弄され、どちらにも満たされているからこそ見せることの出来た表情だろう。
満更でもない様子がまた愛らしく、ジェイドの誘いに名無しの頬は、みるみるうちに赤らんでいった。
「チュ……、ふふ……ですが楽しみが出来たでしょう?二人にどうされたいか、ちゃんと考えていてくださいね?名無し。……さて、門の外までお送りしましょう」
「っ……うん…」
名無しが次に関係を築くのは来週、トレイとだけだった。
その予定をジェイドの居る彼のベッドの上で確定させて、なんて酷い女なんだという図式が成立しないのは言わずもがな、それが身体だけの関係だからである。
トレイとの約束、更に次が出来て舞い上がってしまったのは、名無しにとって本当に嬉しいことだったからだ。
抱かれる時、ジェイドとトレイが互いの話を口酸っぱく出すこともないのだなと思うと、楽しみに決まっていた。
「……今日も本当に楽しかったですね、名無し。それではまた……お気を付けて」
「…ッ……ん…」
名無しを見送りがてら、ジェイドは再び身体の内側に溢れる高揚感に悦を覚えていた。
彼女が自分たち二人に翻弄されることを望んでいる確信を持てたことも、その理由のひとつだ。
自身の心も、トレイのそれも二の次……。
まずは身体の繋がりをどうしようもなく好いているという、女性なら誰しも隠匿したい本音が見えたこともまた、誘った結果得られたジェイドの収穫であろう。
なにより、トレイの知らない秘密の場所も明かした。
本人の思う以上に、この日のジェイドは満たされていたのだ。
そしていよいよ別れの時間が訪れて、最後に交わした名無しとのキスは、ジェイドの唇に暫く熱を持たせていた―――。
――――。
―――。
「―――……ハッ…、情けないな……俺は」
机上に広げていたノートが、たまたま下書き用でよかった……。
なんて言ってもいられなかったけれど、そんな偶然が起きていたことはむしろありがたかった。
おかげで、普段使っている清書用のそれが汚れずに済んでいたのだから。
自分の汚らしい、欲望のかたまりによって――。
「ん……せめて見つからないように浴びないとな……特にケイトに見られたら面倒だ……はぁ……」
ジェイドが名無しを送り出していた頃、トレイは自室でひとり頭を抱えていた。
どっと押し寄せる背徳感と虚無感。
何処へ腕を伸ばそうとも、トレイの望むものは今は決して手に入らない。
分かりきっている事実と向き合っているうちに後悔に苛まれれば、次いで彼を襲うのは不快な気持ちだった。
つい数十秒前までは、その逆の感情に満たされ、恍惚の波を漂っていた筈だというのに……。
椅子を引き、立ち上がって見下ろした、自身の白濁にまみれたノートの中の文字は、ところどころがひどく滲んでいた。
「………俺も大馬鹿だな。死ぬほど妬けたくせに、結局ヌイてるんだからな……ハァ……、……名無し」
左耳にこびり付いて離れない名無しの声音が、平常心を取り戻そうとも脳内をぐるぐると駆け巡っている。
漸く拾い上げたペンを握る右手には、同時にやるせなさを。
そして左手には使い物にならなくなったノートの一部、破り捨てたページの紙を、トレイは持っていた。
名無しの番号からの着信に浮かれ、挙句耽り、自習の内容も失念に近い形で意味を失くした。
我慢できなかった理由を今更並べる必要もないだろう。
彼女のことが好きだから、あくまで下半身は正直だったまでのこと……。
愛しいと思う女性のそんな声を聞いてしまえば、興奮しない理由もなかったのだから。
「………」
昂りに対し、実際の性交時のように汗も多く掻いた。
不快にまみれた自らを今度は自涜以外の方法で慰める為に、トレイはシャワールームへ向かう態勢に移っていた。
ただ部屋を飛び出しては、いつもと違う時間帯にシャワーを浴びることを必ず疑問に思う連中は居る。
トレイは括りとしてはいわゆる文化部だ。
運動部でないゆえに、その生徒たちがシャワールームを自寮で独占する時間に自分が居れば、それを異質に感じて口を挟んでくる者が少なからず存在することを自覚していた。
そしてこの場合は、特にケイトがそうだった。
彼も運動部ではなかったけれど、今この有様を見られることだけは当然、避けたかった。
「来週か……」
トレイは一時的な事後処理を終えると、廊下を歩く分には問題ない見てくれであることを確かめながら、外の気配に警戒して自室のドアを開けた。
やはりもやもやとするのは、抜いたばかりだというのにいちいち考えて行動しなければいけなかったからだろう。
加えて、抜く原因にも少し……。
射精の瞬間こそ最高に気分がよかったのは当たり前だ。
今だって名無しの声を頭のなかで再生させるのは余裕だったのだから。
ただし、その名無しの声を出させていた相手がジェイドであることをふいに思い出せば出すほど、トレイの抱く不快指数は増してゆくばかりだった。
「一週間は遠いな……クソッ、……――!……名無し…ッ―――」
抑え切れない名無しへの気持ちを胸に、締め付けられるのは恋心ゆえ……。
早く抱きたい。
二人きりになって、今の自分の想いを素直に口にしたい。
やがてトレイは珍かに舌打ちを漏らしながら、無事に誰とも……ケイトともすれ違うことなく、目的のシャワールームへと到着していた。
何食わぬ顔で洗面所を通り、更衣室で服を脱ぐ。
個室に入った瞬間、トレイはシャワーのバルブをおもいきり捻り、壁にもたれて項垂れた。
眼鏡を外していた裸眼でも分かったのは、机上に吐き出したばかりだった自身の汚れた欲望が肉塊となって形を成し、そのとき下半身に表れていたこと。
それは、彼が抱いていた不快感が、再び頭のなかで自然と再生された、名無しの嬌声で塗り潰されていたことを意味していた―――。
he got cuckold.
20200722UP.
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