主≠監。
heat haze
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――――。
「はぁ……ッ…ふ、……ぁん…」
腹の内側で無数のそれが好き勝手に踊る感触は、何度体験しても慣れたものじゃない。
けれどそう思う以前に快楽中枢が刺激されていたおかげで、相手の射精の瞬間には、自分も多幸感しか抱けなかった。
だから懲りることもなく、同じことを繰り返してしまうのだろうか……。
堅いプラ素材の長い座面に横になり、ひとり身悶えて咽ぶ名無しに、フロイドの視線が突き刺さる――。
「ハァぁ~……終わっちゃったねえ……名無しー?」
「ッ……ん……」
フロイドの眼窩に探られる名無しの姿がどのような状態であれ、満たされた彼にとっては過ぎたこと……今はもうどうでもいいらしい。
何故そう思えたのかといえば簡単な話だ。
膣奥にぶちまけたものが脈を切らせば、過ぎゆく快楽に少し名残惜しさを感じつつ、フロイドはそれを引き抜くまで。
彼の中には後戯の概念など、殆ど存在していないのだから――。
恍惚を浮かべたのはほんの束の間であり、共に果てたとは到底思えないほど、名無しの上に居たフロイドの表情は既に冷めていた。
「ッ……」
「あー……気持ちよかった……。でもさァやっぱオレ、セックスは好きなんだけど終わった瞬間ってまじで嫌いかも」
「…ん……!あ……」
「なんか今日はお掃除させるって気分にもなれねえしさ……ああ!もしかしてココがベッドじゃねえからかな……いつものソファとも違うし。はは、納得ー」
「、…フ……」
ぎしぎしとうるさかった長椅子の悲鳴は、行為が終わった瞬間には当然聞こえなくなっていた。
それまでに響いていた擬音や嬌声も嘘だったかのように、三人が居た部屋はしんと静まり返っている。
耳が拾う唯一は、名無しの漏らす苦しみまじりの吐息くらいだろう。
激しく律動を繰り返していた筈のフロイドが息切れすらしていなかったのは流石に不気味だったけれど、そんなことは口が裂けても言えなかった。
「ん……ッ」
「ハァ……面倒だけどもう一回身体流そ~……。ちゃんとシャワー完備だしね、この部屋。押さえるあたり流石ジェイドって感じ」
「っ……はぁ…」
「……お前はどうすんの?まあ聞くまでもないか……お前にとってはこれからが本番って感じだよね?あはは……!」
「…っ……!!あ……」
出会ってまもなく身体を繋がれた。
結局またキスのひとつもなく、ただ下半身を、フロイドの欲求を満たす為だけに使役させられた。
断れもせず、抗いもささやかに終わる。
挙句一緒に頭中で花を咲かせれば、反抗を正当化することも不可能だった。
名無しは陰部からゆっくりと退いたフロイドに冷たく見下ろされ、手の甲でぺちぺちと頬を叩かれても、彼の所作を甘んじて受け入れるしかなかった。
急激な激しい運動を強いられ、制圧された下半身から滲む倦怠感。
快楽を味わった後のこれがどれだけ気怠くて、愛情表現のひとつもないことに憂いを抱いても、名無しには自分から逃げ出すことも叶わない――。
「あ……っ…」
それは淡いひと筋の望みだ。
もしかしたら与えられるかもしれない……。
新しい芽が胸元で根を張れば、咲きたいと自ら彼女が願うのは、気持ちの傾きようのどんなにいい表れだったことだろう。
「おやおや……フロイドときたら……とんだ悪趣味ですね?そう思いませんか?名無し」
「ッ……」
長い足をその場で回し、跨っていた長椅子からフロイドは離れた。
余韻もなくなった彼の脳内は既に水浴びをすることでいっぱいだったようで、無駄に広い控室の一画に完備されていたシャワールームに、早くも歩を進めようとしていた。
そんなフロイドを余所に、相手をさせられ、何も出来ないまま名無しがそこで寝続けていたのは、本当に疲弊していたからだ。
が、他に理由があるとするならば、名無しは待っていた……。
「僕の前で僕になりきろうなんて……ふふふ。挙句、貴方も随分と感じてしまって……まったく嬉しいのやら、複雑なのやら」
頬にべったりと付く乱れた髪の毛先を、端麗な指先にふわりと掃われる。
コツコツと足音を立て、名無しの傍に紳士の如く跪いたのは、フロイドとの行為を一部始終見続けていたジェイドだった――。